メイク前とメイク後の顔がまるで別人のよう。そうした女性は昔から珍しくないが、最近はその「テクニック」に驚く。皆がメイク上手になった? いや、ネットなどを通して、一応はヒミツの技術だったものをオープンにする女性、そして、技術を真似る女性が増えたというべきか。もちろん、「素顔を披露するのに抵抗がある」というほうが普通だろうが、それ以上に、変身ぶりを発表する喜びというものがありそうだ。結果として、メイクの力はすごい!という啓蒙活動になっている。

 美しさだけに目を向けて女性を口説こうとする輩にとっては、だまされているに等しい、「詐欺」ではないか、と感じるかもしれない。雑誌『S Cawaii!(エスカワイイ)』(主婦の友社)では、そうしたメイクで変身している女性たちを「美サギ女子」と呼んだ。同様の言葉に「整形メイク」などがあるが、整形特有のどことなく人工的な感じは少ないようにも思える。

 ユニークなのは、メイク前の顔をさらしている時点で、「カワイイ」を純粋に楽しむものになっていて、男子モテとは関係がなくなっている点だ。男性からすれば意外な行動原理かもしれない。「美しくなる」のは、「美しくなること自体が目的」であって、異性にアピールするためとは限らないのだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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