序 第二版
刊行にあたって

21世紀の今日、インターネットやテレビ・新聞・雑誌などを通じて、人類の歴史上これまでにない速度で新しい言葉が生まれ、広がり、使われるようになっています。また、人々を取り巻く社会情勢が急速に変化し、政治・経済に影響して制度・体制・組織・法律なども大きく変転しています。これらの推移を「辞書」の上で捉えるために大辞泉は2006年にデータベースを用いたデジタル編集システムを開発し、新語の追加、既存項目への加筆・修正を始めました。

本格的なデータ更新の開始とともに、『デジタル大辞泉』は電子辞書・ウェブ辞書・携帯電話向けの辞書として広く活用されるようになりました。さらに電子書籍端末に内蔵され、スマートフォンで使えるアプリケーションに進化し、今や日本に限らず世界中で利用される日本語辞書となっています。

今回、こうして蓄積した厖大なデータを『第二版』として結晶させます。

初版との大きな違いは「横組み」としたところです。第二版に収録する25万項目のうち約4万語の表記欄でアルファベットが使われています。また、解説には数式や化学式など、縦組みでは表すことのできない要素が数多くあります。これらを踏まえ、第二版では「横組み」を採用し、併せて文字の間隔を詰め、言葉の一覧性や視認性を高めて読みやすくしました。

――ヒッグス粒子は発見されたのか?――
現時点では未発見とされていますが、明日にでも存在が認められるかもしれません。辞典には時間が経過しても変化しない事柄と、経過とともに古くなる事柄とが混在しています。特に、自然科学・医学・時事用語などの専門語は不確定な要素を多く含んでいます。

書籍の場合、古くなった内容をすぐには修正できないという解決の困難な問題があります。『大辞泉第二版』では付属するDVDデータを更新することで、この難題を克服しようと考えました。2015年まで毎年、本文・画像・地図データの更新を行います。既存項目の修正に加え、新規項目を追加することで最終的には28万語を超える辞書データとなる予定です。これによって、ある時点までの情報の集積であった辞書が、より長い期間、最新の状態で利用できるようになります。

1995年に『大辞泉』を刊行して以来、多数の読者諸賢のご声援とご批正を賜りました。この場を借りて心より御礼を申し上げます。『大辞泉』はこの第二版において書籍とデジタルの融合・発展を目指す新しい試みに取り組みます。この試みが読者の皆様に受け入れられ、これまで以上に活用される辞典になることを祈念してやみません。

2012年9月
小学館 大辞泉編集部

序 第一版
『大辞泉』の刊行にあたって

一口に国語または日本語といっても、それはなかなか複雑な様相をもっている。現代の日本語についてみても、いろいろ相違した面をもつ言葉が含まれている。まず、地方地方でそれぞれ異なった言葉が行われている。このような土地によって異なった言葉は方言といわれる。日本語にはきわめて多くの方言がある。また、職業や階層の相違、あるいは男女や老幼の差などによっても、それぞれ特色のある言葉が行われている。このような、地域または階層によって異なる言語に対して、全国共通に、かつあらゆる階層を通じて行われているものとして、いわゆる共通語がある。これらは実際の談話に用いられる言語、すなわち話し言葉における言語の種々相である。

これに対して、主として文章に用いられる言語、すなわち書き言葉には、また、話し言葉とは異なったものが行われている。最も普通には、現代の共通語式の話し言葉にもとづいている口語文と、もっぱら文字に書く場合の言語として前代から伝えられた特殊な言葉である文語文とがある。その文語文にも、明治以後実用文として一般に用いられるようになった普通文、書簡文としての候文や、江戸時代およびそれ以前の文章である古文など、種々の文体のものがある。

このように、現代の国語には、いろいろの言葉が行われている。そして、これらの言語は、それぞれに、何らかの意味で、前の時代から行われてきた言葉にもとづいている。そして、さらに、現代以前の国語にも、それぞれの時代や時期において、これまた、多様な言語が複雑な相をなして行われているのである。このように、一口に国語または日本語といっても、その姿はなかなか複雑であり、過去の国語と現代の国語とでは、いろいろの相違が見られる。つまり、言語は時とともに移り変わるものであって、時代により複雑な相をなしつつ、さまざまに変遷してきているのである。

本書は、このような複雑な様相をもっている国語についての基本的な辞典である。それは、現代語を中心にして、上代から近世に至る古語をはじめ、人名・地名などの固有名詞や各種分野の専門用語など、多くの百科語をも含めた総合的な国語辞典である。一般の国語語彙に関しては、まず現代語を中心にして、その語義・用法などをできるだけ細かに記述し、それを基にして、現代語の基盤になっている、古い時代から今日までの各時代・各時期における主要な語の語義・用法の変遷に関する歴史的な記述を必要に応じて加えていくようにした。また、百科語に関しては、現代生活に必要な項目に重点を置き、できるだけ新しい知識を簡潔に記述するように努めた。

このように、本書は現代語を中心とする辞典であるから、現代語に関しては特にていねいに扱い、その語義・用法などはなるべく細かに記述するようにした。ただ語義・用法を記述するだけでなく、現代語においても多くの適切な用例を添えて、その語が実際にどのように使われるかが理解できるように配慮した。その用例は、原則として作例をもって示したが、やや古風な語義・用法については出典付きの文例を掲出することにした。

現代語を中心とした国語辞典といっても、現代語の範囲は広く、老人から若い人まで、その言葉の使い方や理解のしかたには相当の差異が見られる。語義や用法の細かな記述だけでなく、基本的な語については、類似の言葉の使い分けの実態を理解してもらうことも必要と思われる。そのような見地から、本書においては、日本語の表現に役立つように、編集上の新しい工夫をいろいろ加えるようにした。日本語の表現に役立つような国語辞典ということをも目指しているのである。

筆者が本書の編集を委嘱されてから今日まで、ほぼ30年に近い歳月が経過しようとしている。辞書の編集にある程度の時間がかかることは已むを得ないにしても、これほど多くの年月がかかろうとは当時としては思ってもみないことであった。振り返ってみれば、コンピューターによる組版・製版と多色印刷というようなすべて新しい試みの導入など、編集作業をめぐってはいろいろのことがあり、そのために余計多くの時間がかかってしまったのであるが、各界・各方面の多くの方々からの御協力・御援助を得て、ようやくここに完成をみるに至ったのである。

この間、国語関係の諸項目をはじめ、固有名詞や各種分野の専門用語など、多くの百科項目に関しては、原稿の執筆・校閲・整理等のことにつき、いろいろと御協力・御援助をいただいた。これら多くの方々に対しては、深く感謝を表する次第である。また、本書の編集委員・編集協力者の各位や、小学館と『大辞泉』編集部の方々の御努力・御協力にも敬意を表するものである。

この辞書が、広く利用され、読者諸賢の叱正を仰ぎつつ、さらに成長していくことを願ってやまない。

1995年8月
松村明
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