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NHK大河ドラマ『真田丸』の時代考証をつとめていますが、その際、ジャパンナレッジをフル活用しています。iPhoneでも検索できるというのがありがたく、NHK関係者との打ち合わせの席では、その場で調べて、正しい答えを口にすることができます。
例えば、脚本の中に、使われていた時代があいまいな言葉を見つけると、ジャパンナレッジの『日本国語大辞典』(以下、『日国』)で初出を調べるようにしています。気になる単語を調べて、用例欄をチェックするのです。同辞典の用例は、使用の早い事例から書かれていますから。そして、「江戸初期には使われているから、これならいいな」、「これは用例のなかで一番古いものが坪内逍遙の小説だから使わないほうがいい」などと、判断していくわけです。ただし、中にはほかの言葉に置き換えることが難しい言葉もあります。そうした場合は、初出年にかかわらず、OKを出すこともあります。
『日国』で確認するのには、もうひとつ意味があります。大河ドラマが放映されると、視聴者の方から、「この言葉は本当に使われていたのか」とご質問を受けることがあります。その際に、『日国』に記された用例をもとに、「これは、『日葡辞書』にも載っている言葉です」と説明すると、質問者にも納得いただけるというわけです。
『日国』の次によくジャパンナレッジで検索しているものが、『日本歴史地名大系』です。大河ドラマでは、地名が多く登場しますが、ヨミについても頭を悩ませます。口にしないわけにはいけませんので、典拠が必要になります。そこで、『日本歴史地名大系』を用いるのです。「『日本歴史地名大系』での読み方」というものが、ひとつの根拠になるわけです。
同じ理由で、人名の読み方を確認する際は、『国史大辞典』を検索します。ほかにも『古事類苑』や『東洋文庫』も重宝しています。
たまに番組制作サイドから、地名のイントネーション、たとえば「三河」という地名を、どう発音していたかなどを聞かれて閉口することがあります。さすがにジャパンナレッジでも検索できません(笑)。そんな時は、「地元のNHKの支局にお尋ねください」と答えることにしています。もっとも、三河出身の家康と、信濃の真田昌幸が同じイントネーションで「三河」を発音するというのも変な話です。今回は主役が徳川ではなく真田なので、間を取るということで、「三河」についてはいわゆる「標準語」のイントネーションを採用させていただいています。
歴史研究においても、ジャパンナレッジは有用です。特に、横断検索によって、普段、調べる機会のない辞書や叢書を目にすることができます。研究はどうしても特定分野に偏りがちなのですが、横断検索の結果に目を通すことで、視野が広がります。ひとつの辞典だけでなく、複数の辞典から調べることが、研究者には重要になってきます。
いずれにせよ、膨大なデータを手にした私たちは、それをどう利用し、どう使うか、というところが問われ始めているのでしょう。