ジャパンナレッジ 本文サンプル『をかし』

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小学館 全文全訳古語辞典 本文サンプル『をかし』

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小学館 全文全訳古語辞典

をか・し 〔オカシ〕

最重要語

〔形容詞シク活用〕 [類義語] をこがまし

をかしげ

理知的に好奇心や興味を感じる情趣や、視覚・聴覚などで興味深くとらえた美、を表す。平安時代、「あはれ」と対比される語。

❶笑いたいほどである。こっけいである。おかしい。

「中将をかしきを念じて」〈源氏・紅葉賀〉

頭中将(とうのちゆうじよう)は(光源氏のあわてる様子が)おかしくて笑いたいのを我慢して。

興味深い。おもしろい。

源氏物語 若紫(8)

全文用例

「ののしる」 の項目の用例から続く

あはれなる
形動・体
格助
マ上一・用
(つ)
つる
完了・体
かな
終助
かかれ
ラ変・已
接助
代名
格助
すき者
ども
接尾
係助
かかる
ラ変・体
あり
格助
のみ
副助
サ変・用
接助
よく
形ク・用
さる
ラ変・体
(まじ)
まじき
打消推量・体
格助
係助
見つくる
カ下二・体
(なり)
なり
断定・用
けり
詠嘆・終
たまさかに
形動・用
立ちづる
ダ下二・体
だに
副助
かく
ほか
思ひのなる
形動・体
こと
格助
見る
マ上一・体
間投助
格助
をかしう
形シク・用
おぼす
サ四・終
さても
接続
いと
うつくしかり
形シク・用
(つ)
つる
完了・体
ちご
かな
終助
なにびと
何人
(なり)
なら
断定・未
推量・終
代名
格助
格助
御かはり
格助
格助
なぐさ
格助
係助
マ上一・未
ばや
終助
格助
思ふ
ハ四・体
深う
形ク・用
つき
カ四・用
完了・終

かわいい女を見たものだなあ、こういうわけだから、(自分のお供(とも)をしている)この好色な連中は、このような忍び歩きばかりして、うまく、見つけられそうもない女をも見つけるものだったのだ、(自分は)たまに出かけただけでも、このように意外なものを見つけるものよと、(光源氏は忍び歩きを)おもしろくお思いになる。それにしても、ほんとにかわいらしかった子であったなあ。どういう人なのだろう、あの人(=藤壷)のお身代わりとして、(あの少女を)毎日のなぐさめに見たいものだ、と思う心に深くとりつかれた。

❸(景色などに)趣がある。風情がある。

「ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし〈枕草子・春はあけぼの〉

(蛍が多く飛び交うのも)たった一つか二つかなど、かすかに光って飛んで行くのも趣がある。

❹(容姿などが)美しい。優美である。また、愛らしい。

「梳(けづ)ることをうるさがり給へど、をかしの御髪(みぐし)や」〈源氏・若紫〉

くしを入れることを煩わしがりなさるけれど、美しいおぐしですね。

若紫ノ美シイ髪ヲイウ。

❺(性質・態度・技術などが)立派である。優れている。すばらしい。

「容貌(かたち)いとよく、心もをかしき人の」〈枕草子・男こそ〉

顔かたちが大変美しく、気立ても立派な女が。


要点

  • 平安時代には、❷~❺の用例が多いが、現代語と同じ❶の例もあり、当時の辞書には、「笑ふべし」と訓読できる「可笑」や「可咲」に「をかし」の訓をつけている。中世以降は擬古文を除いて、もっぱら❶の意に用いる。

小学館 全文全訳古語辞典(小学館)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 本文サンプル『をかし』

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日本大百科全書(ニッポニカ)

をかし

おかし

「世界大百科事典」項目を見る

日本の古典文芸において一種の美意識を表す語で、美的理念を示すことばにもなっている。その用例は平安時代以後にみられ、基本的には対象を興ありと思う明るい快適な感情を主とすることばであろうが、美として優美に近いものを表す場合と滑稽 (こっけい) を表す場合とが両極として考えられる。時代が下るにつれて滑稽に重点が移ってくるが、平安時代の文芸では優美に近いほうが優位を占め、そこでは同時代の「あはれ」の表すところに近似しているともいえる。しかし「あはれ」が対象に思い入った深いしみじみとした感動であるのに比べて、「をかし」は概して対象を外部から余裕をもってみて、そこに興趣を覚え快感を誘われて喜ぶような面がある。『枕草子 (まくらのそうし) 』はこういう「をかし」の美がとくに際だっている作品で、用例数のうえでも「をかし」は「あはれ」の数倍に達し、「月のいとあかきに、川を渡れば、牛のあゆむままに、水晶などのわれたるやうに、水の散りたるこそをかしけれ」のような用例がみられる。和歌関係では歌合 (うたあわせ) の判詞に「をかし」が評語として相当多く使われている。『亭子院歌合 (ていじいんのうたあわせ) 』(913)に「今日のみと春を思はぬ時だにも立つことやすき花の陰かは」などの2首を「をかし」と評したのが早い例で、その後しだいに広く使用され、藤原俊成 (しゅんぜい) あたりになるとその用例が非常に多くみられる。滑稽を表す「をかし」は中世以後に優勢になる。狂言に関していわれる「をかし」などはそれである。

[武田元治]

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改訂新版 世界大百科事典 本文サンプル『をかし』

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世界大百科事典

をかし

おかし

「日本大百科全書」項目を見る

文芸用語。語源不詳。〈をこ(烏滸(おこ))〉の形容詞化とか,動詞〈招(お)ぐ〉の形容詞化ともいわれるが,定説はない。古辞書には,〈逈〉〈運〉〈可咲〉などをこの語に当てる。新鮮な印象を与えられ,好奇心や関心を喚起される感情が基本で,視聴触味嗅の五感はもとより,それらによって複雑に醸成される雰囲気や気分なども含まれ,滑稽感も当然入っている。平安時代の貴族社会では多様な美意識の自覚とその発展が見られたが,大別して,感動体験を主情的に詠嘆する場合と,それを知的に対象化して観照する場合とがあり,前者は〈あはれ〉(もののあはれ),後者は〈をかし〉の語で表現されることが多い。《枕草子》はしばしば〈をかし〉の文学と評され,たしかに対象把握と再構成や配列・表現の各方法にその傾向は顕著だが,その底には自身の素朴な体験と印象をただ羅列するのでなく,不遇の中でめめしい情緒に流されまいとする心のたたかいがあることは見のがせない。この〈をかし〉の性格が以後の日本の随筆文学の性格を強く規制していった。〈をかし〉の語は後には転じて〈奇妙な〉の意も派生した。
[今井 源衛]

[索引語]
枕草子

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