東京都知事だった猪瀬直樹氏が医療グループ「徳洲会」側から5000万円を受け取っていた問題。その発覚から約1か月で猪瀬氏は辞任に追い込まれた。当初は、都政を引き続き担うことに強い意欲を示していた猪瀬氏だったが、辞職を決意したのは、都議会にこの問題を追及する「百条委員会」が設置されようとしたことが大きい。

 百条委は地方自治法100条に基づくもので、地方議会が、自治体事務を調査する必要がある場合に設置する特別委員会。関係者の証人喚問や記録提出を求めることができる。

 ポイントは、強い調査権限が与えられていることだ。「正当な理由」がないのに出頭や証言の拒否、あるいは記録の提出を拒むと処罰される。禁固、罰金の罰則がある。偽証した場合にも禁固刑が科される。

 同問題を巡って猪瀬氏の説明は二転三転し、虚偽答弁も疑われた。百条委で同様のことが繰り返されれば、禁固刑に処せられる可能性があった。

 結局、猪瀬氏が知事を辞職したことで百条委の設置は見送られた。今後の事実の解明は、徳洲会の公選法違反事件と合わせ、司直の手に委ねられた形だ。

 ジャーナリスト出身の猪瀬氏は「ファクト(事実)とエビデンス(証拠)が大事だ」と口酸っぱく言ってきた。自身のカネを巡る問題で、それを説明できず辞職したのは何とも皮肉な話だ。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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