2015年1月、相続税が大幅に改正された。

 今回の見直しは、富の再分配機能の強化、格差固定の防止の観点から、基礎控除額が引き下げられた一方、最高税率は引き上げられた。そのため、今年から課税対象になる人の増加が見込まれているのだ。

 国税庁の「平成25年分の相続税の申告の状況について」によると、2013年に相続税の課税対象被相続人数は5万4421人。その年の死亡者数が126万8436人なので、課税対象となったのは全体の4.3%だ。しかし、2015年以降は、課税対象者が6%程度に上昇すると言われている。

 1月からの相続税のおもな改正点は次の2つ。

(1)基礎控除額の大幅な引き下げ
  これまで〈5000万円+1000万円×法定相続人の数〉だった基礎控除額が、今後は〈3000万円+600万円×法定相続人の数〉に縮小。
  たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、これまでは8000万円までは相続税がかからなかったものが、改正後は4800万円を超えると課税されることになる。
(2)最高税率の引き上げ
  これまで50%だった最高税率が、2015年から55%に引き上げられる。また、税率構造も8段階になる。

 基礎控除額が引き下げられることで課税対象となる遺産総額が増え、適用税率がこれまでよりも高くなる人も出てくる。つまり、課税対象者が増加するだけではなく、納税額も大幅に増える可能性もあるのだ。
 原則的に、相続税は相続の発生から10か月以内に納税することが義務付けられている。しかし、不動産はすぐに売却できないこともあり、何も対策をとっておかないと、思わぬ延滞税に苦しむことになる。

 とくに首都圏など不動産価格の高い地域に土地・建物を所有している場合は、そのほかにめぼしい資産がなくても、課税対象になる可能性が高い。これまで、一部の富裕層のものだった相続税は、今後、庶民にも身近な存在に変わりつつある。

 この機会に、預貯金や土地・建物などがどのくらいあるのか、我が家の資産の棚卸しをしてみてはいかがだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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