JKボイス お客様の声知識の泉へ
ジャパンナレッジを実際にご利用いただいているユーザーの方々に、その魅力や活用法をお聞きしました。
先端を行くナレッジピープルによる数々のジャパンナレッジ活用術の中に、あなたの知識探索生活をさらに豊かにするヒントが隠されているかも知れません。法人のお客さまの導入事例としても、興味深いエピソードが盛りだくさんです。
2007年04月

JKボイス-私はこう使っています:ジャパンナレッジ 日本初のフルテキスト情報利用のDB「ジャパンナレッジ」の価値

長谷川 豊祐さん
(はせがわとよひろ)
鶴見大学図書館
日本でも有数の歯学部を持つことで有名な鶴見大学。同校では最近、司書・司書教諭を育成するためのドキュメンテーション学科が創設されたことでも話題である。このような環境下にある同大学図書館は、実に70万冊を数える蔵書を誇るトップレベルの施設である。ここに勤務する一方、ホームページ「図書館員のためのインターネット」を運営し、慶應義塾大学大学院博士課程で図書館・情報学について学んでいる長谷川さんに今後の図書館と「ジャパンナレッジ」の関わり方について伺ってみた。

JKは海外でも類を見ないリーズナブルなプラットフォーム

 今後、間違いなく図書館のかかえるコンテンツは、電子ジャーナルやデータベースなどのデジタルメディアが増えていくと思います。ですが、それは決して、紙媒体が減っていくというわけではありません。従来型の書籍はそのままで、デジタルコンテンツの比率が増加していくということです。

 ここで少し視点を変えて、現代における大学図書館の立ち位置を大きな枠組みの中で整理してみましょう。

 高度化した情報化社会の中に、大学も含む高等教育サービスが存在します。そのサービスの中に大学図書館があり、さらにその中に所蔵するデータベースが存在するわけです。データベースというものも、学生の方々の教育課程という大きな枠組みの中では、情報探索における選択肢のひとつ、ごく一部の領域でしかないわけです。

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鶴見大学図書館のホームページ
館の紹介や利用案内はもちろん、さまざまな書誌検索データベースへのリンクも充実している。長谷川さん「最近の学生さんは、パソコンよりも携帯の依存率が高いので、QRコードによるサービスも対応中です」

 館内にはパソコンが配備されており、学生さんに対して広く解放されているのですが、結局、ちょっとした調べ物に関しては、WikipediaやGoogleで済ませてしまっているのが現状です。

 普段のインターネットにおける情報探索の90%(パーセント)は、このような一般生活情報収集のためですし、それに関しては、Wikipedeiaで十分だと思っています。むしろ、残り10%、本当の勉強のためにより良いデータベースの使い方を理解していただければと思っています。

 そのための図書館利用のガイダンスは頻繁に行っています。そこでは、実際にOPAC(図書館の所蔵目録データベース)やWebcat Plus(全国の大学図書館の総合目録データベースをWebで検索するシステム)を使った本の探し方などをお教えできるように努めています。

 また、実際の学科の中でも、日々のレポートや、最終的には卒業論文を書くための本の探し方や調べ方をデジタルを含めて教えていくという実践的な授業もあります。

 ただし、書誌データベースで、どこにどんな本がある、ということまでは分かっても、その先の「本物」の情報を読んだり、見たりすることはできません。

 その点で言えば、「ジャパンナレッジ」は、さまざまな事典辞書のデータベースを総括的に利用できて、さらにその先にある「本物」の情報をフルテキストで読むことができる。「日本大百科全書」、「大辞泉」や「プログレッシブ英和中辞典」を単独で引けるだけでなく、横断的に検索できる。「東洋文庫」はページをそのまま表示して、さらにテキスト検索も可能にしています。この物量でこの価格設定、これは国内ではもちろん、海外でも類を見ないリーズナブルなプラットフォームだと思っています。


データベース利用の理想と現実

 アカデミックな世界には、いろいろなところに良いデータベースが独立して存在しています。ですが、それらが有機的に結びついていないのが現状です。

 「ジャパンナレッジ」のように、複数のデータベースを同時に比較利用できて、さらにそれらを窓口にしてフルテキストの電子ジャーナルに直結できれば、情報探索ツールとしての有用性も格段に拡がっていくでしょうね。

 さらにリモートアクセスで自宅からも見ることができるようになれば、「ジャパンナレッジ」だけでなく、いろいろなデータベースをもっと利用してくれる方は増えるでしょうね。

 私は慶應義塾大学の大学院に通ってもいるのですが、リモートアクセスはかなり頻繁に使っています。勉強する人にとっては大変便利なものだと思います。学生や院生は授業のない日や休日にわざわざ図書館に出向かなくてもいつでも勉強できる。使い方が分からなければ、図書館側からもリモートでインストラクションができるようになれば、さらにいいですよね。

 こういった欲求は至極当然のものだと思いますし、大学や図書館で対応していかなければならない仕組みでしょうね。ですが、なかなかそこまでは実現できていないのが現状です。

 紙とデジタルの両方の媒体を維持するのは大変なことです。紙の書籍は物理的な維持管理がかかります。一方、デジタルメディアは導入するためのコストに、さらにメンテナンスやインストラクションのための要員の増強と育成も必要になってきます。書籍は置いておくだけでも、手にとれば使い方はわかります。けれど、データベースは、ただサイト上に置いておいても誰も使ってはくれません。どうやって使うのかのアシストが必要になるわけです。

 湯水のようにコストが使えるならば、電子化は進むでしょうし、学生の利用頻度も増えるのかも知れません。ですが、大規模な大学ならばいざ知らず、我が校も含めて、ほとんどの大学が、なかなかそこまで到達することができない。日々の業務もありますし、人員も割けないのが実情です。

今こそベンダーと図書館の連携を

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長谷川さんご自身が運営される「図書館員のためのインターネット」。図書館員に有用な情報や厳選されたデータベースへのリンクが集められている。長谷川さん「実は、データベースに慣れてくると、ヒットした書名のリストを見ているだけでも、自分が求めているテーマやアイディアが広がってきます。いわば、データベースは、自分の考えをまとめるアイディアプロセッサーみたいなものですね」

 データベースの横断的検索、リモートによる24時間のナレッジ検索。使いやすく、メンテナンスも容易なプラットフォームづくり。それには、どうしても、ベンダーの方々にも協力を仰いでいかなければならないと思います。

 実際、作り手側であるベンダーと使い手の図書館のコミュニケーションが不足しています。両者が意見を交換できる機会というのも、まだまだ少ないと思います。たまに会っても、コストの話に終始してしまう。もっと実践的な機能についてのお話を重ねなければいけないと思います。

 これは提案なのですが、当館のガイダンスなどに「ジャパンナレッジ」のスタッフの方にもスピーカーとして、ぜひ参加していただきたいですね。まだまだ理解できていない使い方を教えていただけるでしょう。同時に、実際のユーザーである我々図書館司書や学生さんからの意見もきっと今後の開発の材料になるはずです。

 「ジャパンナレッジ」の登場によって、ようやくわが国でもフルテキスト情報のデータベースが使えるようになったわけです。これから、いろいろなコンテンツや機能を付加して充実したサービスをいっしょに展開できればうれしいですね。