病気やケガをしたとき、貧富の差に関係なく「いつでも、どこでも、だれでも」必要な医療を受けられるようにするために、日本ではすべての人に健康保険の加入を義務付けている。そして、健康保険が適用されて治療や薬については全国一律の公定価格にして、国がコントロールしている。
健康保険が適用された医療行為や薬の価格は「診療報酬」と呼ばれており、2年に1回、国民に必要な医療体制、物価や賃金水準などを考慮しながら改定が行なわれる。今年は、その診療報酬改定の年に当たっており、4月からの新価格を決めるための審議が、現在、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で大詰めを迎えている。
診療報酬改定の手順は、まず国家予算から医療にどのくらいお金を回すかが示され、厚生労働省の社会保障審議会に設置された医療部会、医療保険部会という2つの組織で重点的にお金を回す分野などの基本方針が決められる。
この基本方針に沿って、具体的な価格を決めるのが中医協だ。審議には、次の4つの立場の代表者が参加している。
・支払側委員…健康保険の事業主、加入する労働者などの代表
・診療側委員…医師、歯科医師、薬剤師の代表
・公益側委員…医学、社会保障などの学識経験者
・専門委員…製薬メーカー、看護師などの代表
中医協で決まったことは、医療機関や調剤薬局、製薬メーカーなどの収入に直結する。また、健康保険組合や国民の負担のあり方にも大きく関わるため、それぞれの利害を背負った委員たちによって、中医協では毎回激しい議論の応酬が行なわれている。
だが、中医協での審議は、医師や製薬メーカー、健康保険組合などの利害関係者だけのものではなく、国民が受ける医療の行く末を左右するものだ。厚労省の審議会の多くは一般にも公開されており、手続きすれば傍聴することも可能なので、関心をもって見守りたい。