(こっけいぼん)
式亭三馬
式亭三馬が綿密に描写する、江戸の庶民生活の生態とおかしみ
滑稽本とは、江戸後期に現れた滑稽を目的とした戯作のことで、十返舎一九(じっぺんしゃいっく)の『東海道中膝栗毛(ひざくりげ)』(1802年)以降、式亭三馬(しきていさんば)を中心に全盛期を迎えた。三馬の滑稽本の処女作『酩酊気質(なまえいかたぎ)』と、社交場であった髪結床(かみゆいどこ)に集まる庶民の様子を描く『浮世床』の2編をおさめる。
[江戸時代後期][戯作]
《校注・訳者/注解》 神保五彌
(にんじょうぼん)
為永春水
女性の間で大人気となった、為永春水の泣ける恋愛小説
人情本は、江戸の市民社会の恋愛(三角関係や情痴的恋愛)や人情の葛藤を、写実的に描写した恋愛小説で、多くの読者は婦女子であった。文政期(1818~30年)におこり、明治初期まで人気を博した。書型から「中本(ちゅうほん)」、内容から「泣本(なきほん)」とも称された。人情本の第一人者、為永春水(ためながしゅんすい)の『春告鳥(はるつげどり)』(歌川国直(くになお)画)をおさめる。
[江戸時代後期(1836年成立)][戯作]
《校注・訳者/注解》 前田 愛
(とうかいどうちゅうひざくりげ)
十返舎一九
滑稽本の傑作――十返舎一九による弥次・喜多コンビの珍道中
十返舎一九(じっぺんしゃいっく)による滑稽本の傑作。栃面屋弥次郎兵衛(とちめんややじろべえ)と居候の喜多八(きたはち)の江戸から伊勢、京、大坂にいたる旅をユーモラスに描いた道中記形式の物語。初編の「道中膝栗毛発端 全」から「膝栗毛八編」まで、八編18冊を収録。その後、弥次・喜多コンビの続編が21年間にわたって刊行され続けた。
[江戸時代後期(1802~09年成立)][戯作]
《校注・訳者/注解》 中村幸彦
(きんせせつびしょうねんろく)
曲亭(滝沢)馬琴
毛利元就・陶晴賢らを描く、執筆20年におよぶ馬琴読本の大作
主君・大内義隆を殺し、毛利元就(もとなり)に滅ぼされた陶晴賢(すえはるかた)の史実を題材にした。悪美少年・末珠之介(あけのすけ)晴賢(モデル晴賢)の生い立ちと善美少年・大江杜四郎(もりしろう)成勝(モデル元就)との対立を中心にした勧善懲悪小説。中国・白話(はくわ)小説『檮杌間評(とうごつかんびょう)』に構想を借りた、曲亭(滝沢)馬琴の執筆20年の読本の大作だが、未完に終わる。
[江戸時代後期(1829~32年成立)][戯作]
《校注・訳者/注解》 徳田 武