広島東洋カープが25年ぶりにセ・リーグ優勝を果たした。去年までエースだった前田健太がメジャーリーグのロサンゼルス・ドジャースに移籍したため、戦力不足が心配されたが、「今季は復帰2年目の黒田博樹投手(41)、新井貴浩内野手(39)らベテランと菊池涼介内野手(26)、野村祐輔投手(27)らがかみ合い、シーズン序盤の混戦を抜け出し、6月5日から一度も首位の座を譲らなかった」(9月10日のYOMIURI ONLINEより)

 これでリーグ優勝7回になる。これまで6回出場した日本シリーズでは3度日本一になっている。

 『週刊文春』(9/22号、以下『文春』)はカープを「叩き上げて勝つ」チームだと評している。

 例えば今年4年目の外野手・鈴木誠也(22)。甲子園出場経験はなく全国区の知名度はなかったが、ドラフト2位で指名している。

 異次元の守備力を誇る二塁手の菊池涼介もマイナーな岐阜学生リーグの中京学院大学出身。ドラフトでは2位指名だったが、明大の野村祐輔をはずしていたら、菊池を1位に指名するつもりだったと松本有史スカウトは語っている。

 広島のスカウトの要諦は、「選手を即戦力ではなく、素材として探します。二年後、三年後に活躍できる子を獲るのが基本方針です」(スカウトの宮本洋二郎氏)

 そうやって見つけ、入団してきた素材を徹底的にしごく。

 「とにかく量をこなす。ひたすらボールを追い、バットを振り込むんです。昨年の秋季キャンプでは連日、朝から晩まで最大十時間の猛特訓を繰り返しました」(カープ担当記者)

 カープ向きの選手は、「何としてもプロで伸し上がりたい強烈な野心がある選手、そして猛練習に耐えられる心と身体の強さを持っている選手たちです。スカウトの方はよく『カープの方に顔が向いていない選手ではついてこられない』と言います。本当は他の球団に行きたかったのにという逃げの気持ちが出てしまうと猛練習についていけず、成長のマイナスにしかならないからです」(スポーツジャーナリストの安倍昌彦氏)

 これだけ一貫したスカウト・育成の方針がありながら、なぜカープは24年間も低迷したのだろうか。

 スポーツジャーナリストの二宮清純(せいじゅん)氏が『文春』でこう分析する。

 「要因は主に二つ考えられます。九三年に導入されたFA制度とドラフト逆指名制度です。逆指名制度は〇七年に発覚したドラフト裏金問題で廃止されましたが、この二つは、資金力に乏しくマネーゲームに参加しない方針のカープにとっては極めて不利な制度でした」

 しかし、それもディズニーランドを視察して作ったという「マツダスタジアム」建設から観客動員力が激増、特に女性客が増え、今や観客の約6割が「カープ女子」だといわれる。

 今回の優勝は緒方孝市(こういち)監督(47)の采配も大きいが、大リーグ・ヤンキースで活躍していて高額な年俸を提示されたのに、それを蹴って昨年カープに戻ってきた黒田博樹投手の存在を抜きには考えられないだろう。

 『文春』の「野球の言葉学 鷲田康」によると、黒田復帰への動きは3年前から始まっていたという。

 その年、チームは16年ぶりにクライマックスシリーズに進出し、阪神を破り、巨人とのファイナルステージでは負けたが、広島首脳陣に「優勝できる」と思わせた。

 黒田を復帰させるために、黒田の戻ってきやすい環境づくりをした。その一つが「野手の人とはどうも溝があった」という黒田のために、野手出身の野村謙二郎監督を交代させたことだった。

 その次が、07年にFAで阪神に移籍したが定位置争いに敗れ、退団必至だった黒田の盟友・新井貴浩を、松田オーナーが「話し相手でいいけん、新井を戻してやれ」という鶴の一声で復帰させたことだった。

 さらに貧乏球団だったカープが、男気を発揮して広島に戻るといってくれた黒田に報いるために、年棒4億円を払ったことだ(今季はさらに2億円上積みした)。

 エースの前田でさえ3億円だったのにである。だが、昨季は黒田を軸にしたチーム作りができず、優勝どころか4位に沈んだ。

 今季は前田がいない分、黒田カープが完成して優勝したと見るカープ担当記者が多いようだ。

 カープがクライマックスシリーズを勝ち抜き、パ・リーグの覇者と日本シリーズを戦って日本一になってほしいと思う。

 日本シリーズといえば、1979年の近鉄バッファローズとカープとの一戦を思い出す野球ファンも多いだろう。

 この第7戦で、カープのリリーフエース・江夏豊が投げた21球はスポーツノンフィクションの金字塔『江夏の21球』(山際淳司)としてまとめられている。

 私はこの試合をテレビで見ていた。4対3と一点リードしている広島の名将・古葉竹識(こば・たけし)監督は、7回から江夏をリリーフに送った。

 9回裏、近鉄の先頭打者がヒットを放って俄然盛り上がる。近鉄の名将・西本幸雄(ゆきお)監督は代走に盗塁記録を持つ藤瀬を起用。

 その藤瀬が二盗を試みる。捕手が悪送球してランナーは三塁へ。バッターは四球でノーアウト一塁三塁。一塁ランナーが二塁へ走るが捕手は投げず、二塁三塁で、一打サヨナラの場面。

 ここでバッテリーは次の打者を敬遠する策にでる。無死満塁。カープ絶体絶命の大ピンチ。

 次は投手だが、西本監督は「左殺し」といわれる佐々木を代打に送る。佐々木は空振り三振で一死満塁。

 ここからがこの試合の白眉である。次の石渡は、江夏が投げる直前にスクイズの構えをする。江夏はすでに投球動作に入っていた。カーブである。

江夏はその握りのまま、スクイズをはずす高めの球を捕手のミットめがけて投げ込むのである。まさに神業というしかない。石渡は必死にボールに当てようとするが届かない。

 走り出していた三塁走者はあわてて戻ろうとする。だが、二塁走者がすでに三塁に達していたため戻れずにタッチアウト。これで二死二塁三塁。

 江夏は最後のバッターを空振り三振に切って取り、カープは初の日本一になった。

 このとき江夏が投げた21球それぞれについて、江夏、対したバッター、両監督などにインタビューしてまとめたのが山際の本である。

 日本にはスポーツノンフィクションは育たないとよくいわれる。巨人に象徴される球団の閉鎖性、選手たちの表現不足、ライターの勉強不足と取材源への遠慮などが、その理由として挙げられる。

 山際はまだライターとしては駆け出しで、しかも野球にそれほど詳しくなかったのが功を奏したといわれている。

 こうした球史に残る名勝負を残してきた広島東洋カープが、日本シリーズで再び後世に語り継がれる名勝負を演じて、われわれ野球ファンを楽しませてほしいものである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 強姦致傷の容疑で逮捕されていた高畑裕太容疑者が、一転、不起訴で釈放された。では、警察の誤捜査で、裕太は「冤罪(えんざい)」だったのかというと、そうではないようだ。被害女性には示談金を払ったと弁護側も認めているのだ。しかもその同じ口から「裕太は無罪」という主張が発表されたのだから、われわれは混乱してしまう。この手の事件は、当事者同士しかわからないことが多くあるはずだが、週刊誌はどこまで真相に迫れたのか、読み比べてみてください。

第1位 「三田寛子ショック! 夫・中村橋之助 芝翫襲名目前の『禁断愛』」(『週刊文春』9/22号)
第2位 「高畑裕太『冤罪声明』を仕掛けた親バカ女優」(『週刊文春』9/22号)/「誰も解説しない『高畑裕太』釈放から読み取れること」(『週刊新潮』9/22号)/「高畑裕太『49歳といわれる被害女性』あの夜の因縁」(『女性セブン』9/29・10/6号)/「すべての謎が解けた! 高畑裕太強姦致傷事件『示談交渉を仕切った暴力団関係者』」(『フライデー』9/30・10/7号)
第3位 「『小池百合子都知事』金庫番が手を染めた特権的錬金術」(『週刊新潮』9/22号)

 第3位。小池都知事がちゃぶ台返しをした豊洲移転問題だが、この裏には都議会のドン・内田茂都議だけではなく、都政そのものに大きな闇があることが明らかになろうとしている。
 報道では、盛り土の件については3知事、石原、猪瀬、舛添に伝えていなかったといわれるが、舛添はともかく、石原、その下にいた猪瀬が知らなかったというのは、私には納得できない。
 その後、石原は、当時、自分からそう言ったと認めた。
 『文春』によると、盛り土中止を決めたのは、

 「築地移転問題のトップは、局長級ポストの中央卸売市場長です。〇八年十一月時点ですでに空洞案が検討されていました。その後、一一年三月、都は日建設計と新市場の基本設計について業務委託契約を結びました。この契約書を決済したのは、現場責任者の部長級職員です」(都庁幹部)

 当時、日建と契約を結んだ現場責任者の上司であった市場長の岡田至氏は、「豊洲移転が最適」だと都議会でも答弁し、盛り土より空洞のほうが、後々地下水が上がってきてもすぐ乾燥してより安全だと話していたと、『文春』が報じている。
 少なくとも現場は盛り土をしていないことを知っていた。だがそれを上に上げずに豊洲移転を強引に推し進め、その裏では内田氏たちが利権漁りに奔走し、ゼネコンが御礼にとカネを渡していたという「構図」になりそうだ。
 五輪にまつわる癒着構造も、豊洲移転の利権構造も、根は同じようなものである。経緯、カネの流れの透明化を小池都知事はどこまで解明できるか。闇は暗く深い。議会が始まれば小池都知事に対する反撃も苛烈を極めるかもしれない。
 都民の支持を背景に、小池都知事の蛮勇を期待したい。

 と言っていたところ、早くも『新潮』が小池の金庫番が特権的地位を利用して「錬金術」に手を染めていたと報じている。
 これを為にする報道だとは言わないが、この構図、私のようなぼんくら頭では、なかなか理解できないので、興味のある方は『新潮』を買って熟読してもらいたい。
 要約すると、小池氏の側近に水田昌宏氏という人間がいる。年齢は40代前半。小池が環境大臣をしていたときに大臣政務秘書官になり、一時期公設第二秘書だったこともある。 私も水田の「秘書」と肩書きがついた名刺を持っている。
 小池の政治資金管理団体の14年分までの会計責任者でもある。今回の都知事選の選挙運動費用収支報告書の出納責任者は、水田の妻の名前になっているという。
 その上、小池の自宅の土地2分の1、建物の5分の1は水田と共有で、水田は家族と小池と同居しているというのである。
 こうした前提があって本題はこうだ。水田がマンション経営をやろうと言い出し、群馬県の高崎でマンションを建てたのだが、その土地は穴吹興産というところが所有していて、普通の人間が手を出せる土地ではなかった。穴吹と水田が「『深い関係』にあったことの何よりの証拠だろう」と『新潮』は書いている。
 そこを手に入れ、マンション建設が始まろうという時期に、小池の資金管理団体に施工業者が100万円寄付している。
 この土地には群馬銀行が4億1500万円の抵当権をつけている。もしこれをフルローンで建てたとしても、マンションを貸すとすると、一銭も遣わずに、『新潮』の計算によれば、毎月相当のカネが“濡れ手で粟”で入ってくることになるという。
 さらに不可解なのは、都知事選の結果が出た翌日、このマンションを含む小池、水田が関係する3つの物件に、共同担保としてみずほ銀行(みずほは都の指定銀行)が根抵当権3億3000万円を設定しているのだが、この設定日と同日に、自宅もマンションの根抵当権も解除されていることだ。
 「何かよほどのことがあった」(現役銀行マン)のではないか。どちらにしても共同物件に根抵当権を設定するには双方の承諾が必要だそうだ。そして根抵当権が設定される前に、水田は会計責任者を辞め、8月時点では秘書でもなくなっていたのだ。
 小池は『新潮』の取材に「水田昌宏氏の私事」と回答したというが、一連の不可解な物とカネの動きは、『新潮』の言うとおり、小池に説明責任があるだろう。
 自らと、親密だった秘書が関わった疑惑の情報公開を至急やるべきである。そうしないと、次々にスキャンダルが反小池派から流されること間違いない。小池とて、叩けばホコリは出てくるはずだ。そうさせないためにも疑惑は丁寧に説明して火は小さいうちに消しておくことだ。

 第2位。俳優・高畑裕太が強姦致傷容疑で逮捕されたのが8月23日。逮捕早々、裕太は「欲求を抑えきれなかった」と告白したなど、罪を認めているかのような報道があり、芸能界追放はもちろんのこと、下手をすると懲役5年以上の実刑判決が出るかもしれないと言われていた。
 ところが9月9日に突然、不起訴&釈放となったのだ。17日ぶりにシャバに出てきた裕太は、「ご迷惑をおかけして本当に申しわけありません」と大声で報道陣の前で頭を下げたが、報道陣やテレビを見ているわれわれを睨むような表情が印象的だった。
 異例なのはその日、無罪請負人といわれる弘中惇一郞弁護士事務所が、不起訴に至った経緯を説明する文書を発表したことである。
 そこで、裕太からの話は繰り返し聞いたが、他の関係者の話は聞けていないので、事実関係は解明できていないが、裕太は合意があるものと思っていた、逮捕時の報道にあるような「部屋に歯ブラシを持ってきて」などと呼び出し、引きずり込んだという事実はなかったとして、起訴・裁判になっていれば、無罪を主張した事件だったと言っている。
 『文春』、『新潮』はともに、示談が成立したし、被害者の傷も軽傷のため「致傷」で起訴するのは難しくなった(致傷の場合は本人の親告がなくても起訴できる)と検察が判断したのではないかという見方をとっている。
 だが釈放後、裕太がいた事務所は、彼を解雇している。
 『新潮』でフラクタル法律事務所の田村勇人弁護士はこう言う。

 「無罪主張と示談は相反するものです。冤罪と考えているなら、そもそも示談するべきではない。一般人であれば200万~300万円の示談金も、彼のような有名人になると2000万円は下らないと思います」

 『文春』でも刑事事件に詳しい弁護士が、「声明にある高畑さん側の主張が事実であれば、美人局の被害にあったようなものです。虚偽告訴罪の告訴、捜査機関への損害賠償請求もするべきなのに、それをなぜしないのでしょうか」と疑問を呈している。
 釈放されても万々歳とはいかないようである。
 『フライデー』は、被害にあった40代の女性が当日の朝、相談した男がいた。その男が彼女に医師の診断書をとらせ、警察に通報したのだが、その男は「指定暴力団の関係者であることが判明した」と、“裕太の知人”が語っていると報じている。
 被害女性は、裕太が来たとき、「ファンなんです」と言い、その夜は、裕太は供述書で「二人でエレベーターに乗って部屋に向かった」と言っているという。
 そうであれば、事件後も部屋で寝ていて、警察に踏み込まれるまで知らなかったというのは、彼にその意識がなかった可能性が高いと、『フライデー』は書いている。
 件の被害女性の知人は、示談交渉でも大きな役割を果たしたという。彼は地元でも、指定暴力団の関係者として知られた存在であるとも書いているが、裕太の知人の話でまとめているので、裕太サイドに同情的で、罠にはめられたのではないかというニュアンスが読み取れる。
 この藪の中に分け入ってさらなる真相を探ろうとしたのは、男性誌ではなく『女性セブン』である。
 『セブン』は「レイプをしても、カネさえ積めば許される」ことになると批判し、「裕太が本当に凶悪事件を起こしたのなら、相応の罰を受けるべき」だとし、先の弁護士の文書は「『セカンドレイプではないか』との批判も上がっている」と手厳しい。
 それに「合意」があったなら、裕太が社会的な制裁を受ける必要はないはず。だから、この事件を曖昧なまま終わらせてはならないと、現地取材を試みるのである。
 件の女性は橋本マナミに似た、はきはき喋る美人だという。当夜、裕太が女性を引きずり込んだと言われるが、隣の部屋にいた撮影スタッフは「争う物音はまったくしなかった」と話している。『セブン』の記者も泊まって、「壁は決して厚いとはいえず、隣の部屋のテレビの音が聞こえるほどだった」としている。
 こうしたディテールが大事なんだ。
 それでも、裕太の暴力に恐怖し、声も出せなかったという可能性は残る。
 警察が連行し、弁護士が接見する前に供述調書を取っておくというのは警察としては常道だったと見る。だが、当人が芸能人ということで「手柄」になると、功を焦った面もあるのではないかとも見ている。
 寝起きを襲われ、それほどの重大事件だとは思わず、容疑を認める発言をしてしまった可能性はある。
 なぜ彼女は警察ではなく、知人男性に連絡したのか? その男の年齢は60代で、土木関係の仕事をしており、女性が襲われたときのトラブルの対処法をよく知っている人だと地元の人間が話しているが、どんな人間なのか? ともあれ彼女から相当な信頼があったことは間違いない。
 事件発生から1時間で警察に通報。それまでに医師の診断書が揃っていたというから、見事な早業である。
 示談はしたとしても、なぜ裕太サイドの「無罪」主張を許しているのか? 今回の場合は、裕太側が犯罪事実は認めないが遺憾の意を表明するためにカネを払ったというケースではないかというのだ。それでも「裕太が“強姦していない”と主張することを許していることには、違和感を覚えます」(社会部記者)
 豪腕弁護士が、示談金で相手を黙らせ、示談が成立したのだから「致傷」で公判維持は難しいですよと、水面下で検察サイドに伝えて、不起訴にさせたのではないかというのが、『セブン』の読みのようだ。
 件の彼女は、10日後に開かれたパーティーに参加して、記念撮影では「イェーイ」とピースサインを出していたそうだ。その写真を見た記者は、

 「赤と黒を配したノースリーブのドレス姿の彼女は、なるほど30代にしか見えない美しい女性だった」

 女性誌の取材力畏るべしである。男性週刊誌は恥ずかしい。

 第1位。以前にも書いたが、今年は後年「ゲス不倫」の年として人びとの記憶に強く残るだろう。『文春』がまたやってくれた。
 今回『文春』の餌食になったのは歌舞伎界の大名跡八代目中村芝翫(しかん)を襲名する中村橋之助(51)である。
 橋之助の女房は元タレントの三田寬子(50)。2人には3人の子どもがあり、おしどり夫婦としても知られる。
 橋之助の不倫相手は京都先斗町(ぽんとちょう)の三十代の人気芸妓・市さよ
 『文春』によると2人の仲は以前からで、知る人ぞ知る関係だったようだ。『文春』がターゲットを定めて狙っていたのは、2人を撮ったグラビアのアングルからもわかる。
 8月29日に浅草寺で「お練り」があって、そこには三田も一緒にいたのだが、その橋之助を少し離れてジッと切なさそうに見つめる市さよが写っているカットは、映画の一シーンのようである。
 その日の深夜、彼女と落ち合った橋之助は、食事をそそくさと済ませ彼女の泊まっているホテルオークラへと消えていったという。
 しかし、小一時間もすると橋之助はホテルを出て、女房の待つ自宅へと帰ったそうだ。浮気はするがカミさんには知られたくない。わかるな~その気持ち。
 2人は時に週3回も逢瀬を重ねていたそうだ。
 市さよは小柄で器量よし。お座敷での評判もよく、新聞、雑誌や本をよく読む勉強家でもあるという。最近は芸舞妓の世界を代表してCMやバラエティにも出演している。
 彼女をお座敷に呼びたいと思っても1か月待ちだという。
 こう書いてくると、郷ひろみや作家の伊集院静、俳優の高橋克典らと浮名を流した元京都祇園の芸妓・佳つ乃を思い出させる。
 歌舞伎役者と芸妓の逢い引きなんて、いいな~と思うが、現代では『文春』が許しません
直撃を受けた橋之助は、「女房にどうやって伝えればいいのやら……」と呟いたそうだ。
 その女房殿、三田はどう答えるのか。亭主からすでに告白されていて「ここ数日寝るに寝られない」と言いながら、気丈にこう答えている。

 「私は主人を信じることにしましたので、具体的に何時にどこでどうとか野暮なことは聞きませんでした。ただ、こんな大事な襲名前に誤解を招くような行動をとって人様にご迷惑をおかけしたということをお詫びしたいと思います」

 亭主にはギャーギャー言わずに淡々と叱ったら、「わかります。申し訳ない」と平謝りだったという。

 「歌舞伎の“芸”の話ではなく、人として、役者として、旦那様として、父親として責任があります。文春さんがこうして来られたのも、神様が主人のために必要だと思ったのでしょう。自覚を持つようにと。真摯に受け止めなさいと」

 その言やよし。いや~いい女房殿である。しかし、2人きりになったら怖そ~。
 だけど男でも女でも、道ならぬ恋って燃えるんだよな。フジテレビの『ザ・ノンフィクション』(日曜日放送)のスタッフの皆さん、この3人のこれからを追いかけてもらえないかな。別に忍び会っているところが撮れなくても、三者三様、おもしろいドキュメンタリーになると思うのだが。
 雑誌で不倫を公表された男女、夫婦がその後どうなったのか。当然だが、あまりハッピーな人はいないようだ。
 ゲス不倫の元祖・ベッキーは別れたし、「五体不満足」の乙武洋匡(おとたけ・ひろただ)(40)も、ついに仁美夫人と離婚したことを発表した。子どもの親権は夫人が持つという。
 三田・橋之助夫婦はどうなるのだろう。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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