使用済み核燃料や汚染土壌などの放射性廃棄物を、再利用するまで、または最終処分するまでの一定期間、保管しておくための施設。日本では主として2011年(平成23)3月の東北地方太平洋沖地震により発生した東京電力福島第一原子力発電所事故で、福島県内に放出された放射性物質に汚染された土や廃棄物を最長30年間、管理・保管する施設をさす。施設の建設および維持管理は国が責任を負う。2014年に福島県が中間貯蔵施設の受入れを表明し、福島第一原発周辺の同県大熊(おおくま)町と双葉(ふたば)町にまたがる1600ヘクタールの用地に建設することが決まった。総事業は1兆円規模である。国は2015年2月に施設建設予定地内に除染土壌等を保管する保管場(ストックヤード)の工事に着手し、中間貯蔵施設については2017年内の稼動を目ざす。国は2045年3月を保管期限とし、福島県外につくる最終処分場へ移すことになっている。なお原子力発電所で発電に使った核燃料のごみを管理する施設は「高レベル放射性廃棄物施設」とよび区別している。
2012年1月に全面施行した放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、除染で取り除いた土壌、がれき、草木、落ち葉・枝、道路側溝の泥などのほか、1キログラム当り10万ベクレルを超える高濃度放射性物質を含む焼却灰や下水汚泥なども貯蔵する。環境省の試算では、福島県内で発生する汚染土壌や廃棄物は1500万~2800万立方メートルになる見込みで、中間貯蔵施設は最大2200万立方メートルの貯蔵能力をもつ。国は安全に管理するため、汚染土を保管する土壌貯蔵施設、放射性物質をその濃度や可燃・不燃などによって分別管理する施設、除染作業で発生したごみを焼却する仮設施設の3種類を整備する。1キログラム当り10万ベクレルを超える廃棄物は鉄筋コンクリート壁で固めた施設に搬入し、雨水を防ぐ屋根をつけ、貯蔵容器(専用ドラム缶等)に入れて保管する。1キログラム当り8000ベクレルを超える土壌等は、保存施設の上部や周囲に遮水シートと覆土を用いて飛散・流出を防止する。草木や汚泥などは容積を小さくするため、焼却して灰にしたうえで貯蔵する。施設周辺の大気や地下水の放射線量は常時、モニタリング装置で監視する。
しかし国の用地取得は2016年7月時点で全体の5%弱にとどまっており、中間貯蔵施設が国の計画通り稼動するかどうかは不透明である。また中間貯蔵施設が事実上、半永久的な保管場所になるのではないかとの疑念が福島県内では強い。
[矢野 武]