2013年の写真集売り上げランキングで、並みいるアイドルたちを抑え1位を獲得したのは、『ありがとう! わさびちゃん』(小学館)だった。「わさびちゃん」とは、ツイッターで大反響を呼んだ子猫。カラスに襲われ、瀕死の状態にあったところを「父さん」「母さん」に救われた。治療の様子は多くのフォロワーが見守り続け、いまほど有名になる前から愛情に恵まれた、幸せな猫だったと思える。
『ありがとう! わさびちゃん』の表紙の「わさびちゃん」は、「たらこ」のおくるみから顔と脚だけ出した、ユーモラスで愛らしい姿だ。だがそれは、顎が粉砕骨折しており(しかも上顎の内側には穴が開いていた)、舌も裂けていたため、カテーテルでエサをあげるとき、暴れないようにする配慮だった。それを知ると、生きようとする命、救おうとする思いが詰まっている写真だと気づく。やがて傷も癒え、元気すぎて手に余る様子すら見せていたわさびちゃんだったが、保護から87日目に突然この世を去る。原因は特定できないという。この「悲劇」はテレビでも取り上げられ、全国の猫好きが涙にくれた。
わさびちゃんの飼い主のもとには、自分も猫の保護に関わったという声が続々と寄せられているらしい。子猫がまいた優しさの種は、これから多くの猫を不幸から救い出すことになるのだろう。