はじめてこの言葉を聞いたとき、「まさかブラジャーを着けた男のことじゃないですよね?」と冗談のつもりでリアクションしたところ、全然冗談じゃなく本当にそうだったので仰天した。

 昨今信じられないことに、女装趣味でもない“ノーマル”な男性のあいだでブラジャーを着用することが流行っている……んだとか。

 男性向けにデザインされた「メンズブラ」をネット上で通販している業者も実在するらしく、一説によると「30〜50代の中間管理職がとくに好んで愛用している」のだそう。

 その理由の断トツは「安心感」。それに「女性の気持ちを知ってみたい」といった潜在的衝動もあるようで、「女性がボクサーパンツを履くように、男だって自分が好きな下着を身に着けたっていいと思う!」と、よくわからない理屈で自身を正当化するブラ男も多い……と聞く。

 個人の趣味・主張にとやかく文句を垂れる気はないけれど、いわゆる「普通の男」が実際にブラジャーを着けている写真を見てみると……正直なところ「気持ち悪い」。とくに、電車に乗っている中年男性の後ろ姿でYシャツからうっすらと透けて見えるブラ線は、これが仮に「透け乳首防止」だとしても、本末転倒感は否めない。

 上述した心情的な動機だけではなく、たとえば「ブラジャーをすればダイエットに良い」なり「胸板が格好良く見える」なり(たぶん、ダイエットとはどう頑張っても繋げるのは困難だとは思うが?)……フィジカルな面での“必然性”をアピールできないかぎり、「ブラ男」が社会的に認知される日は、まだまだ遠いのではなかろうか?
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


山田ゴメス(やまだ・ごめす)
日曜日「ゴメスの日曜俗語館」を担当。大阪府生まれ。エロからファッション、学年誌、音楽&美術評論、漫画原作まで、記名・無記名を問わず幅広く精通するマルチライター。『現代用語の基礎知識』2005年版では「おとなの現代用語」項目、2007年版では「生活スタイル事典」項目一部を担当。現在「日刊SPA!」「All About」の連載やバラエティ番組『解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ)の相談員で活躍。著書に『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)など。趣味は草野球と阪神タイガース。
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