英国の歴史家ジョン・アクトンが絶対的権力は絶対に腐敗すると言っているように、安倍自民党の腐敗が止まらない。見かねて『週刊文春』は7/9号で「自民党は死んだ」という特集を組んだほどである。

 ことの発端は、安倍首相に近い自民党の若手議員40人が6月25日に「保守的な国家観や政策を国民に理解してもらうため」(木原稔青年局長=当時)の勉強会「文化芸術懇話会」を開いたことからである。

 『週刊現代』(7/18号)によれば、そこで3バカ議員たちがこう発言した。

 「マスコミをこらしめるには、広告料収入がなくなることが一番。安倍総理は言えないが、文化人、民間人が経団連に働きかけてほしい」(大西英男衆院議員)
 「広告料収入、テレビの提供スポンサーにならないことが、マスコミが一番こたえるということが分かった」(井上貴博衆院議員)
 「沖縄の特殊なメディア構造を作ったのは戦後保守の堕落だ。左翼勢力に完全に乗っ取られている」(長尾敬衆院議員)

 大西議員は昨年4月にも国会で女性議員に対して「自分が子どもを産まなきゃ駄目だ」とヤジを飛ばした問題議員である。

 その上、そこへ招かれた安倍首相のお友達、作家の百田尚樹(ひゃくた・なおき)氏までが「沖縄の2つの新聞(筆者注:沖縄タイムスと琉球新報のこと)はつぶさないといけない。あってはいけないことだが、沖縄のどこかの島が中国に取られれば目を覚ますはずだ」と“暴論”を吐いたのだ。

 類は友を呼ぶ。安倍首相の“寵愛”を受けている議員や文化人たちは首相の腹にある「ホンネ」を代弁しているだけなのだ。

 したがって当初は自民党首脳たちに危機感はなかった。谷垣禎一(さだかず)幹事長や安倍首相は世論や党内からの反発に慌てて3人の議員を「厳重注意処分」にし、木原議員を青年局長からはずしたが、騒ぎは収まらない。毎日新聞7月6日付は安倍内閣の支持率が「支持する42%、支持しない43%」に逆転したと報じている。

 自党の議員たちのこれ以上の暴言&放言を恐れた自民党幹部は、安保法制をテーマに討論する予定だった田原総一朗氏の『朝まで生テレビ!』に出演をOKしていた議員たちに圧力をかけて断らせ、田原氏によるとその数30数人に上ったという。

 数による“横暴”を民主主義だと勘違いしているヒットラーもどきの首相を戴く自民党は、崩壊寸前である。

 沖縄タイムスと琉球新報は早速自民党に抗議し、経済界からも「非常識発言」だと批判を浴びている。

 だが『週刊新潮』(7/9号、以下『新潮』)は驚くような特集を組んできた。タイトルは「うぬぼれ『自民党』の構造欠陥」だが、中に「白でもクロと書いてきた『琉球新報』『沖縄タイムス』」という章があるのだ。まるで自民党や百田氏を援護射撃するような記事である。

 「ライバルのように見えるが、『反基地』『反安保』のためなら犯罪者を正義の人に仕立てることも平気だ。そして、沖縄では両紙の報じたことが『事実』になる」(『新潮』)

 両紙が百田氏へ抗議声明を発表したことも「一作家の冗談話を大上段で批判する様は異様と言うしかない」と批判している。

 さらに「沖縄に言論の自由はない。『琉球新報』『沖縄タイムス』の自由があるだけである」と結ぶ。これを沖縄の歴史や民衆の痛みを理解しない「下品な言い方」だと考えるのは、私だけではないはずだ。

 その上、件の百田氏を登場させてこう言わせるのである。「私を『言論弾圧』男に仕立てあげた大マスコミに告ぐ」

 「『懇話会』はまったく私的な集まりで、公的なものではない」
 「その時のセリフを正確に書く。『沖縄の2つの新聞社は本当はつぶさなあかんのですけれども』」
 「私は議員でもなんでもない民間人である。一私人が私的な集まりで、しかもクローズドな場において、雑談のような質疑応答の中で口にした一言を『言論弾圧を目論む言葉』として弾劾するのはどうなんだろう。それともそれがマスコミの正義なのか」

 この男の品性のなさ自覚のなさに、書き写す手が震えてくる。いくら陣笠とはいえ自民党議員の集まりに呼ばれて、クローズドな私的な集まりという言い方はないはずだ。

 オフレコの会見でも問題発言があれば国民に知らせるのはメディアの使命である。それに百田氏は安倍首相のお友達で流行作家、一私人ではない。

 彼はこうも言っている。「作家『百田尚樹』も多くの読者が『つまらん、もう読むのをやめよう』と思ったときに、自然に消えてなくなる」。

 私は以前からこの男の書いたものなど読む気はないが、今回の発言をきっかけに、私のような人間が多くなるのは間違いないと思う。

 保守の論客・小林よしのり氏も『週刊ポスト』(7/17・24号)で自民党議員の劣化をこう憤っている。

 「これが現在の自民党の一般的レベルだ。もはやネトウヨと同等まで劣化した。
 彼らは『正論』や『WILL』、『産経新聞』といった紋切り型で勇ましいことばかり書いてウケようとするメディアばかりに目を通しているのだろう。そこに登場する言論人は中韓やリベラル派に対する暴言をためらいもなく吐いている。それを読んでいれば気持ちいいのかもしれないが、一方で本はまったくといっていいほど読まないから違った見解を知らず、幅広い知識がない」

 党内はガタガタ、支持率は急降下する安倍首相だが、圧倒的な数を頼んで会期を大幅に延長し「戦争法案」を強行採決する腹を固めた

 衆議院で強行採決して参議院に送れば「60日ルール」がある。参議院で60日以内に採決されなくても、衆議院で3分の2の賛成があれば法案は成立するというものである。

 だが安倍首相の“野望”を挫くことになるかもしれないのは、総裁選かもしれない。無風で再選と思われていたが、『新潮』によれば「仮に(支持率が=筆者注)30%を切るような事態になれば、対抗馬が出る可能性もある」(全国紙政治部デスク)。そうなれば総裁選が行なわれ、この期間中はこれまでの慣例からいって国会はストップする。

 さらに安倍首相は9月28日からの国連総会に出席するため、25日には日本を出発しなければならない。

 大幅延長しても、何か想定外のことが起きれば、強行採決、60日ルールを使っても間に合わない事態もありうるのだ。

 もっと大事なことがある。この明確な憲法違反の「戦争法案」が成立してしまえば、日本国憲法は「襤褸(らんる=ぼろきれ)の旗」と堕してしまう。

 憲法改正などしなくても、解釈改憲ではなく憲法違反の法案を成立させてしまえば、実質的に憲法をただの紙切れにすることができる。それが安倍首相の戦略だと、私は見ている。その安倍の汚い“謀略”を絶対阻止しなくてはいけない。

 憲法を蔑ろにするということは「国民主権」を蔑ろにすることである。今こそ国民の意思がどこにあるのか、大声を上げて安倍自民党に聞かせ、主権が国民にあることを知らしめてやろうではないか。

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 権力が国民の言論を取り締まろうというときには、ワイセツ分野から手を入れてくるのが常套手段である。本人たちも抗弁しにくいし世論の後押しも期待できない。
 まあ自業自得だなどと我関せずでいると、いつの間にか言論表現の自由は狭まり、ものいえぬ国になっていくのである。そのことは歴史が証明している。
 改正児童ポルノ禁止法はその第一弾になるかもしれないのだが、大メディアはその恐ろしさを伝えない。今週の『現代』の記事をじっくり読んでいただきたい。

第1位 「『エロ本所持』容疑であなたを逮捕する」(『週刊現代』7/18号)
第2位 「日テレ水卜麻美と関ジャニ横山裕」(『週刊文春』7/9号)
第3位 「『36年前の不倫を許せますか?』“介護夫”暴行死事件」(『週刊文春』7/9号)

 第3位。さて、身につまされる話が『文春』に載っている。昨年7月に東京都目黒区の主婦(当時70歳)が介護していた79歳の夫の頭をベッド上で何度も殴りつけ、その9日後に夫は急性硬膜下血腫で死亡した。
 その動機が36年前の不倫が許せなかったからだというのである。事件の1年前に夫婦で思い出話をしているうちに、この浮気の話も出て、夫は“時効”だと思って、好きになった過程や旅行に行った話、ペンダントをプレゼントした話を語ったのだ。その後、夫は胃ガンの手術などをして要介護状態となった。
 そして事件が起こる
 教訓! いくつになっても浮気した話は自分の心の中にだけ秘めておくこと。ゆめゆめ女房になど話してはいけない。女は執念深い。幽霊は女と相場が決まっているのをみてもわかるはずだ。

 第2位。日本テレビの水卜麻美(28)といえば『週刊文春』の「好きな女子アナ」で昨年は春秋連覇した人気女子アナである。こう書いて、彼女が出ている『ヒルナンデス!』を一度も見ていないことに気がついた。私は外で彼女に会ってもわからない。水卜(ミト)ちゃん、ごめん! 読み方はミトでいいのかな?(編集部注:みうら・あさみ、ニックネームは「ミトちゃん」)
 ともかく人気のある彼女が『ヒルナンデス!』に一緒に出ている関ジャニ∞の横山裕(34)と付き合っていると『文春』が報じている。
 横山はメンバー1の演技派だという。二人が会っているのは何と都内のボクシングジムだそうだ。そこで仲良くストレッチしたり、水卜は本格的にバンデージを巻いてトレーニングに励んでいるところを、『文春』が激写。
 お決まりのデートのやり方。いったん別れ別れになって、彼女がタクシーで高級百貨店(どこだろう? 渋谷の東急百貨店本店かな)へ立ち寄って食材を選んだ後、港区にある横山の自宅マンションへ。遅れて横山ご帰還。
 もっともジャニーズ事務所側は「横山の自宅で仕事上親しくさせて頂いている皆様との食事会をした際、その中のお一人に水卜アナウンサーがいらっしゃったことはありますが」と、これもお決まりのコメント。
 『文春』がグラビアで掲載している直撃の際の水卜のビックリした表情がいい。名刺を見つめて「なななんだ~ッ」!
 横山さんの舞台を見に行かれていますよね、という質問には、

 「えっ? ほんっとにすごい見てる。皆さん、色々なんか色んなあれなんですね。ほんっとに申し訳ない」

 交際されているかどうかだけでも、という質問には、

 「これ多分、お答えしないほうがいいような、どっちにしろ」

 人気者は辛いね。いい大人同士が付き合っていることぐらい自分でいえばいいのに。そう思うのは私のような無名の一私人だからだろうね。

 第1位。安倍首相は戦争のできる国にすることばかりに熱心なようだが、その裏で国民の自由を縛る法律はいくつも作ってきた。『現代』が報じているこれもそのひとつである。

 「7月15日、改正児童ポルノ禁止法の猶予期間が過ぎ、児童ポルノの単純所持が処罰の対象になる。簡単に言えば、この日から、18歳未満の『児童』の裸などを写したエロ本や写真集、DVDなどを『ただ持っているだけ』で逮捕されてしまうのだ。被写体が女の子だろうと男の子だろうと関係ない」(『現代』)

 それはこのケースでも適用されるかもしれないという。1991年に発売され累計155万部を売り上げた宮沢りえのヌード写真集『Santa Fe(サンタ フェ)』だ。撮影当時、彼女はまだ17歳だったという説が根強い。宮沢りえや撮影した写真家の篠山紀信氏は、正確な撮影時期を明かしていないが、児童ポルノ禁止法改正案の国会審議でも同書は激しい議論を呼んだそうだ。
 複数の議員が「(出版社や書店が)廃棄するのは当然」「有名な女優だろうが関係ない」「篠山さんにもネガごと捨ててもらう」と断じていたという。『現代』によれば、

 「さらに恐るべきは、今や『ポルノ界の主流』ともいうべき、インターネット・ポルノに対する規制である。警察は、ネット上で出回っている無数の児童ポルノこそを『本丸』と見ている」

 海外のエロ動画サイトで、『本物! 女子高生援交(援助交際)動画』と題された生々しい映像を見てしまったとする。家族にバレないように見終わった後で履歴はちゃんと消し、変な広告もクリックしなかった。
 そう思って安心しきっているとしたら、あなたのリテラシーは危険水準だと『現代』は言う。

 「インターネット上の全ての行動、つまり『誰がどのサイトに接続し、何を見たか』はすべてNTTなどのネット接続会社に記録されています。たとえ手元のパソコンで履歴を消したとしても、接続会社の履歴は消えません。
 もちろん、全契約者のデーターは膨大すぎるので、誰かがいつもチェックしているというわけではありません。しかし、仮に捜査当局が『この児童ポルノ動画に接続したことのある回線のデーターを見せてほしい』と要請した場合、おそらくネット接続会社は応じるでしょう」(中央大学総合政策学部准教授の岡嶋裕史氏)

 こんな例があるのだ。日本ではほとんど報じられなかったが、98年から2000年代前半にかけて、海外で史上最大の「児童ポルノ一斉摘発キャンペーン」が展開された。このキャンペーンで特筆すべきはイギリスだという。約4300件の家宅捜索を行ない、有罪になったのは1400人余り。
 一方で大量の冤罪(えんざい)を生み、少なくとも30人以上の自殺者を出したそうだ。あまりに荒っぽいその捜査は今なお大きな論議を読んでいるという。
 『現代』は「とばっちりや冤罪から身を守るためにも、手元にある『疑わしきもの』は、この際処分する他ないのだろう」と結ぶ。
 しかし冗談ではない。私にロリコン趣味はないが、仕事柄そうした写真集を買ったこともある。そんなものはどこか家の隅に埋もれているのであろうが、ガサ入れされれば出てくるかもしれない。ネットのエロ動画も然りである。
 他人に見せたり売ったりしないで個人で楽しむ趣味の領域にまで国家が介入するのは行き過ぎだと、私は思う。暗く恐ろしい世の中になってきたものだ。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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