安倍晋三首相が2013年末に靖国神社を電撃参拝したことで、東アジア各国で批判の声があがったが、そこで関心が高まったのがこの「国立追悼施設」である。
戦没者の追悼を目的とした国立施設で、2002年に当時の福田康夫官房長官の私的諮問機関がその建設構想を提言した。
それによると、追悼施設は憲法の政教分離の原則に配慮して無宗教の施設を想定し、空襲などで亡くなった民間人や外国人も追悼の対象に含まれる。
提言の背景には、東京裁判(極東国際軍事裁判)で処刑された東条英機元首相らA級戦犯14人が1978年に靖国神社に合祀されたことがある。それが「1975年を最後に天皇陛下の靖国参拝がなくなった大きな理由」との指摘がある。靖国神社は外国、特に旧連合国側、また中国、韓国からすれば、かつての「日本軍国主義」のシンボルと位置づけされている。
国立追悼施設の建設構想は日本遺族会が「靖国神社の存在の否定につながる」などとして反対。自民党内にも慎重論が根強く、具体化に至っていない。
しかし、今回の安倍首相の靖国参拝を受け、公明党が「わだかまりなく、どのような国民、外国人、天皇陛下も含めて追悼できる施設は、前向きに検討する必要がある」(山口那津男代表)として提唱。その一方、菅義偉(よしひで)官房長官は「国民世論の動向を見極めながら、慎重に検討を進めていくことが大事だ」としている。
ただ、安倍首相は、建設に消極的な考えをテレビなどで明らかにしている。