武部善人 著
博学・明晰をもって聞えた江戸時代を代表する儒学者。激動する社会経済の実態を見すえ、経済学を「経世済民」の学問と位置づけたその経済理論は、世界にも通用する先進性をもち、師の荻生徂徠を超えるものがあった。誰憚ることのない直言と、多くの門人を育てた謹厳実直な生涯を、「春台学」の系譜と学問的評価、逸話を交えて描く本格的伝記。
[江戸][学者]
鈴木暎一 著
水戸藩主徳川斉昭の腹心にして代表的水戸学者。藩政改革と国家の独立維持に尽瘁する東湖の言動は、生前から全国の有識者視聴の的であり、『弘道館記述義』『回天詩史』「正気歌」などの著作は、幕末期のみならず、近代の人心にまで多大な影響を及ぼす。幽囚8年、しかも安政の大地震で劇的な死をとげる熱血漢波瀾の生涯を生き生きと描く本格的伝記。
[江戸][学者|武人・軍人]
田口親 著
明治のエコノミスト・政治家・起業家・歴史家。幕臣の家に生まれ維新後の逆境の中で新しい学問と出会い、近代日本建設のため自由貿易主義を掲げ独自の文明史論を展開する。『東京経済雑誌』の創刊、鉄道会社の経営、南洋開発、東京市府会議員・衆議院議員、税制・幣制改革、『国史大系』の編纂刊行等、前人未到の足跡を残した快男児50年の生涯。
[明治][学者|政治家]
後藤昭雄 著
平安中期の文人官僚。学問の家に生まれ、大学寮に学んだ後、歌人・赤染衛門(あかぞめえもん)と結婚する。詩文の才に秀で、優れた漢詩文を制作、詩集『江吏部集(ごうりほうしゆう)』が伝わる。文章(もんじよう)博士、一条天皇の侍読(じどく)などを歴任して、藤原道長とも緊密な関係を築き、晩年は尾張(おわり)・丹波(たんば)の国守を務める。平安朝における正統な文学〝漢詩文〞の世界に、大きな足跡を残した生涯を描く。
[平安][学者|文化人|官人]
菊池勇夫 著
江戸後期の歌人・国学者。三河に生まれ、賀茂真淵(かものまぶち)の門人・植田義方(よしえ)などに学ぶ。30歳頃から生涯を通じて信越・奥羽・蝦夷地の各地を巡歴。幅広い関心のもと、和歌のほか、日記・地誌・随筆・図絵を大量に残し、当時の北日本の庶民生活を知る上で貴重な資料となった。民俗学の父・柳田国男に「遊歴文人」と称された、その旅に明け暮れた生涯を描く。
[江戸][学者|文化人]
沢井実 著
テレビ受像用として知られる「八木・宇田アンテナ」を発明した電気通信工学者。海外で高い評価を博した指向性アンテナ技術が、太平洋戦争で敵国兵器に利用されたため、戦時には科学技術を動員する中核的立場におかれる。戦後は、教育者・国会議員として幅広く活躍。明治以来の国家的課題「後発工業国日本の近代化」に挑んだ一科学技術者の生涯。
[大正|昭和][学者]