いまさらいうまでもなく日本を代表する5人組の“アイドル”グループである。といっても30代は香取慎吾だけで、キムタクこと木村拓哉、中居正広、草彅剛、稲垣吾郎は40歳を超えている中年男たちである。

 1988年にスケートボーイズのメンバーとしてデビューし、3年後にジャニー喜多川社長がSMAPと命名した。ちなみにSMAPは、スケートボーイズのキャッチコピーだった「Sports Music Assemble People」(スポーツや音楽をやるために集められた人々)の頭文字。2003年に出したCD『世界に一つだけの花』が200万枚を超える大ヒットとなった。

 今年CDデビュー25周年を迎えるSMAPだが、昨年初めから事務所を離れて「独立」するのではないかと噂されていた。

 これを最初に報じたのは昨年の『週刊文春』(2015年1/29号、以下『文春』)だった。タイトルは「ジャニーズ女帝 メリー喜多川 怒りの独白5時間」。ジャニー氏の姉で事務所副社長のメリー喜多川氏とマネージメント室長の飯島三智(みち)氏がSMAPを巡って大戦争を繰り広げているというのである。

 飯島氏は売れない頃からSMAPをマネージメントしてスターへと育て上げたため、SMAPの5人も慕っているが、それをおもしろく思わないメリー氏と彼女の娘で「嵐」を手がける藤島ジュリー景子副社長とが対立しているというのである。

 またSMAPのキャスティングに携わるテレビ局関係者にとっても飯島氏の存在がどんどん大きくなっているそうだ。

 だが芸能界きってのやり手であるメリー氏の力は絶大だ。『文春』に対して、ジュリー以外に誰かが派閥を作っているというのなら、許せない。飯島を注意します。今日、(飯島氏を)辞めさせますよと言い切る。

 早速、メリー氏は飯島氏を呼びつけ、彼女は困惑しながらやってくる。その彼女にメリー氏はこう迫る。

 「飯島、私はこう言いますよ。『あんた、文春さんがはっきり聞いているんだから、対立するならSMAPを連れていっても今日から出ていってもらう。あなたは辞めなさい』と言いますよ」

 『文春』が嵐とSMAPは共演しないと言われているがと聞くと、メリー氏がこう言い放った。

 「だって(共演しようにも)SMAPは踊れないじゃないですか。あなた、タレント見ていて踊りの違いってわからないんですか? それで、そういうことをお書きになったら失礼よ。(SMAPは)踊れる子たちから見れば、踊れません」

 天下のSMAPも形無しである。しかもメリー氏にとって事務所のトップタレントはSMAPではなく、いまでも「マッチ(近藤真彦)」だというのだ。

 この確執が水面下で続いていたのである。年明けの『週刊新潮』(1/21号、以下『新潮』)が「4対1に分裂!『SMAP』解散への全内幕」とすっぱ抜いたのだ。一部のスポーツ紙は自分のところがスクープしたなどとふざけたことを言っているが、時間的にも『新潮』が先である。

 この報道に事務所側が「飯島氏の退職とSMAPの独立問題を協議している」と認めたものだから、ワイドショー、スポーツ紙、大新聞からNHKを含めたニュース番組までが挙って取り上げる「大ニュース」となったのである。

 いちアイドルグループの独立問題が国論を真っ二つにするほどのニュースになり、海外メディアまでが報じたが、それほどこの国が「平和ボケ」しているという証拠であろう。

 『新潮』によれば、この問題はこじれにこじれ、暮れのNHK紅白歌合戦もあわやジャニーズ事務所タレント総引き上げの事態になりかかったそうだ。

 件の飯島氏が昨年秋口、NHKの制作局の幹部に「今年の総合司会はSMAPにしてほしい」と推してきたというのである。

 そこでNHKが事務所側に相談したところ、事務所から「そんなにSMAPを重用したいならお好きに、どうぞ。その代わり、今年は他のグループは全て引き揚げますから」と通告されたというのだ。あわてた幹部たちが事務所に頭を下げてSMAPの司会は消え、メリー氏が重用しているマッチ(近藤真彦)のトリが決まったのだそうだ。

 たいしたヒット曲もなく久しく紅白に出ていなかったマッチがトリをとることに違和感があったが、こうした経緯があったようだ。

 事務所側と飯島氏の仲違いは修復不能なまでにこじれ、双方が弁護士を立ててやり合っていたが、12月半ばに飯島氏が解雇されることに決まった。

 だが、苦労した時代からマネージャーを務めた彼女への感謝の思いがSMAPのメンバーたちに強く、結局、中居正広、草彅剛、香取慎吾、稲垣吾郎が事務所を出て飯島氏と事務所を設立し、キムタクだけが残るということになったと『新潮』は報じた。

 キムタクはなぜ残ることにしたのか? 『新潮』によれば、彼は「成功したから独立するというのは、スジが通らない。自分はジャニーさんやメリーさんを決して裏切りません」と言ったというのだ。

 だが、この飯島クーデターはほとんどの芸能プロダクションとそれにパラサイトしている芸能マスコミに袋だたきにあう。

 スポニチは1月14日の一面で「SMAP女性マネ、独立クーデター失敗」といち早く報じた。その理由を「タレントを連れての独立は芸能界のルール違反。『これがまかり通ると芸能事務所は立ち行かなくなる。元の事務所に後ろ足で砂をかける行為で許されるものではない』(芸能関係者)」とし、「クーデターは芸能界の支持を得ることができず失敗に終わった」と断定している。

 その後、飯島氏は芸能界から完全に身を引くことになったとも報じている。こうしてSMAPの4人は「四面楚歌」になってしまったのである。

 多くのファンたちが「SMAPを解散しないで」と涙ながらに訴える声をテレビは流し続けた。

 そうしたファンの声に後押しされたという理由で、1月18日の「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)に5人が生出演し、「解散騒動」を謝罪したのである。

 キムタクが中心になり、それぞれが騒動を起こしたことへの謝罪の言葉を述べ、キムタクが最後に「これから自分たちは何があっても前を見て進みたい」と締めた。

 だが、香取の泣きそうな表情、中居の疲れ切った顔に比べてキムタクの勝ち誇った表情が「あること」を物語っていた。それは草彅の言葉の中にある。

 「今回、ジャニーさんに謝る機会を木村君が作ってくれて、今僕らはここに立てています。5人でここに集まれたことを安心しています」

 キムタク以外の4人が戻ることを了承する代わりに、事務所側が4人に対してテレビによる「公開謝罪」を要求したのではないか。放送終了と同時に事務所側の「パワハラ」ではないかという声が上がったのも当然だろう。

 私は、SMAPの独立が失敗したことを残念に思っている。なぜなら4人は何度も話し合った結果、事務所から離れる決心をしたのだろうが、そこに至るまでの彼らの葛藤に思いを致すからである。

 これまでも何人かのタレントがこの事務所を離れて独立しようと試みたが、事務所側がテレビ局にその人間を使わないよう圧力をかけたため、成功しなかった。

 だが、天下のSMAPが独立したなら、テレビ局の中には彼らを使おうという人間も出てくるかもしれない。昔、ナベプロという芸能プロダクションが「王国」を築いた時代があった。だが、一つのテレビ局(日本テレビだが)が、ナベプロのあまりの「横暴」に反発して自前でスターをつくろうと「スター誕生!」という番組をつくり、そこから桜田淳子や山口百恵など“テレビが生んだ”スターが輩出した。それをきっかけにナベプロは勢力を失っていったのである。

 今度の独立はジャニーズ事務所というより、守旧派の芸能界全体を変えるきっかけになるかもしれなかったのである。

 彼らが誤算だったのは、SMAPが稼ぎ出す金額が大きすぎたことであった。『新潮』が試算したところによると、2014年だけでもSMAPが稼いだ売上は「優に250億円は突破するに違いない」(『新潮』)という。

 同じ『新潮』がジャニーズ事務所の年間売上は1000億円程度ではないかと推測しているから、そうだとするとSMAPはその4分の1を稼いでいることになる。

 全部なくなるわけではないが、相当な危機感を事務所側は持ったに違いない。そこで芸能界の「ドン」といわれるS氏(私の推測だが)に4人の説得を頼み、スポーツ紙には「恩を仇で返す」のかと書かせ、彼らを孤立させ、ファンを動員して「元に戻れ」コールを巻き起こした。

 抱えているトップタレントに独立されたらと、同じ穴の狢(むじな)である芸能プロダクションや4人が相談したタレント仲間たちも、掟を破ったらどうなるかを説いたに違いない。

 かくして4人の反乱は鎮圧され、芸能村は何事もなかったかのように動いていく。だが、彼らがやったことは無駄にはならない。「自分たちも人間だぞ」と声をあげたのだから。いまだに「女工哀史」のままのような芸能界に開けた風穴は、必ずこれから大きくなるに違いない。中居、草彅、香取、稲垣、夜明けは近い、頑張れ!

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 SMAP騒動ばかりに目を奪われがちだが、『文春』の美智子皇后が雅子妃を「叱った」という記事は本物の大スクープである。何しろ二人だけの完全プライベートな会話のやりとりが(おそらく)すべて掲載されているのだ。美智子皇后の了解はとっているはずだが、どうやったのだろう。何はともあれ貴重な2人の会話を読んでいただこう。

第1位 「美智子さまが雅子さまを叱った!」(『週刊文春』1/21号)
第2位 「ゲス乙女川谷絵音(27)の妻 涙の独占告白」(『週刊文春』1/21号)
第3位 「滝川クリステル著書にパクリ疑惑!」(『週刊文春』1/21号)

 第3位。滝川クリステルが母親と共著で出した『リトルプリンス・トリック』(講談社)に、東京五輪エンブレム問題のように「パクリ疑惑」が持ち上がっていると報じている。
 これは『星の王子さま』の謎解き本なのだそうだが、その着想が、市井の文学研究者が長年研究してきたものと同じで、盗用したのではないかというのである。
 私はこういうことには門外漢だが、何でも滝クリの本では、サン=テグジュペリが描いた挿絵を読み解いていくと、王子はハレー彗星で、巻末のカラーとモノクロ挿絵が、明けの明星と宵の明星をさしているというのだ。
 それがどういう重要な意味を持つのか私にはわからないが、市井の研究者の友人が言うには、彼は長くその研究に没頭している。また「彗星会議」の運営委員長を務めた国立天文台の渡部潤一副台長も、私が知る限り、国内でこういう研究をしている人は彼だけではないか、と『文春』で証言している。
 その上、滝クリの母親と件の研究者とは長年の知り合いで、彼に以前からこの話を聞いているのである。
 研究者が講談社に電話で問い合わせたところ母親から電話があり、やりとりをしているうちに、母親の知人という人間から、右翼を仄めかして「これ以上、騒ぎ立てるな」と言ってきたというのだ。穏やかでない。
 2000年の朝日新聞に研究者の話が載っているが、これについての著作はないようだ。だが滝クリの母親のように、「この世の中に私と同じようなことを考えている人がいてもおかしくないんじゃないですか」という言い草はちとおかしい。
 よく知った人間であり、彼から話を聞いているのだから。その本の核心部分がその発想だとしたら、それを丸ごと頂いて知らん顔ははなはだよろしくない。
 滝クリのブログのタイトルは「大切なものは目に見えない」というそうだが、これは『星の王子さま』の一節だそうだ。またしても起きたパクリ疑惑。やはり「呪われた東京五輪」なのだろうか。

 第2位。先週、ベッキーと「ゲス」(このスキャンダルのためにつくられたようなバンド名だ)の川谷絵音(かわたに・えのん、27)の「不倫愛」を『文春』がスクープしたが、今週『文春』はベッキーに夫・川谷を奪われそうな妻のA子さん(27)の独占告白を掲載している。
 彼女は冒頭、ベッキーが謝罪会見で「私への謝罪がなかったことには正直、驚きました」と語っている。
 昨年7月に結婚した彼女と川谷は、正月に初めて実家へ里帰りするために、2人分のチケットを予約していたという。それが、ベッキーが現れた頃から夫婦仲が急速に悪化し、帰省の話も立ち消えになっていたのに、大晦日にLINEで「飛行機のチケットどこにあるの?」と連絡があったそうだ。
 彼女が「まさか、誰かと帰るんじゃないよね?」と送り返したが返事はなかった。ベッキーが会見した日はA子さんの誕生日だった。
 A子さんは川谷が「ゲスの極み乙女。」を立ち上げる前のバンドのときから、彼を一番そばで見守ってきた。川谷は東京農工大大学院を休学中で、彼女は就職で上京したばかり。やがて惹かれあい、ワンルームマンションでの同棲生活が始まったそうだ。
 川谷は「大戸屋」でバイト、彼女も働きながらバンドの裏方として川谷を支えた。そして次第に川谷が注目を浴びるようになる。
 入籍は昨年7月。だが川谷は若い女性ファンがいることを理由に結婚していることを秘密にしていた。結婚直前に元カノとのトラブルもあったという。
 そして10月に開かれたファンクラブ限定イベントに現れたベッキーと川谷が知り合い、急速に親しくなり、11月21日に夫からベッキーの名前は出さなかったが「離婚」という言葉が出たという。
 ベッキーの会見の後、川谷から電話やメールが入ったが、A子さんは精神的なショックから立ち直ることができず、今でも食べ物もろくに受け付けないほどの健康状態で、横になってばかりいるそうだ。

 「やはり私に黙ってお正月に二人で実家に行ったことが一番ショックでした。どんな気持ちで彼は家族にベッキーさんを会わせたのか。(中略)正直、今は何も考えられないし、考えたくありません」(A子さん)

 音楽関係者が、川谷とベッキー双方の事務所が話し合って、離婚届を出すまでは会わせないという取り決めができていると話している。
 離婚もしていないうちからベッキーを両親に会わせるなど、常識をわきまえない男は、A子さんと別れ、ベッキーと結婚してもまた必ず同じようなことをするに違いない。ベッキーがこの男との結婚を選ぶのなら、芸能界を引退するくらいの覚悟をもつべきである。

 第1位。『文春』は「宮中重大スクープ」と謳っているが、正真正銘のスクープである。12月23日の天皇誕生日に、美智子皇后が雅子妃を「叱った」というのである。
 記事には詳細な美智子皇后の言葉が記されている。これは「すべての事情を知る千代田関係者が、その顛末を詳細に証言する」(『文春』)とあるから、美智子皇后の了解を取った上で『文春』に話したということだろう。
 かいつまんでいえば、雅子妃の病気について、多くの人々の前に姿を見せることが最善の道で、それが「適応障害」という病気にもとても良い効果をもたらすのではないか、ということである。
 被災地などは実際に訪れ、もっと時間をかけて被災者の方々の気持ちに触れるように。天皇陛下が大切に思われている広島原爆の日、長崎原爆の日、終戦記念日、沖縄慰霊の日の意義を深く考え理解してほしい。
 なかでも雅子妃の実家、小和田家とのことは、かなり厳しい言葉で話している。

 「ご家族という意味では、(連絡を取るのは)良いことであるけれど、皇室という中で小和田家は特別の存在ではありません。小和田家と、浩宮が育ってきた皇室というのは、文化が違うのですから。皇族の文化の中にある雅子が小和田家と触れ合いを持つという、そういう心構えでなければならないのよ」

 美智子皇后は、実家である正田家には嫁いだ後、ほとんど顔を出さなかった。正田家側も控えめな態度で、母親の富美子さんは「機械(電話)を通してしか娘と話すことができません」と語っていたという。
 それに比べ、何かと小和田家と会いたがる雅子妃に、皇室に嫁ぐということはどういうことなのかを諭されたのである。
 さすが文藝春秋。美智子皇后と雅子妃の極めてプライベートな会話まで事細かに掲載するというのは、よほどの信頼関係がなければできないことである。
 私は皇室にはほとんど関心がなかったため、このスクープがどれほどの価値があるのか、よくわからないが一読の価値は間違いなくある。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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