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アニサキスにかかりやすい体質!?

2022-06-24

先日、上司とともに打ち合わせに向かう途中、「そういえば、大丈夫?アニサキス」と言われた。聞けば最近、アニサキスによる食中毒がめちゃくちゃ流行しているという。

世間的にはまだアニサキスって言葉が周知されていなかった10年前、私はなんと1年も置かず、2度もアニサキスによる食中毒にかかった。

ではここで「アニサキス」をジャパンナレッジでチェック!

回虫目アニサキス科の線虫。クジラ類の胃に寄生し、体長5~8センチメートル。第1中間宿主はオキアミ類、第2中間宿主は魚・イカなどで、これを刺身などで生食した人間の胃壁などに侵入し激痛を起こすことがある。(「デジタル大辞泉」より)

一度目は次の日からゴールデンウィークという金曜日。会社の仲間たちと飲みに行き、私はしめ鯖を2皿、頼んだ。「その店の味を決めるのはしめ鯖だ!」と昔の上司に言われた日から、新しく入る店では、まずはしめ鯖を頼むようにしていた。

しかしみんな、食べてくれない。こういうときは頼んだ本人が食べるべきだな、と思って、ほぼ2皿を完食。

翌日。起きたらなんだか背中がちょっぴり痛い。まあ、すぐに治るだろうと放っておいたら、昼ごろになって痛みが背中全域に広がってきた。強くつかまれたようなその痛みは背中から内臓へと広がっていき、夕方にはもう耐えられなくなっていた。

こ、これは救急車を呼ぶべきかな!と考えたが、いやいや、待て待てそこまで重篤でもないよな……とさんざん迷っていたところ、おお、そういえば友達が近くの大学病院に勤めているではないか!

ケータイに電話をかけた。彼女は「とにかくおいで」と言ってくれた。泣きそうになりながら必死でタクシーをつかまえ、大学病院に向かった。ゴールデンウィーク初日なので、救急の受付から病院に入り、痛みに耐えながら順番を待ち、ようやく友人に診察してもらう。

友人は糖尿病専門のお医者さんだ。「最近、体重が急激に落ちたとか、ある?」と聞かれた。がんを疑われたようだが、体重は落ちていない。「なら、CTとろう」、しかしCTをとっても何も悪いところはない……。そこに、消化器の先生が通りがかった。

「昨日大量にサバ食べたとか、イカ食べたとか、そんなことあります?」と聞かれた。
「そういえば、たくさんしめ鯖を食べました」
「ではまずこのお薬を飲んでひと晩様子を見てください。それでもよくならないようだったら、また明日来てください」
薬を飲んだが、一向によくならない。痛みで一睡もできずひと晩過ごした。

次の日は祝日だったので、救急の受付から病院に入った。「これはきっとアニサキスのしわざですね」と先生に言われ、連れて行かれたのは内視鏡室。内視鏡の先生とイケメンの助手たち5、6人が私の到着を今か今かと待っていた。まずは喉に局所麻酔をされ、ベッドに寝かされ、口から胃カメラを入れられた。

突然の、そしてこのとき初めての胃カメラ突入に、すぐさま「おえーおえー」となった。先生とイケメン助手たちは「どこだどこだ」と胃カメラを操る。「やめてくれー」と心の中で叫んだ。傍らでは友人が心配そうに手を握ってくれていた。

「見つけた!!!」おそらくものの2、3分で歓声があがったようだ(私には20分くらいに感じられた)。「もう大丈夫ですよ!」。胃カメラはするする体外に出て行った。涙やら鼻水やら唾液やらでぐしゃぐしゃになった顔の前に、微笑みながら助手さんが小さな瓶を差し出した。「はい、これがアニサキスです!」と言った。その白い糸くずのようなものは、瓶の中で元気よく泳ぎまわっていた。

内視鏡室から出た瞬間、すぐに生きる力がわいてきた、食欲がわいてきた。あんな糸くずを取り除いただけなのに、なんでこんなに回復が早いんだろう。「胃にとどまってくれてよかったですね。胃壁を破って腸に行ってしまうと開腹手術しなければならないこともありますから」と先生に言われた。

それからまた1年もせぬうちに、サバのカルパッチョ(しめさばは警戒して食べていなかったんだが)を食べてしまい、同じ痛みが走った。また友人に電話をした(友人は電話の向こうで激怒していた)。そしてまた死ぬほどつらい内視鏡で探してもらったが、今回はすでに胃から姿を消しており、体外へ無事流れていたようだ。私はアニサキスの痛みに敏感になっていた。

とある有名タレントさんがアニサキスを4度やったとテレビで言っていた。「やはりかかりやすい体質があるんですかね?」と先生に聞くと、「まだそんなに流行ってないから、研究が進んでないんですよね」と言われた。

いつからかアニサキスという言葉を巷で聞くようになった。ググると5年前から食中毒の原因の第一位になっているらしい。アニサキスによる食中毒とアニサキスアレルギーは違うとか、将来がんの発見や治療法にも役立てるかもしれないとか、アニサキスの研究も進み、情報も豊富になってきた。

あれからしめ鯖は全然食べられる。しかしながら、いちばんに注文するのはやめている。

2022-06-24 written by かおるん
来週は人間ドックで胃カメラだ。1回目の体験が強烈だったからか? はたまた、身体が胃カメラに超絶合っていないのか? 胃カメラはいまだにまったく慣れないのである。