私の時代は「女子高校」と聞いただけで無条件に憧れ、そこに咲き誇る美しい花々を夢想し、身悶えしたものであった。

 私は東京・杉並区にある男女共学の都立高校だったが、そこは珍しく150・150の男女同数であった。そのため「フォークダンス」(懐かしいな)の時間に、むくつけき野郎同士でペアを組むということはやらずにすんだ。

 女子学生の甘く匂う黒髪と白魚のような白い手(容貌はこの際関係ない)を握りしめる至福の時間が永遠に続いてくれと願ったものである。女子校で、自分がなぜか一人だけそこに入ることができて、彼女たちに取り巻かれている姿を妄想したことも一度や二度ではない。

 そんな青春の甘美な思い出を『週刊ポスト』(12/11号、以下『ポスト』)はぶち壊してくれた。女子校育ちの女子社員は「好き嫌いが激しく、男を内心では蔑んでいるが、上手に利用している」女性が多いというのである。百年の恋も醒めてしまう言い方ではないか。

 『ポスト』によると「トラブルがあっても慌てないし、失敗してもへこまない。その点はすごいと感心するが、責任を感じないから困る。協調性もない。女性ばかりの中で育ったためか、黙っていては目立たないと、何でも強調して自分からアピールしてくるから、相手をしていて本当に疲れる」(53歳男性食品会社部長)というのである。

 そのうえ、管理職になると、気に入った部下には優しいが、嫌いな部下にはとことん厳しくするから、社内からは「不公平だ」という不満が渦巻いているという。

 だが『ポスト』が女子高校出身の女性代表として挙げているのは、首を傾げたくなる人ばかりである。その象徴的存在が父親と骨肉の争いを繰り広げた大塚家具の大塚久美子社長だという。彼女はお嬢様学校として有名な「白百合学園中・高出身」だが、「来客の前で社員を頭ごなしに叱責するなど、『お嬢様だからリーダーには向いていない』」(経済誌記者)と思われていたようだ。だが、父親に完全勝利した後は「お詫びセール」などで売り上げを拡大させ、6月の中間決算では当初の業績予想を上方修正させたのだが、ここでも「女子校育ちゆえのストイックさ」(同)が功を奏したと、経営手腕が評価されるのではなく、女子校育ちを云々されてしまうと、やや牽強付会すぎるのではないか。

 『ポスト』も書いているように、女子校出身者の社会に出てからの活躍振りには目覚ましいものがある。『週刊ダイヤモンド』(12年11/3号)では、「高校・中高一貫校別生涯賃金期待値ランキング」は、名だたる男子校・共学校を押しのけて2位にフェリス女学院、3位に女子学院がランクインしている。

 その例として『ポスト』が挙げているのは、島尻安伊子(しまじり・あいこ)沖縄・北方領土担当相(聖ウルスラ学院英智高=05年まで女子校)、「NEWS23」の膳場貴子(ぜんば・たかこ)アナ(女子学院中・高)、タレントでエッセイストの小島慶子さん(学習院女子中・高)、経済評論家の勝間和代さん(慶應義塾女子高)たちである。小島さんを除いて、島尻さんは知名度が低すぎるし、膳場アナは本業よりも東大卒の男と結婚・離婚を繰り返していることが話題になるほうが多い。勝間さんはたしかに男勝りの頑張り屋だが、男性からの好感度はあまり高くはないと思う。

 膳場さんのように「男関係に難あり」の理由として、「純粋培養というか、男を見る目がなくて、すぐに惚れてすぐに別れる」(42歳男性社員)ところがあり、やはり自らも女子校(女子学院中・高)卒の漫画家でコラムニストの辛酸なめ子さんは女子校出身者には「聖女」と「浮気症」の両面があるとして、こう言っている。

 「聖女タイプは男性に対して免疫がなく、妄想を膨らませやすい。『相手は自分に対して性的な魅力を感じているはずだ』とか。男性がちょっとこっちを見ただけで『いやらしい目で見てる』と思い込み、やたらとセクハラにうるさくなる。浮気症の面が強い子は会社役員の愛人になったり、社内不倫を誘発したりします。どちらにしても、男性上司や男性社員から見たら、距離の置きかたが難しいですよね」

 私たちの時代の女子校といえば「良妻賢母」の女性を育てる学校というイメージがあったが(古いね~)、今は少数派だそうである。当然であろう。女性が社会で働くことが当たり前になり、バカな男よりもできる女性のほうが企業にとっても有り難い存在になってきたのだから、エリート街道をまっしぐらにひた走る女性がこれからますます増えていくこと間違いない。

 私が『ポスト』の中で唯一納得したのはこの部分である。女子校育ちがなぜ社会で、女々しい男たちを尻目に存在感を増していくのか?

 「女子校出身者は学生時代に役割分担せずに、大変なことでもすべて女子だけでやってきた。だからリーダータイプの子にはとくに、『女子は賢い生き物で、同世代の男子は幼稚』と考えてしまう人が多いんです」(コラムニストの朝井麻由美さん=共学の都立西高出身)

 共学では自ずと男女の役割が決まっていて、男たちは知らず知らず、男はたくましく、女は優しくあれという「幻想」を抱いたまま社会に出て行くヤツが多い。だが、女子校出身者は“男もすなるものを、女もしてみむとてするなり”と、何から何までやってきているから、今どきのひ弱な男など何人かかってきても敵うわけはない。そのうえ、真面目に勉強しているからバカな男十人分以上の能力と働きをする。男以上に酒を呑み、座を盛り上げる能力も上だから、よほど人を見る目がない上司に遭遇しないかぎり女性が出世していくのは必然なのである。

 あえて、女子校出身の優秀な娘さんたちにアドバイスをするとすれば、「男はバカだけど可愛い」と思う気持ちを、心の隅にちょっぴりだけもってもらいたいということである。男ってナイーブで可愛いもんだなと、私はこの歳になってつくづく思っている。カミさんはまったくそうは思ってないようだが。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 11月30日に運用を担う年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が「公的年金の積立金の運用で、今年7~9月期に7兆8899億円の損失が出た。四半期の赤字額ではリーマン・ショック直後の2008年10~12月期の5兆6601億円を超え、年金積立金の市場運用を始めた01年度以降で過去最悪だった」(朝日新聞12月1日付)と発表した。このことは『ポスト』がだいぶ前に報じていたが、新聞は「発表されないと書かない」体質があり、これほど重大な政府の過ちを国民に知らせなかったのである。週刊誌にはまだまだできることがあるのだ。

第1位 「『シールズ』美人メンバーが『添い寝マッサージ』でバイト中」(『週刊新潮』12/3号)
第2位 「元CIA長官 衝撃の告白『飛行機か、地下鉄か──年内に米国でテロが起きます』」(『週刊現代』12/12号)
第3位 「『とくダネ!』小倉キャスター『歩きスマホに罰金を』発言の賛否」(『週刊ポスト』12/11号)

 第3位。『ポスト』はフジテレビの『とくダネ!』小倉智昭(ともあき)キャスターが、歩きスマホに罰金をかけろと発言して賛否が起きていると報じている。

 「自動車を運転している時に携帯を使ってると罰金になるじゃない。歩きながらスマホ使ってる人も罰金でも取ればいいじゃない。税収不足だし。止まってやらなきゃダメというルールを作りましょう」(小倉氏)

 モバイル評論家の法林岳之(ほうりん・たかゆき)氏も深く頷いて、小倉さんの発言は何もとっぴなものではないという。さらに世界的に歩きスマホは取り締まりの方向に傾きつつあり、米ニュージャージー州フォートリーでは12年に「歩きスマホ規制条例」が成立、違反者に85ドルの罰金が科されるようになっているというのだ。
 私も同意見である。私のオフィスのすぐ近くには早稲田大学があるが、地下鉄から降りた学生たちが、スマホを見ながらヨチヨチ歩くので蹴っ飛ばしたくなることがままある。
 横から覗いてみると、たいていはゲームをやっているだけである。そんなことは教室でやればいい。どうせ勉強なんかしないのだから。歩きスマホ禁止、電車の中ではスマホを通じなくするべきだとまで、私は思っている。小倉発言なんぞ当たり前すぎる。

 第2位。『現代』は元CIA (米中央情報局)長官のジェームズ・ウールジー氏(74歳)の独占インタビューを掲載している。
 イスラム国は次のテロはワシントンだと名指しした。アメリカはクリスマスシーズンを迎えて大混乱しているようだ。ウールジー氏がこう語る。

 「アメリカはかなり脆(もろ)い状態にあります。いますぐにテロリストがパリと同じような事件を起こしてもおかしくない。この数週間以内、つまりは年内にアメリカでテロ計画が実行されても、残念ながら私は驚きません。(中略)
 テロリストたちはアメリカで、自動小銃などを簡単に手に入れられます。言うまでもなく、これは悪用すれば大量殺戮が可能な武器となります。
 テロリストたちが使う通信手段もプレイステーションなどのゲーム機を使ったものになっており、非常に巧妙な暗号化がなされている。私がCIA長官を務めていた'93~'95年当時にくらべて、敵の情報を掴むのはより難しい。テロを未然に防ぐのは非常に困難になっているわけです」

 ワシントンでは、地下鉄での警察官の巡回強化、抜き打ち検査が開始され、ホワイトハウス周辺ではシークレットサービスが増員されたという。地下鉄を避ける通勤者も日に日に多くなっているそうである。
 在米ジャーナリストの肥田美佐子氏は、「アラバマ州やテキサス州などでは、護身のための銃器を求める人が急増している。パリでのテロ以降、売り上げが3割増を記録している銃器店もあるようです」と話している。
 だが、欧米はイスラム国を壊滅することはできないと、CIAでカウンターテロリズムアナリストを務めたアキ・ベリズ氏は指摘する。

 「イスラム国を壊滅したいのであれば地上部隊の派遣が必須です。(中略)
 もし地上部隊がうまくイスラム国が支配する都市を征服できたとしても、その後はどうなるのか。地上軍を撤退させれば、すぐにイスラム国は復活するでしょう。アメリカがイラク戦争で学んだのは、その国から撤退する方法を知らない限りは兵を送るべきではないということでした。が、アメリカはまだその答えを持っていない」

 在英国際情報シンクタンクのコマツ・リサーチ・アンド・アドバイザリーで代表を務める小松啓一郞氏は、テロはますます巧妙かつ悪質になっているという。

 「米英の諜報活動の専門家に聞くと、いまはボールペンのように見える超小型容器に格納できる生物兵器ができている。金属探知機にもひっかからず、500万円で作製できる。これを空気中に放つと早い人で17時間ほどで発病し、最終的に広島型原爆の60~70倍の殺傷力があるとされています」

 これは17時間前後経たないとテロが起こったことがわからないため、犯人は容易に犯行現場から離れ、地球の裏側まで逃げることができるのだ。
 日本も安倍晋三首相が「イスラム国対策」として中東諸国へ2億ドルの支援を行なうと表明したため、イスラム国からターゲットにされている。
 日本でテロが起きるとしたらどういう形で起きるのか、日本大学総合科学研究所の安部川元伸(あべかわ・もとのぶ)教授がこう話す。

 「日本では銃の調達は難しいので、化学肥料や除光液など身近で手に入る材料を使って爆発物を作り、人の多いところでそれを爆発させるテロが考えられます。ターゲットとしては銀座などの繁華街や、乗車率が過密な通勤時の電車などが狙われやすい」

 そんなことが現実に起きたら被害は甚大なものになる。そんな日が来ないように祈るしかないのだろうか。アメリカの9・11から14年。テロと戦い、テロをなくすと言っていた欧米諸国だが、テロはなくなるどころか世界中がテロの恐怖に怯えなくてはならないようになってしまった。
 もはやこれまでのようなテロとの戦い方を考え直し、迂遠なようだが力よりも格差是正や貧困をなくす方向で、少しずつ世界から「不満」を取り除いていくしかないのではないか。そう思う日々である。

 第1位。『新潮』の本領は、底意地の悪そうなおっさんが「正義」や「誠意」を建前にしている人間に対して、あんたの本音はそんなところにあるんじゃないだろ?とニヤニヤ笑いながら詰め寄るような記事にあると思う。
 反安保法で名を馳せた「シールズ」関西の美人メンバーが「添い寝マッサージ」店で働いていたという記事は、その典型的なものであろう。
 安倍政権を「命を馬鹿にしている」と批判し、「路上に立ちながら理想を語る」ことでよりよい社会を作っていきたいと抱負を語った小川麻紀さん(仮名)は、全国紙や政党機関誌にも度々登場した女性だという。
 その言やよしだが、その彼女によく似た女性が、さる大都市の繁華街にある「いかがわし気なマッサージ店」(『新潮』)の前で、女子高生の制服姿で客探しをしていたのを見つけたというのである。
 今話題のJK(女子高生)リフレと呼ばれる業態の店だそうだ。おっさん記者が「えいっ! とばかりに、60分8000円の“添い寝リフレ”なるコースを予約して、その子を指名した」(同)。薄いカーテンで仕切られた部屋で、彼女は「うつ伏せの記者に跨(またが)ってマッサージ」(同)をした後、添い寝してくれたそうだ。
 そこで「シールズの小川さんでしょ?」と尋ねると、あっさり認めたという。彼女は「こういうバイトを運動が受け入れられないとしたら、おかしいと思う。ファミレスとかケーキ屋さんでバイトしている子ばっかりって、そんな幸せな社会運動、ありえないでしょ」と話し、こう続けた。

 「ここで働いているのは半分賭みたいなもので、どっかでバレるなって。そうしたらシールズも辞めるつもり。バレたら、社会的にアウトですよ」

 おじさん記者は「マズイと思うなら、辞めたほうがいいんじゃないかな?」と、ごく当たり前の感想を漏らす。

 大昔なら、こうした底辺の女性たちの実態を知らずして社会変革などできはしない、私はそれを実践しているのだなどと大見得を切った女性がいたかもしれないが、彼女にそれを望むのは無理というものであろう。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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