「ホルホル」は誇らしげな咳払い、日本語で言えば「えっへん」などに当たる韓国の言葉である。インターネット上のスラングでは「ホルホルする」などと使い、(韓国の話題に限らず)自慢をなんのてらいもなく垂れ流す意味になる。ここから、「世界に好かれている日本はすごい」というテーマのテレビバラエティ番組を、皮肉って「ホルホル番組」と呼ぶ。

 日本テレビ系『ネプ&イモトの世界番付』、TBS系『ホムカミ~ニッポン大好き外国人 世界の村に里帰り~』、テレビ東京系の『Youは何しに日本へ?』などなど、枚挙にいとまがない。外国人が日本の楽曲のカラオケを熱唱する『のどじまん THEワールド!』(日本テレビ系)もこの範疇に含まれるだろう。また、TBS系のスポーツエンターテインメント番組『SASUKE』には、外国の筋肉自慢がこぞって参加する様子が強調され、日本発のバラエティが世界で受け入れられた誇らしさといったものを隠さない。

 2011年の東日本大震災のあと、日本の美徳を多くの海外メディアが報じた。暴動を起こさない辛抱強さ、流された金庫を警察に届ける誠実さ、壊れた高速道路をすぐに復旧させる技術の高さ。それらは傷ついた日本人には、世界からのエールに感じただろう。その後、国外からの思わぬ高評価を認識した一般大衆は、「日本を持ち上げる」テレビに一種の癒しを感じるようになっている。悪い気はもちろんしない。だが自画自賛、それ自体には発展性のないことも指摘しておきたい。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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