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『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)というドラマ、ご存じだろうか?
ピコ太郎の「PPAP」か「恋ダンス」か、っていわれるほど、ドラマのエンディングで主人公みくり役のガッキー(新垣結衣)はじめ出演者が踊るダンスが話題の、あのドラマである。流行語大賞には間に合わなかったようだが、今年の忘年会、いたるところでこの「恋ダンス」が踊られるに違いない。
派遣切りにあったヒロインが生き抜くために家事代行のバイト先の雇用主(35歳草食系男子)と契約結婚をする──題材が題材なだけに哀しいのか! つらいのか! ドロドロなのか! と思いきや、とにかくまったく重苦しくなくてほんとうにテンポのいい、いまどきのラブストーリーである。ときおりムズキュンするシーンもあったりする。
かおるんがこのドラマを見出したのもやはり「恋ダンス」きっかけで、残念なことに4話目からのスタートだ。ガッキーも星野源も石田ゆり子も古田新太もみーんな大好きなんだけど、なぜにあたしはこのドラマの1話目をスルーしていたんだろうか? 今思うと後悔の嵐である。朝ドラ以外の連ドラを続けて見るという根気が年々低下しているのも確かだ。
でも果たしてそれが、最大の理由なのか?
そう、最大の理由は「タイトル」である。「逃げるは恥だが役に立つ」──めちゃくちゃ見たいと思えるものではなかったのである。「地味スゴ」(日テレ系『地味にスゴイ!校閲ガール河野悦子』)にも言えることだが、「逃げ恥」という、濁音交じりの省略形もいただけなかった。
というわけで、なんでこんなタイトルなのかを調べてみる。このドラマは『Kiss』(講談社)に連載中の同タイトルの漫画が原作。そしてこの言葉、ハンガリーのことわざなのだそうだ。
だから耳慣れないのだ!
後ろ向きな選択だっていいじゃないか。
恥ずかしい逃げ方だったとしても、生き抜くことのほうが大切で
その点においては異論も反論も認めない。(平匡さんのセリフ)
なんだ、素敵なタイトルではないか! 原作者の海野つなみさん、素晴らしいことば選びではないか! と、180°見方が変わってしまった。
なんとも薄情な奴なのである。
ジャパンナレッジにハンガリーの原文なるもの載っているかなと検索すると、結果はゼロ。だって『ハンガリー語辞典』なんて搭載してないじゃん! 当然のことだ。で、禁断のWikipediaを使わせていただく。
Szégyen a futás, de hasznos. だそうだ。Szégyenは「恥」、futásは「走る」、hasznosは「役に立つ」という意味だそうある。
読めないけど。
世界のことわざ、やってくれるではないか!と思っていたら、本屋さんで『誰も知らない 世界のことわざ』(創元社)という絵本を見つけてしまった。作者はエラ・フランシス・サンダースさんというイギリス人のライターでイラストレーター。見開きでエラさんのおしゃれなイラストとともに、彼女の選んだ世界のことわざが紹介されている。
下に少しだが、取り上げてみる。
ロバにスポンジケーキ(ポルトガル)
豚に真珠と同じ意味。「ロバは年をとったら新しい言葉は覚えられない」ということわざもあるそう。
誰かを、その人のスイカからひっぱり出す(ルーマニア)
その人を「怒らせて、狂ったようにさせる」という意味。ルーマニアには難解なことわざが多いそうで、嘘をついているは「ドーナツを売っている」、時間を無駄にしないようには「ミントをこするのはやめよう」と言うそうだ。
あなたのレバーをいただきます(ペルシア)
食べてしまいたいくらい、あなたを愛している。『君の膵臓をたべたい』を思い出してしまった。
ある日はハチミツ、ある日はタマネギ(アラビア)
あるときはうまくいき、あるときは悪いほうへいく。おいしいタマネギが悪いほうのシンボルになっている。日本では言わないだろう。
水を持ってきてくれる人は、そのいれものをこわす人でもある(ガー)
「ガー」とはガーナの一部族とその言語名。ガーナでは昔から井戸や川まで水を汲みに行く。努力するのをやめて家に閉じこもってしまえば間違いやミスを減らすことはできるが、思いがけないことに出会えない。
さて、エラさんはこの本の中で、日本のことわざも2つ、ピックアップしてくれている。「サルも木から落ちる」「猫をかぶる」──エラさんのかわいいセンスがよくわかります。
2024年11月30日(土)8:00~17:00 ※予定
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