上からのパワーハラスメントや、あまりにも長い労働時間に苦しむ「ブラック企業」の存在は、現在の日本の経済状況では「だからといって安易に辞めることも難しい」「逃げ場がない」ところが問題である。ならば、せめて帰宅してからは癒やされたいものだが、家庭においても過度な心理的プレッシャーを受ける例が多々あるという。家族からの言動で、多くは夫がどんどん追い込まれていく。いわゆる「ブラック家庭」と呼ばれる状態だ。

 ブラック家庭が語られる際には妻が「悪者」になってしまいがちだが、妻の方にもいらだちがある。旦那の稼ぎではいっこうに楽にならない生活。財布を妻が握っているのも、小遣いが少ないのも、そうしないとやっていけないからだ。厳しい言葉も、最初は発破をかけているつもりだっただろう。ところが、悪口というものは「酔ってしまう」場合がある。夫に暴言を放つことが、ストレスのはけ口となっていくのだ。「夫が家事に参加する時代」を都合良く解釈して、理不尽な掃除・洗濯を強いる場合もある。体も心も安まる間がない。

 大なり小なり夫婦間でいざこざはあるもの。「うちもブラック家庭だな」と笑えるうちは、まだ「普通」なのであろう。ただ、男性は知らず知らずのうちに妻の尊厳を傷つける発言をしていることがあるし、逆もまた真なり、ということは理解しておく必要がある。それで「キレてしまう」ことが、そもそもの「ブラック家庭」のきっかけだという。いろいろとこじれた場合には、お互いの愛情をかえりみる必要があるかもしれない。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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