浄土宗の大本山、百万遍知恩寺(左京区)は、法然上人の住んだ賀茂の河原屋に起源をもち、数珠繰りの発祥地としても有名な寺である。毎月15日は恒例の手作り市が、広い境内を利用して催されている。昔から「門前、市をなす」と言うが、京都は縁日でも有名な土地柄である。なかでも、南の東寺の「弘法さん(毎月21日)」、西の北野の「天神さん(毎月25日)」がよく知られている。では東はどこかといえば、ここ知恩寺の「手作り市」と言って間違いない。

 知恩寺手作り市が始まってから、まもなく30年になるそうだ。まだ歴史が長くはないものの、手作り市としては草分けであり、全国的にも知恩寺が発祥地と言われている。もとは京大に隣接する立地を生かし、付近の古書店が催していた文化の日の古本市が基盤になっている。だから、知恩寺の「手作り市」の発案者は、古書店組合のプロデューサーである。

 現在は毎月400店舗を超える出展者が集まり、応募はその倍以上にのぼる。手作りでつくられたもの以外を販売してはいけないルールで、一般的な縁日やフリーマーケットで見られるような仕入れた食品や骨董品などを売ることはできない。その分、自家焙煎の珈琲、食材からこだわった飲み物や菓子に食べ物をはじめ、陶芸、木工品、洋服、アクセサリーなどがごった返すように集まり、独特の面白みが醸し出されている。

 京都市内には物づくりを生業とした人や、芸術系の学生が多いうえ、周辺の山村には歴史的に京都を消費地としてきた生産地がたくさんある。そんな地の利が質のよい手づくり品の集まる土壌をつくっている。市内には手作り市から生まれた人気店がいくつもあって、開業を志す人の登竜門のような存在にもなっている。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 「タックスヘイブン(租税回避地)の会社の設立などを手がける中米パナマの法律事務所『モサック・フォンセカ』から流出した内部文書。1977年から2015年にかけて作られた1150万点の電子メールや文書類。
 21万余の法人の情報の中には、10か国の現旧指導者12人、現旧指導者の親族ら61人の関係する会社も含まれている。芸能人やスポーツ選手といった著名人の関係する会社もある。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手し、朝日新聞を始めとする各国の提携報道機関が報道した」(朝日新聞デジタル5月10日付)

 タックスヘイブンの利用者として名前が挙がっているのは、ロシアのプーチン大統領の側近、中国の習近平国家主席の親族、キャメロン英国首相の亡父、サッカーのアルゼンチン代表のリオネル・メッシなどの著名人らがいるが、いずれも違法行為については否定している。

 だが、アイスランドのグンロイグソン首相は夫人と共にパナマに法人を持ち、数百万ドル規模の資産を隠していた疑惑が浮上して辞任した。

 習国家主席は国内のメディアにパナマ文書に関する報道をするなと統制しているといわれ、多くの国のトップたちがパナマ文書に脅えているのだ。

 日本ではセコムの創業者で最高顧問の飯田亮(まこと)氏(83)やUCCホールディングス社長でUCC上島珈琲グループCEOの上島豪太氏(47)の名前が早くから挙がっている。

 『週刊現代』(5/21号、以下『現代』)はセコムの飯田氏に関して「相続税で国に持っていかれるのを嫌い、専門家に任せて、タックスヘイブンに会社を設立したのでしょう」(ベテラン経済ジャーナリスト)。セコムのコーポレート広報室は、日本の税務当局から求められた情報は開示して正しく納税済みであると(飯田氏から)聞いていると答えている。

 UCCの上島氏については、15年3月期の売上高が1385億円もあるのに「持ち株会社であるUCCホールディングスは非上場ですから、実態は不透明ですが、上島一族がほとんどすべての株を握っているはずです。(中略)溜まりに溜まった個人資産を資産管理会社によって管理し、少しでも節税しようと考えるのは当然のことでしょう」(上島家を知る経済ジャーナリスト)

 やはり同社の広報室も、会社設立はビジネス目的であって、租税回避や節税が目的ではない。税務当局にも情報開示していて合法的に納税をしていると答えている。

 「しかし、税金がほとんど掛からないタックスヘイブンに事業目的が不明なペーパーカンパニーを設立すること自体、倫理的に問題があると考えるのが普通だ」(『現代』)

 パナマ文書によって名前が公開された政治家や官僚、俳優、有名スポーツ選手が非難を浴びるのは、まさにそれが原因なのだと『現代』は難じている。

 「自分たちだけがタックスヘイブンという『隠れ蓑』を利用して節税し、合法だと言い張る。その姿に一般の納税者は強烈な『不公平感』を抱いているのである」(同)

 海外の多国籍企業による課税逃れは凄まじいものがある。英国では12年にスターバックス社が3年間で2000億円もの売上がありながら、法人税を一銭も納付してこなかったことが明らかになり、英国民の怒りを買った。

 昨年は米アップル社が海外で1811億ドル(約19兆円)を稼いでいたにもかかわらず、米国内でそれに見合った額を納税していないことが指摘され、厳しい批判を浴びた。

 国際調査報道ジャーナリスト連合は5月10日にパナマ文書に記載されている20万以上にのぼる法人名や関連する個人名の公表に踏み切った。『週刊文春』(5/19号)によれば、文書に記載されている日本人は32都道府県に約230人だという。三木谷浩史楽天会長兼社長、重田康光光通信会長、島田文六シマブンコーポレーション前社長、友杉直久金沢医科大学名誉教授などの名があり、伊藤忠商事、丸紅、ライブドア、ソフトバンクBB、東京個別指導学院、東洋エンジニアリング、エム・エイチ・グループなどの企業名もある。

 いまのところ唯一「公職」から名前が挙がっているのは都市経済評論家の加藤康子(こうこ)内閣官房参与(57)。故・加藤六月(むつき)農水相の長女で、ウエディングドレスの輸入販売などを手がける会社の代表を務めている。

 タックスヘイブンそのものは違法ではない。資産家が相続税を軽くしたいためにタックスヘイブンに資産を移すときに、日本国内で譲渡税を支払っていれば、それ自体に犯罪性はない。

 また、日本だと法人設立に数か月かかるが、タックスヘイブンの地域では、日数が短く容易にできるし、英国領であれば、欧米同様の法体系が維持されているというメリットもある。

 商社が税金を安くしようとタックスヘイブンを活用してきたのはよく知られている。タックスヘイブンで運用すれば利益に課税されないから、それを再び投資に回すことができ、大きなリターンを見込めるから、「合法的な節税です」(元大手商社幹部)(『現代』)

 では今回のパナマ文書が日本でも大きな問題になっているのはなぜか?

 『現代』で日本共産党の参議院議員・大門実紀史(だいもん・みきし)氏がこう指摘している。

 「日本銀行の調べでは、日本企業が14年末の時点でケイマン諸島に総額で約63兆円の投資を行っています。1位の米国の約149兆円に続いて、堂々の2位です」

 また、政治経済研究所理事で『タックスヘイブンに迫る』著者の合田寛(ごうだ・ひろし)氏もこう言う。「多国籍企業の課税逃れによる税収ロスを足せば、最大で50兆円くらいはあるのではないか。そのうちの1割が日本の税収ロスとすると、日本政府が徴収できていない税金は5兆円。これは消費税を2%上げて増える税収と同じです」

 『21世紀の資本』を書いたフランス人経済学者、トマ・ピケティ氏は朝日新聞4月20日付の紙面でこう指摘している。

 パナマ文書が明らかにしたことは何かというと、先進国と発展途上国の政治・金融エリートたちが行なう資産隠しの規模がどれほどのものかということだ。

 その背景には欧州の税引き下げ競争があり、英国はバージン諸島や王室属領にあるタックスヘイブンを保護したまま、課税率を17%まで引き下げようとしているし、このままいけばアイルランドの課税率12%に近付く、あるいは0%になるかもしれないと言っている。

 それに比べ米国は税率35%、それに5~10%の州税がかかる。ユーロ圏のフランス、ドイツ、イタリア、スペインが税の公平性に基づいた新条約を結び、大企業への共通法人税という実効性のある政策をとるべきだと主張している。

 そうしなければ一部の金持ちたちを優遇し、彼らや多国籍企業の税金逃れにも何ら手を打ってこなかった各国政府は、国民から痛いしっぺ返しを食うだろう。

 「どんなわずかな違反に対しても、その都度こうした制裁を繰り返し適用していくのだ。(中略)こうした繰り返しがシステムの信頼性を確立し、何十年にもわたって罰を免れてきたことで生み出された、透明性が欠如した雰囲気から抜け出すことを可能にするだろう」

 しかし、パナマ文書に対する日本のメディアの反応は極めて鈍いものがある。節税や商習慣の名目で、本来なら税金としてわれわれに還元されるべき莫大なカネが流出していることにもっともっと腹を立てるべきである。

   弁護士の宇都宮健児氏のいうように「本来、税収を上げるなら、庶民から取るのではなく、タックスヘイブンを利用するような人たちにきっちり納税させるべきだと思うのです」。大企業減税などもってのほかである。嗚呼、これを書いていると血圧が上がる。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 『文春』と『新潮』はGWは合併号でお休みだったので、『現代』と『ポスト』の最新号から3本選んでみた。やはり一番大きな話題は三菱自動車の燃費不正問題であろう。多くの識者は三菱自動車が存続することはできないと見ているようである。相場英雄(あいば・ひでお)氏の『ガラパゴス』(小学館)は、非正規労働者たちの悲惨な実態を描いた傑作だが、その中でも自動車業界のハイブリッドカーの嘘や燃費の不正問題が詳しく描かれている。自動車だけではないが、日本の多くの産業はガラパゴス化していると、私も思う。

第1位 「三菱財閥『金曜会』は三菱自動車を“除名”できるのか?」(『週刊ポスト』5/20号)
第2位 「『私が弁護士のイチモツをチョン切るに至るまで』小番一騎」(『週刊現代』5/21号)
第3位 「『金正恩が私に話したこと、すべて明かす』藤本健二」(『週刊現代』5/21号)

 第3位。まずは『現代』の元金正日(キム・ジョンイル)の専属料理人だった藤本健二氏インタビューから。
 4月1日に電話が掛かってきて、平壌に招待したいという。急いでパスポートを取得して北京へ飛び、4月12日午後2時過ぎに平壌順安(スナン)空港に降り立ったそうだ。
 そこから高麗ホテルに行き、近づいてきたクルマの運転席を見て藤本氏は仰天した。なんと金正恩(キム・ジョンウン)最高司令官が、自ら運転して彼の様子を見に来てくれたというのである。
 藤本氏は、1947年秋田県生まれの寿司職人。82年に北朝鮮に渡り故・金正日総書記の寵愛を受け、01年に帰国するまで金正日の料理人を務めた。
 藤本氏は89年に金正日総書記が仲人を務め、当時国民的歌手だった女性と結婚し、現在24歳になる娘がいるという。娘は平壌の会計学校を出たばかりだそうだ。
 今回も特別待遇だった。金正恩最高司令官と面会するときには、その前に、幹部専用の診療所へ行って血液検査を始め、精密な身体検査を受けなければならない。だが彼は今回、最高司令官の古い友人ということで、このことは特別に免除されたという。
 宴会の席には2人の大物が欠席していた。1人は13年暮れに処刑された張成沢(チャン・ソンテク)党行政部長。もう1人は金正恩夫人だった。金正恩は、妻と娘は風邪を引いていると言ったそうだ。
 金正恩に「日本では最近、わが国は、どう見られているのか?」と聞かれた。

 「私は一瞬、躊躇しましたが、思い切って正直に答えました。
 『最悪です。今年に入ってからも、核実験したりミサイル実験したり……』
 『ロケットやミサイルを打ち上げるのは、アメリカのせいだ。アメリカと交渉を始めると、すぐに無理難題を突きつけてくる。
 アメリカとの関係は相変わらず険悪だが、私は戦争などする気はないのだ。だからどこにも当たらないように(ミサイルを)打ち上げているではないか。
 この私の発言は公開して構わないぞ』」

 ボルドーワインとすっかり美味しくなった平壌焼酎を飲みながら3時間会談したという。

 「この重要な党大会を経て、金正恩最高司令官は、日本との関係改善に乗り出したいと考えています。今回、私を平壌に招待したのも、その一環と言えます。
 次回5月下旬に訪朝する際には、ぜひとも安倍晋三総理の親書を携えていきたいというのが私の希望です。そして日本が北朝鮮との国交正常化に本気なのだという証しを、金正恩最高司令官に示したい。
 あの国はトップの意向がすべてなので、トップさえヤル気になれば、日朝関係は一夜にして好転するのです。(中略)
 拉致被害者の人たちは、最低5人は生きているはずです。彼らを全員、政府専用機に乗せて、日本へ連れて帰ろうではありませんか」(藤本氏)

 今のところ、北との太いパイプであることは間違いないようだ。うまく使って北との対話に結びつけることが、今の安倍首相には求められるはずだが。

 第2位。今週一番の読み物は、妻の不倫相手の一物をチョン切った元プロボクサーで法律家志望の小番一騎(こつがい・いっき)(25)被告のインタビューである。「取材・文 齋藤剛(本誌記者)」とある。齋藤記者の労作だ。
 小番一騎被告は4月21日午後2時過ぎに勾留されていた東京拘置所から保釈されたという。小番被告は同施設の正面玄関に現れ、約9か月ぶりに自由を取り戻したが、そこに出迎えの家族の姿はなかった。
 それまで記者と小番被告との間で多くのやりとりがあったのであろう。彼をタクシーに乗せコンビニへ行っている。
 小番被告は、妻から「無理矢理やられた」と聞かされ、怒り狂って妻の不倫相手の弁護士と対面した。謝罪こそ得たが、(性交は)無理矢理ではないという抗弁に怒りを爆発させ、4発のパンチを見舞いあそこをチョン切ってしまったのだ。
 相手の弁護士についてこう話している。

 「タフだと思います。やはり、(弁護士は)タフじゃないとできないですよね。ただ、いま僕が言えるのは申し訳ない気持ちでいるということだけ。被害者とは示談が成立しているので、それ以上はちょっと……」

 公判では小番被告の妻の供述が冷酷だと言われた。

 「一騎は収入がなく、ケンカになった。猫を飼っていたが、あるときから夫もペットと同じと思えば腹が立たないようになってきた」

 そう言ったが、妻に対する恨み節は、小番被告の口からは一度も出てこなかったという。取材の途中、外に出たら最初に食べたかったという小番被告のリクエストで、都内の味噌ラーメン屋へ向かった。

 「それでも僕は、妻を愛しています。
 妻を許せるか? もちろん、人間としてどうにもならない感情はあります。(弁護士に対する)ジェラシーとかもありますし。でも、あきらめるというか、受け入れるしかないですよね。(中略)
 週に一度、拘置所に面会に来てくれましたし、週に2~3回、直筆の手紙をくれました。全部で130通くらいですね。(中略)とにかく妻ともう一度一緒に暮らしたい。それだけです」(小番被告)

 妻の手紙にも「罪を償ったら、一緒に暮らしたい」と書かれていたという。
 普通に考えれば、刑を終えたあと妻とよりを戻すのは相当難しいと思わざるを得ない。だが、この男の軽率で単純だが、純な心根が読み手に伝わり、「頑張れよ」と肩を叩いてやりたい気持ちになる。
 これからじっくりこの男と付き合って、いいノンフィクションを書いてください、齋藤さん。

 第1位。三菱自動車の燃費不正は三菱グループを揺るがしていると『ポスト』が報じている。
 現在、三菱自動車は軽自動車の販売を停止しているため、4月の販売台数は前年同月比で44.9%減にまで落ち込んでいる(全国軽自動車協会連合会調べ)。
 三菱自動車はどうなるのか。関係者が固唾(かたず)を飲んで見守っているのが三菱グループの「金曜会」の動向であるという。
 そんな緊迫した空気の中、三菱グループの重鎮、相川賢太郎三菱重工相談役(88)が『週刊新潮』でした発言が物議をかもしているという。4月28日のJ-CASTニュースで私はこう書いた。

 「三菱グループという巨大な中で守られているから何とか生き延びているのだろうが、企業として守らなければならない大事なものが抜け落ちているのではないかと思わざるを得ない。
 それが何かを明らかにしてくれたのが週刊新潮の『三菱グループの天皇』といわれている相川賢太郎氏(88)インタビューであった。(今回の問題で)頭を下げた相川哲郎三菱自動車社長の実父で、東大を出て三菱重工の社長を1989年から3期6年、会長を2期4年務め、今も三菱グループ全体に睨みをきかせているという。毎月第2金曜日には三菱グループの主要企業29社の社長や会長たちが集まる『金曜会』というのがあり、その世話人代表を96年から99年まで務めている。ちなみにグループの御三家は三菱重工、三菱商事、三菱東京UFJ銀行だそうだ。
 この御仁、わが息子が引き起こした今回の不祥事をどう思っているのだろうか。『あれ(今回の不正問題=筆者注)はコマーシャル(カタログなどに記された公表燃費性能=筆者注)だから、効くのか効かないのか分からないけど、多少効けばいいというような気持ちが薬屋にあるのと同じでね。自動車も“まあ(リッター)30キロくらい走れば良いんじゃなかろうか”という軽い気持ちで出したんじゃないか、と僕は想像していますけどね』
 続けて、燃費がいいから自動車を買うなんていう人はいない。その自動車がいいから買うのであって、軽い気持ちで罪悪感はまったくなかったに違いないというのだ。さらに、『その人達もね、燃費を良くすれば1台でも多く売れるんじゃないかと考えたんでしょう。(中略)彼らを咎めちゃいけない。三菱自動車のことを一生懸命考えて、過ちを犯したんだから』
 呆れ果てるというのはこのことをいうのであろう。犯罪行為でも一生懸命やったのだから罪を責めてはいけない。こういう人間がいた三菱重工は防衛産業の中核会社である。背筋が寒くなるのは私だけではないはずだ」

 だが、三菱グループの中核のうち、三菱商事は資源安の影響で海外に保有する権益の減損損失が4000億円規模にまで膨らみ、今年3月期の決算で1500億円の赤字を計上し、初の連結最終赤字に転落している。
 また三菱重工は、大型客船2隻の建造で納期に遅れが出たため、16年3月期決算で508億円の特別損失を計上。今年度以降、損失はさらに拡大する見込みだ。

 「各社とも三菱自には裏切られたとの思いがありますし、仮に三菱グループが支援を打ち出したとしても、各社の株主が許さない。重工は造船事業で特別損失を出し、商事は初の赤字決算ですから、株主総会で『なぜ支援するのか』と質問されたら答えに窮する」(月刊『BOSS』の編集委員の関慎男氏)

 三菱グループ内では、すでに三菱自動車を身売りさせて、三菱という冠を外させるというプランが検討されているという。自動車業界紙の記者はこう予想する。

 「現実的な処理として、中国など海外メーカーへの身売りが一番妥当。ただし、シャープと違って、三菱の場合はコンプライアンスの問題なので、手を挙げる外資がいるのかどうか」

 「かつて関係のあった韓国の現代自動車やマレーシアのプロトン、あるいは中国企業の可能性もある。いま三菱グループがやるべきは、従業員の雇用と株主の利益をできるだけ守る形で三菱自動車を解体し、売却すること。それが三菱グループに残された役割だと思います」(関氏)

 どちらにしても三菱自動車は消えてなくなりそうである。

(編集部注:5月12日、日産自動車は三菱自動車に2000億円規模の巨額融資を行ない、事実上の傘下に収める方針を決定した)
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 1975年から2006年まで、新潮社では「作家自作を語る」というテレホンサービスを行なっていた。新刊本を著者みずからが肉声で紹介するというもの。ネット社会のいまとは違い、カセットテープの記録を約3分にまとめ、留守番電話で流していたアナログな時代のサービスである。同社のホームページによれば、「約1,000名の著者による約2,000件の談話を記録」した貴重な音声資料。10年以上も死蔵されていたのは、もったいないことであった。

 それが4月より、徐々にネット上で公開されていくことになった。第一期24人のうちでは、有吉佐和子『複合汚染』、城山三郎『官僚たちの夏』、向田邦子『思い出トランプ』、井上ひさし『吉里吉里人』と、あまりにも有名な名作について語られている。もはやお目にかかることがかなわない伝説たちとの邂逅。そもそもメディアへの出演がほとんどなかった作家、たとえば藤沢周平の声を聴けるなどとは、感慨深いことだ。

 小説が長く生き残り続けるために、いまは亡き作者みずからの宣伝が駆り出される。これはなにやらSFめいた、未来的な感覚すらある。本の世界が不況といわれて久しいが、老舗の出版社にはまだまだできることがありそうだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 4月1日から、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行された。法律の柱は次の3つ。

(1)障害を理由に差別的扱いや権利侵害をしてはならない。
(2)社会的障壁を取り除くための合理的配慮をする。
(3)国は差別や権利侵害を防止するための啓発や知識を広める取り組みを行わなければならない。

 障がい者というだけで、正当な理由もなく、民間事業者がサービスの提供を渋ったり、学校への入学を拒否するといった差別的な扱いをすることを禁じた法律だ。ハンディキャップを埋めるために、車椅子での移動をしやすくするような配慮、筆談や点字などコミュニケーションの手段を確保するなどについても触れられており、行政機関には義務化、民間事業者には努力義務が課されることになった。

 ただし、事業者に対して過度な負担を義務化しているわけではなく、障がい者と事業者がお互いによく話し合って解決策を探していくことを求めている。つまり、障害のある人も、そうでない人も、同じ社会で暮らす一員として、一緒に働き、勉強し、文化活動に参加できる社会をつくっていくことが、この法律の目指すところだ。

 今は、若く健康な人でも、いずれは誰もが老いて、身体のどこかに「障害」を抱えながら生きていくことになる。

 「障害者」を差別しない、暮らしやすい社会は、体力の弱い高齢者や子どもにも優しい社会のはずだ。そうした社会をみんなでつくり上げておくことは、いざ自分が「障害」を抱えたときに、自分を守る手段にもなる。

 現在は、車椅子の手助けなどの合理的配慮は、行政だけにしか義務付けられていない。だが、障害のある人が本当に暮らしやすい社会をつくるためには、民間の店舗、交通機関などあらゆる場面での配慮が必要だ。そして、それは個人の意識においても問われることになる。障害者差別解消法が目指す社会の実現は、私たちひとりひとりの行動にかかっているのではないだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 妙な人気がある、という表現では「ご本人」に失礼だろうか。沖縄県宮古島などの道路に立つ警察官の人形、その名も「宮古島まもる君」がまるでアイドル化している。おみやげ品として関連グッズも売れているらしい。

 「まもる君」という名前の由来は定かではないが、もともとは宮古島の島外からの観光客が命名し、やがて地元に定着していったと考えられている。宮古島各所に15基(周辺の島をカウントするともっとある)ほどが設置されていて、設定上、全員が兄弟である。じつは「まもる」以外に名前もそれぞれあるという。2011年には妹分の「宮古島まる子ちゃん」も登場した。

 そんなまもる君、安全運転をうながすだけでなく、ついに人命を救うことに貢献したらしい。今年2月に自動車事故があり、2台のうち片方の車両がまもる君に突っ込んだのだ。クッション的な役割を果たすことになり、もしもまもる君がいなければ、深刻な事態となった可能性がある。この際に破損したまもる君であったが、下地敏彦市長が保管場所まで「お見舞い」に訪れてくれた(ていねいに黒糖を持参して来たとのこと。しゃれている)。

 その後、無事に修復も終えて4月8日に「復職」。と同時に巡査部長にもめでたく昇任した。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 これは農政の大きな転換である。

 政府は国家戦略特区で、企業による農地所有を認める方針だ。関係法案を2016年通常国会に提出し、開会中の成立を目指す。

 対象の特区は兵庫県養父(やぶ)市。5年間と限定的だが、企業の所有を認め、地域経済にどんな経済効果をもたらすか検証する。

 現在でも、企業は「農業生産法人」に出資する形で「間接的」に農地経営に関与できる。出資比率は2016年4月からは従来の25%以下から50%未満に緩和された。とはいっても限定的なのが実情だ。

 これに対し特区の養父市では、企業などの法人が農地を直接取得することが認められる。ただし、農地は自治体がいったん地権者から買い取り、そのうえで企業に売り渡す形をとる。

 企業の技術力や資金力、販売・経営のノウハウを、農業に生かそうとの狙いがある。

 ただ懸念の声もあり、農地から思ったように利益があがらない場合、「企業の論理」で企業が農業から撤退し、農地を転売する可能性がある(編集部注:農地保全については、参入企業から積立金を徴収し、農地として維持できなければ、それを没収するという農地保全条例が養父市独自で制定されている)。

 ともあれ、特区で成功すれば、いずれ全国で企業の農地所有が認められるだろう。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 当サイトのネタ出しをするための打ち合わせを恵比寿の喫茶室ルノ○ールで行なっていると、不意に担当編集者から「最近、スニーカー女子が流行っているって知ってますか?」と言われ、窓の外に目を移してみれば、なるほど街を歩いている年頃の女子たちの、じつに8割近くがスニーカーを履いていたのでびっくりした。

 過去に何度もあったトレンドなのでは……と指摘できなくもないスニーカーブームだが、今回の「スニーカー女子」の特徴としては、以下の要素が挙げられる(らしい)。

・一時はあきらかに下火となった「ナイキ」のスニーカーが、また盛り返してきている
・夏に向けてなのか、比較的白っぽい色が主流である
・パンツより、スカートとコーデするのがいっそうオシャレとされている

 たしかに、清潔感やアクティブ感を演出するのにスニーカーは最適で、しかもリーズナブルかつ「歩きやすい」という機能性にも優れており、まさに一石二鳥、三鳥……のアイテムだと言える。しかし、くっきりと浮かぶ女子のアキレス腱に密やかなフェティシズムを感じてやまない筆者としては、つま先とかかとの角度差がないスニーカーでもアキレス腱がナイフのように際立つ日本人女子はごく稀……という事実から、本音ではこのブームをあまり歓迎していなかったりもするのである。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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