4月1日、消費税率が8%に改定された。しかし、増税はこれで終わりではない。来年10月には10%への引き上げが控えており、1年半という短い期間に2回の改定が行なわれる。 

 消費税は、製造業、卸売業、小売業などすべての取引の段階で課税され、最終的に小売価格に転嫁されて消費者が負担する。しかし、力関係によって中小零細の製造業などは大きなメーカーに対して消費税を転嫁できないことも多く、実際の取引の場面では強制的な値引きや買い叩きが行なわれることもある。

 そこで、今回の税率改定では、取引の各段階で中小零細企業がきちんと価格転嫁できることをおもな目的とした「消費税転嫁対策特別措置法」が作られた。これは2017年3月までの時限立法で、今年4月以降、消費税の転嫁拒否などを行なった場合は取り締まりの対象となる。具体的に禁止されているのは、次の4つ。

(1)減額、買い叩き
(2)購入強制、役務の利用強制、不当な利益提供強制
(3)税抜き価格での交渉拒否
(4)報復行為

 大手メーカーなどによる中小零細企業への価格転嫁拒否は法律違反となり、悪質なケースは公正取引委員会が勧告・公表を行なうことになっている。

 今回の時限立法は事業者の取り締まりだけではなく、消費者にも影響を及ぼす変更が見られるが、とくに注意したいのは価格の表示方法の見直しだ。

 これまで商品の価格を提示するときは、消費税を含めた「総額表示」が義務付けられていたが、本体価格の値段が変わらないことを消費者に意識づけるために、2017年3月まで「外税表示」が認められるようになった。たとえば、これまで1万800円(税込)と総額表示されていたものが、1万円(税抜)といった外税表示も認められるようになっている。そのため、これまでと同じ感覚で買い物をしていると、実際に支払う段階になって消費税込の金額を知って慌てることにもなりかねない。

 また、「消費税還元セール」「消費税分値引きします」など、消費税に関連する形で安売りをアピールする広告・宣伝は取り締まりの対象になった。

 今回の消費税引き上げは、たんに税率が改定されただけではなく、価格表示方法や広告宣伝など周辺事項にも変化が見られる。こうした法律の変化にも気を配り、生活防衛に役立てよう。

   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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