北朝鮮の第2代最高指導者金正日(キム・ジョンイル)の3男。2011年、父親の死去で若くして第3代最高指導者に就任。現在朝鮮労働党第一書記。33歳。
幼少の頃はスイスで教育を受けたという話もあるが、彼のプロフィールは詳らかになっていない。
権力継承後、側近たちを次々に処刑しているが、その理由も判然としない。奇妙な髪型、暴飲暴食のためか太りすぎ(130キロを超えているという報道もある)、世界を挑発する過激な言動が特徴である。
1月6日に「水爆実験に成功した」と発表して日本や韓国を驚かせたが、北朝鮮の保護者的な立場にある中国も、知らされたのは実験の30分前だったといわれる。
『週刊現代』(1/30号、以下『現代』)の「金正恩はまもなく殺される」によれば、こうした金のやり方に、習近平中国国家主席は「あの三胖(サンパン)めが……」と怒っているという。ちなみに三胖というのは「三代目のデブ」という意味だそうだ。
習近平主席は昨年10月に劉雲山党常務委員を平壌に派遣し「核実験だけは絶対にまかりならない」と警告したのに、その禁を破ったため、「平壌よ、覚悟しておけ」と腹を決めたと『現代』は伝えている。
この記事の読みどころは「あるキーパーソンを通して、朝鮮労働党幹部に話を聞くことができた」というところだ。
「──新年早々、なぜ世界中にケンカを売る核実験を行ったのか?
『1月8日(金正恩の誕生日=筆者注)は、わが国で最も重要な「記念日」ではないか。当然、党・軍・政府の各部門は、金正恩第一書記が喜ぶ「誕生プレゼント」を用意する。
今回の水素爆弾実験は、最高のプレゼントになった。金第一書記は大変喜んで、実験を成功させた人々を直接接見して、労をねぎらった。
わが国は5月に、36年ぶりとなる朝鮮労働党大会を控えている。また米帝(アメリカ)のオバマ政権は、今年が最後の一年だ。そのため、互いに強力な核保有国同士として、一刻も早く米帝との直接交渉を行うというわが国の強い「意思表示」が、今回の水爆実験だったのだ(略)』
──(略)国際社会の『兵糧攻め』にどう対処するのか。
『われわれは、貧困や苦境など、まったく恐れていない。朝鮮戦争の休戦から60年以上が過ぎたが、わが国は常に経済的苦境の中を生き抜いてきたのだ。90年代半ばには、「苦難の行軍」(約200万人が餓死した3年飢饉)を乗り切った。
わが国は朝鮮戦争で米帝を蹴散らしたが、まだ完全な終戦には至っていない。この「戦争状態」を終結させ、平和な時代を築くには、わが国の自衛手段である強力な核兵器は、絶対に欠かせないのだ。このことは将軍様(故・金正日総書記)の「遺訓」でもある。
今後、米帝とその同盟国らがわが国に対して制裁を加えるのなら、わが国は戦争をも辞さない(略)』」
貿易の約8割を頼っている中国まで敵に回し、アメリカにケンカを売る金正恩の「危険な綱渡り」は、どこまで続くのだろうか。
私が北朝鮮に招かれ1か月近く平壌に滞在していたのは、いまから30年ほど前の5月だった。
まだ金日成(キム・イルソン)が健在だった。少し前にラングーン事件(ヤンゴン事件・北朝鮮の工作員により、ビルマを訪問中であった韓国の全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領一行の暗殺を狙って引き起こされたといわれる)が起きていたが、拉致事件については報道がようやく出始めていた頃であった。
行く前に何冊か本を読んでおいてくれと渡された。金日成の主体思想についてと北の歴史本、もう一冊は息子の金正日について書かれたものだった。
金正日は日本ではまったく知られていなかったが、その頃からすでに「神格化」が始まっていた。
平壌には日本では考えられないほど立派な「金正日記念館」ができていた。入り口から一番近いところに一本のシャベルが飾ってある。何かと聞くと、金正日が子どもの頃、鉄道を敷くとき最初に鍬入れしたときのシャベルだというのだ。
挨拶するときは必ず二人の金、金日成と金正日が登場する。こうして国民を “洗脳”して息子に権力を継承させていったのである。
当時、金日成が亡くなれば北朝鮮は滅びると、日本や韓国では言われていた。だが私は、金正日まではこの体制は崩れないだろうと思っていた。だが、金正恩についてはまったくわからない。
突然、金正日が亡くなったので神格化する時間がなかった。そこで側近たちを処刑することで「恐怖」を植え付け、強引に神格化させようとしているのかもしれない。このまま自滅するのか、狂気に任せて無謀な戦争へと突き進むのか。あまりにも金正恩の情報が少なすぎるために日本もアメリカも判断ができないようだ。
北朝鮮の人間と実際に話してみてわかったことがある。彼らの共通の願いは祖国統一なのだ。口汚く「南鮮」と韓国を非難するが、ホンネでは統一したいのだ。意地の悪い私は、統一できたとしても民主的な選挙をすれば人口の多い韓国が勝ち、向こうの体制になるがそれでもいいのかと聞いた。
北の人間の多くが、2、3年もあれば彼らは必ずわれわれの体制のよさを理解して、こちらの体制を選ぶと譲らなかった。
彼らが一番憎んでいるのはアメリカである。私のその時の感触では、北朝鮮の7割ぐらいの人間は本気でアメリカと戦争することを考えているのではないかと思った。
もしも今回、水素爆弾の実験に成功したとするならば、世界一厄介な火薬庫を日本の隣に抱えてしまったことになるが、もう少し金正恩の動向を見たほうがいいと思う。
制裁一辺倒、強気一辺倒の安倍首相のような対応は危ないと言わざるを得ない。北朝鮮は北風より太陽で温めて話し合いの場に引きずり出すしかないと思う。そのためには習近平の中国との関係修復が重要になる。
元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
新谷学『週刊文春』編集長の快進撃が止まらない。復帰第一号でベッキーの不倫愛、先週号では美智子皇后が雅子妃を「叱る」一部始終をスクープした。もっとも宮内庁は『文春』に対して厳重抗議をし、記事は「全くの事実無根」だとして即時撤回を求めているようだ。
だが、美智子皇后と雅子妃の会話が語尾まで正確に掲載されているところを見れば、『文春』がねつ造したのでない限り事実無根とは思えない。宮内庁が告訴してくれれば、どうやって『文春』が二人の会話を入手したのかがわかるのだが、そこまではやらないだろう。
今週は甘利明(あまり・あきら)大臣と秘書たちが口利き料として多額のカネを受け取っていたと報じている。
第1位 「『甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した』実名告白」(『週刊文春』1/28号)
第2位 「大腸炎が活動期!『安倍総理』のお薬3錠」(『週刊新潮』1/28号)
第3位 「アベノミクス“逆噴射”で夏のボーナスが危ない」(『週刊文春』1/28号)
第3位。株の下落が止まらない。私は株には詳しくないが、年初来こんなに連続して下がることは戦後初めてではないか。
アベノミクスが失敗という程度の問題ではなく、根本的なところの何かがおかしくなってきているのではないか。『文春』は「アベノミクス“逆噴射”で夏のボーナスが危ない」と言うが、ボーナスどころの騒ぎではない。
アベノミクスは未曾有の「金融緩和・円安・株高・外国人頼みの消費」だったわけだが、金融緩和には限界があるとメッキが剥がれ、中国人観光客の数も中国経済の悪化で減ってきている。
それに加えて株暴落の最大の原因は「天然資源価格の暴落」だというのは、ミスター円といわれる榊原英資(さかきばら・えいすけ)氏である。
14年前半まで1バレル=100ドルだった原油が、年明けには30ドルを割った。資源輸出国の中東諸国だけでなく、ロシア、ブラジルなどの成長率も落ち込んでいる。
「なぜ原油が下がるのか。
米国のシェールガス革命などで供給過剰になったせいもありますが、深刻なのは、中国をはじめとする新興国でその需要が減退している点です。原油のみならず、鉄鉱石、天然ゴムなど他の天然資源の価格も軒並み暴落しています。ここ数年、世界経済を牽引してきた新興国の経済が悪化しつつあることは明白です。 (中略)いわば“逆オイルショック”で、世界経済は相当厳しい局面に入りつつある。株価は実体経済を先取りして下落したわけです」(榊原氏)
榊原氏はアベノミクスの失敗ではなく、世界経済の局面が変わったのだと言うが、経済成長一点張りで頭がいっぱいの安倍政権に、そうした冷静で的確な判断ができるとは思えない。今のままいくと資本主義の終わりは案外近いのかもしれない。
第2位。安倍首相の病状が悪化しているという情報は昨秋からさまざまな週刊誌で報じられているが、今週の『新潮』は、持病が悪化してきている決定的瞬間を目撃したと報じている。
1月12日、東京株式市場で株が下落し続けているなか、予算委員会に臨んだ安倍首相は、再開される委員会に備えて閣僚席に着いた。
「右手に持った『何か』を安倍総理が口に放り込む。それを、左手で持ち上げたグラスの水とともに一気に臓腑へと流し込む。(中略)『何か』が抜き取られ、残骸と化した銀紙にはこう記されていた。
〈アサコール〉」(『新潮』)
アサコールは潰瘍性大腸炎の薬だから、公の場で飲むのは如何かと思うが、致し方ないかもしれない。だがその量である。アサコールは寛解期という平穏時には2錠服用と処方箋に明記されているという。だが安倍首相が飲んだのは3錠だった。
「服用量を見る限り活動期であることになるのだ。時の総理を辞任に追い込んだ持病が、いま再び活動期を迎えている」(同)
活動期になると「脳がストレスを受けて神経質になったり、鬱になることもある」(順天堂大学佐藤信紘(のぶひろ)名誉教授)そうだ。
さらに『新潮』は、この日、安倍首相はもう1種類別の錠剤も服用していたという。これは「アザニン」という薬らしい。「アサコールが効かなくなると、ステロイドや免疫抑制剤を併用します。その免疫抑制剤の代表的なものがアザニンです」(佐藤名誉教授)
このところ質問をさえぎってトイレに行くことが多いと指摘されている安倍首相である。その上、株の大暴落や消費税値上げ、安保法制、甘利問題と、普通の健康体でもおかしくなるほどの難問が山積している。今年最大のニュースは「安倍首相再び辞任」になるかもしれない。
第1位。まずは『週刊文春WEB』から引用してみよう。
「甘利明TPP担当大臣(66)と公設秘書に、政治資金規正法とあっせん利得処罰法違反の疑いがあることが週刊文春の取材でわかった。千葉県内の建設会社の総務担当者が週刊文春の取材に応じ、メモや録音を基に金銭の授受を証言した。
この男性によれば、独立行政法人都市再生機構(UR)が行っている道路建設の補償を巡り、甘利事務所に口利きを依頼。過去3年にわたり、甘利大臣や地元の大和事務所所長・清島健一氏(公設第一秘書)や鈴木陵允(りょうすけ)政策秘書に資金提供や接待を続け、総額は証拠が残るものだけで1200万円に上るという。
2013年11月14日には、大臣室で甘利大臣に面会。桐の箱に入ったとらやの羊羹と一緒に、封筒に入れた現金50万円を『これはお礼です』と渡したという。
面会をセットした清島所長は、週刊文春の取材に『献金という形で持ってきたのではないですか』と回答した。ただ、甘利氏の政治資金収支報告書に記載はない。
元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏は、一連の金銭授受は政治資金規正法違反、あっせん利得処罰法違反の疑いがあると指摘した。
TPPが国会承認を控える中、甘利大臣の適格性を問う声が上がりそうだ」
ネット上にはカネを渡した男性が50万円を甘利氏に渡した後のツーショット写真が載っている。清島所長が撮影したそうだ。WEB上では音声まで公開している。
この告発をしたのは千葉県白井市にある建設会社「S」社の総務担当者の一色武氏(62)である。発端はURが千葉ニュータウンの開発に伴い道路用地買収を始め、道路建設工事をやり出したが、地中から硫化酸素が発生したり、振動で「S」社の建物が歪んできたという。
そこで知人の紹介で清島所長に相談したのが始まり。一度はUR側から補償金を手にできたため、清島氏にお礼として500万円を持参したそうだ。その後も、飲食をともにしたり現金を渡したりする関係が続いたが、その後URとの問題は進展しなかった。
だが、UR側は清島氏の事務所に呼び出され「(「S」社との問題を=筆者注)前に進めるようなことを考えてほしい」と言われたことは認めている。
この一色氏、甘利大臣に渡したカネのナンバーをすべて控えている、膨大な資料やメモ、50時間以上の録音データを持っていると話している。
「確実な証拠が残っているものだけでも千二百万円に上ります」(一色氏)
甘利経済再生担当相は参院決算委員会で『文春』の報道について、「しっかり調査して説明責任を果たしたい」と述べたが、野党は徹底的に追及すると意気込んでいる。
安倍首相にとっては頭の痛いことだろうが、このことで持病の潰瘍性大腸炎がさらに悪化しないだろうか心配である。
幼少の頃はスイスで教育を受けたという話もあるが、彼のプロフィールは詳らかになっていない。
権力継承後、側近たちを次々に処刑しているが、その理由も判然としない。奇妙な髪型、暴飲暴食のためか太りすぎ(130キロを超えているという報道もある)、世界を挑発する過激な言動が特徴である。
1月6日に「水爆実験に成功した」と発表して日本や韓国を驚かせたが、北朝鮮の保護者的な立場にある中国も、知らされたのは実験の30分前だったといわれる。
『週刊現代』(1/30号、以下『現代』)の「金正恩はまもなく殺される」によれば、こうした金のやり方に、習近平中国国家主席は「あの三胖(サンパン)めが……」と怒っているという。ちなみに三胖というのは「三代目のデブ」という意味だそうだ。
習近平主席は昨年10月に劉雲山党常務委員を平壌に派遣し「核実験だけは絶対にまかりならない」と警告したのに、その禁を破ったため、「平壌よ、覚悟しておけ」と腹を決めたと『現代』は伝えている。
この記事の読みどころは「あるキーパーソンを通して、朝鮮労働党幹部に話を聞くことができた」というところだ。
「──新年早々、なぜ世界中にケンカを売る核実験を行ったのか?
『1月8日(金正恩の誕生日=筆者注)は、わが国で最も重要な「記念日」ではないか。当然、党・軍・政府の各部門は、金正恩第一書記が喜ぶ「誕生プレゼント」を用意する。
今回の水素爆弾実験は、最高のプレゼントになった。金第一書記は大変喜んで、実験を成功させた人々を直接接見して、労をねぎらった。
わが国は5月に、36年ぶりとなる朝鮮労働党大会を控えている。また米帝(アメリカ)のオバマ政権は、今年が最後の一年だ。そのため、互いに強力な核保有国同士として、一刻も早く米帝との直接交渉を行うというわが国の強い「意思表示」が、今回の水爆実験だったのだ(略)』
──(略)国際社会の『兵糧攻め』にどう対処するのか。
『われわれは、貧困や苦境など、まったく恐れていない。朝鮮戦争の休戦から60年以上が過ぎたが、わが国は常に経済的苦境の中を生き抜いてきたのだ。90年代半ばには、「苦難の行軍」(約200万人が餓死した3年飢饉)を乗り切った。
わが国は朝鮮戦争で米帝を蹴散らしたが、まだ完全な終戦には至っていない。この「戦争状態」を終結させ、平和な時代を築くには、わが国の自衛手段である強力な核兵器は、絶対に欠かせないのだ。このことは将軍様(故・金正日総書記)の「遺訓」でもある。
今後、米帝とその同盟国らがわが国に対して制裁を加えるのなら、わが国は戦争をも辞さない(略)』」
貿易の約8割を頼っている中国まで敵に回し、アメリカにケンカを売る金正恩の「危険な綱渡り」は、どこまで続くのだろうか。
私が北朝鮮に招かれ1か月近く平壌に滞在していたのは、いまから30年ほど前の5月だった。
まだ金日成(キム・イルソン)が健在だった。少し前にラングーン事件(ヤンゴン事件・北朝鮮の工作員により、ビルマを訪問中であった韓国の全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領一行の暗殺を狙って引き起こされたといわれる)が起きていたが、拉致事件については報道がようやく出始めていた頃であった。
行く前に何冊か本を読んでおいてくれと渡された。金日成の主体思想についてと北の歴史本、もう一冊は息子の金正日について書かれたものだった。
金正日は日本ではまったく知られていなかったが、その頃からすでに「神格化」が始まっていた。
平壌には日本では考えられないほど立派な「金正日記念館」ができていた。入り口から一番近いところに一本のシャベルが飾ってある。何かと聞くと、金正日が子どもの頃、鉄道を敷くとき最初に鍬入れしたときのシャベルだというのだ。
挨拶するときは必ず二人の金、金日成と金正日が登場する。こうして国民を “洗脳”して息子に権力を継承させていったのである。
当時、金日成が亡くなれば北朝鮮は滅びると、日本や韓国では言われていた。だが私は、金正日まではこの体制は崩れないだろうと思っていた。だが、金正恩についてはまったくわからない。
突然、金正日が亡くなったので神格化する時間がなかった。そこで側近たちを処刑することで「恐怖」を植え付け、強引に神格化させようとしているのかもしれない。このまま自滅するのか、狂気に任せて無謀な戦争へと突き進むのか。あまりにも金正恩の情報が少なすぎるために日本もアメリカも判断ができないようだ。
北朝鮮の人間と実際に話してみてわかったことがある。彼らの共通の願いは祖国統一なのだ。口汚く「南鮮」と韓国を非難するが、ホンネでは統一したいのだ。意地の悪い私は、統一できたとしても民主的な選挙をすれば人口の多い韓国が勝ち、向こうの体制になるがそれでもいいのかと聞いた。
北の人間の多くが、2、3年もあれば彼らは必ずわれわれの体制のよさを理解して、こちらの体制を選ぶと譲らなかった。
彼らが一番憎んでいるのはアメリカである。私のその時の感触では、北朝鮮の7割ぐらいの人間は本気でアメリカと戦争することを考えているのではないかと思った。
もしも今回、水素爆弾の実験に成功したとするならば、世界一厄介な火薬庫を日本の隣に抱えてしまったことになるが、もう少し金正恩の動向を見たほうがいいと思う。
制裁一辺倒、強気一辺倒の安倍首相のような対応は危ないと言わざるを得ない。北朝鮮は北風より太陽で温めて話し合いの場に引きずり出すしかないと思う。そのためには習近平の中国との関係修復が重要になる。
元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
新谷学『週刊文春』編集長の快進撃が止まらない。復帰第一号でベッキーの不倫愛、先週号では美智子皇后が雅子妃を「叱る」一部始終をスクープした。もっとも宮内庁は『文春』に対して厳重抗議をし、記事は「全くの事実無根」だとして即時撤回を求めているようだ。
だが、美智子皇后と雅子妃の会話が語尾まで正確に掲載されているところを見れば、『文春』がねつ造したのでない限り事実無根とは思えない。宮内庁が告訴してくれれば、どうやって『文春』が二人の会話を入手したのかがわかるのだが、そこまではやらないだろう。
今週は甘利明(あまり・あきら)大臣と秘書たちが口利き料として多額のカネを受け取っていたと報じている。
第1位 「『甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した』実名告白」(『週刊文春』1/28号)
第2位 「大腸炎が活動期!『安倍総理』のお薬3錠」(『週刊新潮』1/28号)
第3位 「アベノミクス“逆噴射”で夏のボーナスが危ない」(『週刊文春』1/28号)
第3位。株の下落が止まらない。私は株には詳しくないが、年初来こんなに連続して下がることは戦後初めてではないか。
アベノミクスが失敗という程度の問題ではなく、根本的なところの何かがおかしくなってきているのではないか。『文春』は「アベノミクス“逆噴射”で夏のボーナスが危ない」と言うが、ボーナスどころの騒ぎではない。
アベノミクスは未曾有の「金融緩和・円安・株高・外国人頼みの消費」だったわけだが、金融緩和には限界があるとメッキが剥がれ、中国人観光客の数も中国経済の悪化で減ってきている。
それに加えて株暴落の最大の原因は「天然資源価格の暴落」だというのは、ミスター円といわれる榊原英資(さかきばら・えいすけ)氏である。
14年前半まで1バレル=100ドルだった原油が、年明けには30ドルを割った。資源輸出国の中東諸国だけでなく、ロシア、ブラジルなどの成長率も落ち込んでいる。
「なぜ原油が下がるのか。
米国のシェールガス革命などで供給過剰になったせいもありますが、深刻なのは、中国をはじめとする新興国でその需要が減退している点です。原油のみならず、鉄鉱石、天然ゴムなど他の天然資源の価格も軒並み暴落しています。ここ数年、世界経済を牽引してきた新興国の経済が悪化しつつあることは明白です。 (中略)いわば“逆オイルショック”で、世界経済は相当厳しい局面に入りつつある。株価は実体経済を先取りして下落したわけです」(榊原氏)
榊原氏はアベノミクスの失敗ではなく、世界経済の局面が変わったのだと言うが、経済成長一点張りで頭がいっぱいの安倍政権に、そうした冷静で的確な判断ができるとは思えない。今のままいくと資本主義の終わりは案外近いのかもしれない。
第2位。安倍首相の病状が悪化しているという情報は昨秋からさまざまな週刊誌で報じられているが、今週の『新潮』は、持病が悪化してきている決定的瞬間を目撃したと報じている。
1月12日、東京株式市場で株が下落し続けているなか、予算委員会に臨んだ安倍首相は、再開される委員会に備えて閣僚席に着いた。
「右手に持った『何か』を安倍総理が口に放り込む。それを、左手で持ち上げたグラスの水とともに一気に臓腑へと流し込む。(中略)『何か』が抜き取られ、残骸と化した銀紙にはこう記されていた。
〈アサコール〉」(『新潮』)
アサコールは潰瘍性大腸炎の薬だから、公の場で飲むのは如何かと思うが、致し方ないかもしれない。だがその量である。アサコールは寛解期という平穏時には2錠服用と処方箋に明記されているという。だが安倍首相が飲んだのは3錠だった。
「服用量を見る限り活動期であることになるのだ。時の総理を辞任に追い込んだ持病が、いま再び活動期を迎えている」(同)
活動期になると「脳がストレスを受けて神経質になったり、鬱になることもある」(順天堂大学佐藤信紘(のぶひろ)名誉教授)そうだ。
さらに『新潮』は、この日、安倍首相はもう1種類別の錠剤も服用していたという。これは「アザニン」という薬らしい。「アサコールが効かなくなると、ステロイドや免疫抑制剤を併用します。その免疫抑制剤の代表的なものがアザニンです」(佐藤名誉教授)
このところ質問をさえぎってトイレに行くことが多いと指摘されている安倍首相である。その上、株の大暴落や消費税値上げ、安保法制、甘利問題と、普通の健康体でもおかしくなるほどの難問が山積している。今年最大のニュースは「安倍首相再び辞任」になるかもしれない。
第1位。まずは『週刊文春WEB』から引用してみよう。
「甘利明TPP担当大臣(66)と公設秘書に、政治資金規正法とあっせん利得処罰法違反の疑いがあることが週刊文春の取材でわかった。千葉県内の建設会社の総務担当者が週刊文春の取材に応じ、メモや録音を基に金銭の授受を証言した。
この男性によれば、独立行政法人都市再生機構(UR)が行っている道路建設の補償を巡り、甘利事務所に口利きを依頼。過去3年にわたり、甘利大臣や地元の大和事務所所長・清島健一氏(公設第一秘書)や鈴木陵允(りょうすけ)政策秘書に資金提供や接待を続け、総額は証拠が残るものだけで1200万円に上るという。
2013年11月14日には、大臣室で甘利大臣に面会。桐の箱に入ったとらやの羊羹と一緒に、封筒に入れた現金50万円を『これはお礼です』と渡したという。
面会をセットした清島所長は、週刊文春の取材に『献金という形で持ってきたのではないですか』と回答した。ただ、甘利氏の政治資金収支報告書に記載はない。
元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏は、一連の金銭授受は政治資金規正法違反、あっせん利得処罰法違反の疑いがあると指摘した。
TPPが国会承認を控える中、甘利大臣の適格性を問う声が上がりそうだ」
ネット上にはカネを渡した男性が50万円を甘利氏に渡した後のツーショット写真が載っている。清島所長が撮影したそうだ。WEB上では音声まで公開している。
この告発をしたのは千葉県白井市にある建設会社「S」社の総務担当者の一色武氏(62)である。発端はURが千葉ニュータウンの開発に伴い道路用地買収を始め、道路建設工事をやり出したが、地中から硫化酸素が発生したり、振動で「S」社の建物が歪んできたという。
そこで知人の紹介で清島所長に相談したのが始まり。一度はUR側から補償金を手にできたため、清島氏にお礼として500万円を持参したそうだ。その後も、飲食をともにしたり現金を渡したりする関係が続いたが、その後URとの問題は進展しなかった。
だが、UR側は清島氏の事務所に呼び出され「(「S」社との問題を=筆者注)前に進めるようなことを考えてほしい」と言われたことは認めている。
この一色氏、甘利大臣に渡したカネのナンバーをすべて控えている、膨大な資料やメモ、50時間以上の録音データを持っていると話している。
「確実な証拠が残っているものだけでも千二百万円に上ります」(一色氏)
甘利経済再生担当相は参院決算委員会で『文春』の報道について、「しっかり調査して説明責任を果たしたい」と述べたが、野党は徹底的に追及すると意気込んでいる。
安倍首相にとっては頭の痛いことだろうが、このことで持病の潰瘍性大腸炎がさらに悪化しないだろうか心配である。