いわゆる「キラキラネーム」を巡る問題はだいぶ昔から語られてきているが、実際のところ「変わった名前の子ども」はそこまで珍しくなくなっている印象もある。識者が心配するわりには社会の拒絶反応は低いというべきか。両親にしてみても、「個性的な名前をつけよう」という意識が特にない場合もあろう。いまどきのキラキラネームは無自覚的なのかもしれない。「無自覚」といえば、最近、もう一つ「キラキラ」の形容が冠せられるものがある。メールアドレス、メアドである。

 いまどき、年少時からすでに多くの人が自分のメアドを持っている。だが、まだ生きるゾーンは狭く、親や友人同士の連絡にしかメアドを使うことはない。気安さから自然に、「-chan(~ちゃん)」などのニックネームや、「love」や「dream」といったキレイめのワードを設定することがある。それ自体は人にとやかく言われる筋合いはない。だが、やがて多少のマイナス面が生じてくるのは、年齢を重ねると、あまり面識のない人とメールでやり取りする機会が多くなるからである。よく語られる例が「就活」である。そんな偏狭な人事部がどれだけいるかは疑問だが、キラキラ系のメアドは不利に働くという説がある。「常識的な選択に欠ける」ということらしい。もちろん、昨今は複数のメアドを使い分ける人も多いので、気に入っているメアドなら削除までしてしまう必要はない。

 ただ、若い世代のあいだでは、恋人の名前をメアドにする「若気のいたり」もそれなりに見られるらしく、我々年のいった大人からすると、なかなか悶絶してしまうところなのだが……。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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