ふだん将棋を自分でさすことはほとんどない。ルール程度は把握しているが、定石や勝負のアヤまでは理解しているわけではない。にもかかわらず、プロ棋士の対局を観戦するのは好きである。こんなファンのことを、最近は「観る将」と呼んでいる。

 その背景には、ニコニコ生放送で視聴される「電王戦」など、動画サイトで将棋を楽しむスタイルが定着してきたことが挙げられるだろう。電王戦はコンピュータとの戦いで、基本的には機械vs人間の叡智という構図により興味を誘うものだ。しかし、こうした企画を通して、棋士たちの豊かなキャラクター性を知った者たちがファンとなるわけだ。かつてと比べて女性の観る将も増え、棋士のイベントなどによく現れるようになったとか。

 将棋漫画『3月のライオン』の映画化や、ベテラン棋士・加藤一二三(かとう・ひふみ)のタレントとしてのブレイク、また若手女性棋士のビジュアル面など、良くも悪くもミーハー的な話題が多い昨今の将棋界。観る将は、将棋ファンの中でますます存在感を増すはずである。すでに業界では、観る将に向けたビジネス的な戦略も考えられつつあるらしい。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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