JKボイス お客様の声知識の泉へ
ジャパンナレッジを実際にご利用いただいているユーザーの方々に、その魅力や活用法をお聞きしました。
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2003年11月

JKボイス-私はこう使っています:ジャパンナレッジ 「図書館生き残りのカギは“レファレンス”にあり」

小畑 信夫さん
(おばたのぶお)
図書館・メディア研究所代表
 去る11月4日から三日間、東京・有楽町の東京国際フォーラムにおいて開催された第五回図書館総合展の統一テーマは「図書館の生き残り」。年々、予算が切り詰められるなかで、図書館は生き残りをかけて特徴ある図書館像の模索を始めている。今回のJK Voice[ユーザーの声]は、「レファレンス」(調べものの支援)による図書館の再生を説く、図書館・メディア研究所代表の小畑信夫さんの講演を再録(要約)しました。小畑氏は都立高校の図書館司書を経て、長く司書教育・育成に携わってきた知る人ぞ知る“図書館の達人”です。

個性的な図書館が続々誕生

 さて、今回の図書館総合展の統一テーマは「図書館の生き残り」です。今、巷の図書館では図書購入費がどんどん削られ、かなり厳しい時代に突入しました。東京都でも、三館あった都立図書館が二館に減らされるなど、今後も厳しい状況は続きそうです。

 これまで公立図書館が金科玉条にしていた貸出率や登録率という数字だけで、利用者に愛されていますという論理はもう通用しません。では、どのように変わっていけばよいのか。その答えは「レファレンス」にあります。図書館の活動(講演者はそれらの全てがレファレンスに集結していると言っています。)を見せて、利用者の役に立つ図書館であることを理解してもらうことが重要になってきます。

 昨2002年の図書館総合展では、ニューヨーク市立図書館が掲げる「ビジネス支援」が話題になりました。周辺企業(起業)のニーズに合わせて、ビジネスに特化した知識や情報を提供していく図書館です。そうした流れを受けて、浦安市立図書館はビジネス支援を打ち出しています。地域の特性に根ざした図書館の方向性は今後、ひとつのトレンドになっていくと思われます。しかし、この「ビジネス支援」という言葉を考えると、これもひとつのレファレンスのことだと気付かされます。ほかにも議員の作る行政政策に関する情報を提供することができれば、それは「政策支援図書館」となるわけです。

 個性的で利用者に愛される図書館を目指すためには、レファレンス能力が必要になってきます。レファレンスには高度な知識が要求されると思われるでしょうが、最近、非常に便利な時代が着々と近づいているという気がしてなりません。

ネット配信がキーワード

 今年の図書館総合展を見回してみて気付くのは、NHKの画像ソースを配信するTRCなどをはじめ、さまざまなコンテンツの“ネット配信”が本格化してきた点でしょう。そして、ネット配信技術やシステムの進化を考えると、有益で有用なツールとして、ようやく一般化しそうな勢いを感じます。ジャパンナレッジは、そうした流れのなかでまさに「ネットでレファレンス」を可能にするツールとして登場してきたわけです。

 今まではレファレンスというと、司書の特別な能力というイメージが強かったわけです。私は大学で図書館司書課程や司書教諭課程の講座をもっていますが、最近ではレファレンスの技術的な話が少なくなってきました。というのも、レファレンスの代替可能な新しい技術が次々に登場してきているからです。講座で講義するのはもっぱら精神論が増えました(笑)。たとえば、『現代用語の基礎知識』(自由国民社)は新語などを調べるのに使うことが大半かと思いますが、実は歴代の首相のリストが載っている。分厚い年鑑を、汗をかきながら開く必要はないんです。こうしたなんでもない知識が司書としての技能だったわけですが、こんな知識はもう通用しなくなる時代が目の前にきています。

 それを痛感させられたひとつのきっかけがこのジャパンナレッジです。特にワンルックという一括検索をすれば、20を超えるコンテンツを一度に検索することができる。平凡社の『東洋文庫』も入ったし、世界地図も追加されました。今後もどんどんコンテンツが増え続けて、キーワードを入れるだけで、たちどころに110万項目、10億文字のデータベースから必要な知識を持ってきてくれる。司書の講座もサービス論・精神論にならざるを得ないというわけです(笑)。

 また百科事典として搭載されているのは『日本大百科全書(ニッポニカ)』。デジタル版の百科事典は今までにもありました。しかし、ネット配信の特性として必要な定期的なアップデート、つまりメンテナンスがきちんと行われている百科事典は現在、この『ニッポニカ』しかありません。日々変わるものがネット上に載っているからこそ意味があるのです。

世界最古の印刷物は? スパムメールの語源は?

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 ここで、ちょっと趣向を変えてクイズを出してみましょう。「現存する世界最古の印刷物とはなんでしょう?」。グーテンベルグの聖書? 違います。グーテンベルクの『四十二行聖書』や『三十六行聖書』は世界最古の“活版”印刷物です。実は、現存する世界最古の印刷物はこの日本にあるんです。答えは「百万塔陀羅尼経(ひゃくまんとうだらにきょう)」です。今からざっと1300年前の奈良時代に銅版印刷されたものです。百万塔というくらいだからたくさん刷られました。だから今でもかなり残っているわけです。

 ジャパンナレッジでは、「世界最古」「印刷物」という二つのキーワードを入れてAND検索するとたちどころに「百万塔陀羅尼」という項目が見つかります。それがこういう形で見えてきます。ちゃんと世界最古の印刷物と書かれていますね。この「世界最古の印刷物」が2003年の今日、デジタルのネット配信という形で、情報の中身は変わらずに、便利にその情報が取り出せるようになってきたのです。

“レファレンスを見せる”とは?

 私は冒頭で「レファレンスを見せる」という言い方をしました。どうしたらレファレンスを見せられるか? 公立図書館の利用ガイドを見てみると、レファレンスというのは「利用者の調べるお手伝いをすることです」と書いてあります。利用者の調べることのお手伝いをしますといわれても一般の利用者はピンときません。日々の生活の中で出てくるさまざまな疑問を、こちらで(図書館が)勝手に設定して、調べて、それを利用者に館報などで提示してあげる、こうした「勝手にレファレンス」サービスが一般の方々の図書館活用の理解につながります。夏目漱石の小説に『倫敦塔』というのがありますが、これが「ロンドン塔」であるとは、普通読めない。こんな簡単なことを調べてあげる。これがレファレンスです。

 今、学校では「調べ学習」の時間というものを行っています。早い話が、子どもたちが自分でレファレンスしていく能力を身に付けるというのがひとつの目的です。子どもたちが自分で課題を考えて、自分の力で解決していく能力を育てていくという眼目なのですが、子どもにそれを要求するのはハードルが高い。ですから、学校図書館や公立図書館の司書が「勝手にレファレンス」をやってあげる。季節に合わせてキーワードを考えるなどして、それに合わせた本をすすめてあげるのです。

 ちょうど一週間ほど前にハロウィンがありました。ハロウィンから想像されるキーワードをネタにするのです。なぜハロウィンは南瓜(カボチャ)なのか、なぜスイカじゃダメなのか、そんな「なぜ」を子どもたちにぶつけてやりながら「疑問」を持って、調べると言うことを身近なモノにするトレーニングをしてやる。例えば、関連してカボチャに関する本をすすめてあげる。

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 大人の場合はちょっと難しいですね。ちょっとジャパンナレッジで「南瓜」を調べてみましょう。

 7件の検索結果が出てきました。この6つ目に「南瓜与惣兵衛」というものが出ています。これは江戸時代の戯作者ですが、この読みを答えられる方はいらっしゃいますか? 実はこれは「なんかよそべえ」と読みます。さまざまな事典や辞書を調べてみましたが、この人物の情報が載っているのは、ジャパンナレッジにも入っている『日本人名大辞典』(講談社)だけなのです。

 もっと調べてみましょう。最近では大人から子どもまでみんなメールをやっています。「スパムメール」という言葉が一時話題になりましたが、「スパムメールって何?」という質問を受けました。IT関連語辞典やコンピュータ用語辞典、もしくは新語辞典などを使うと出てくるでしょうか。あまり大きくない図書館だとこれらの辞事典がすべてそろっているわけではありません。そこでジャパンナレッジのワンルック。英語のつづりはわからないので、「スパム」とだけ入れて検索してみます。


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 9件の結果が出てきました。その中で『現代用語の基礎知識』(自由国民社)に出ている「スパムメール/迷惑メール」の項目を見てみます。

「テレビのコメディー番組『Monty Python's Flying Circus』のなかで、レストランで注文をする夫婦がスパム(Spam 豚肉加工品の缶詰)と連呼されるため注文ができない場面から、本来の電子メールのやりとりが、必要でない電子メールが入ることにより邪魔をされる例えに、スパムメールとよばれている」

 そうすると缶詰のスパムのことも知りたくなります。ちなみに、ハムというのは、豚肉の加工品にしか使えない言葉だとみなさんご存知でしたか? 牛肉や鶏肉のハムは存在してはいけないのです。完全な間違いです。ちゃんと『ニッポニカ』にも出ています。

「豚肉の加工品。豚肉を塩漬(えんせき)(キュアリングcuringともいう)後、薫煙(くんえん)、湯煮(ゆに)したものをいう。ハムとは本来ブタのもも肉のことで、転じてその部分を塩漬け、薫煙などして加工したものを意味するようになった」

 このようにして、新しい知識を見せていく。そういう知識というか、ものを調べる技術の蓄積が、子どもたちにいま求められている“生きる力”、あるいはその“生きる力”を学んでいく場が、本当の総合的な学習の時間なのです。

 ジャパンナレッジに入っているコンテンツのほとんどはいままでも単体では存在していました。しかし、このワンルックという全部のコンテンツを総なめで検索できる機能、そして今後も増え続け、進化するコンテンツは過去に例がない。ジャパンナレッジは、図書館のレファレンサーのみならず、一般の人にとっても非常に有効なツールになっていきます、ぜったいに。