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身(み)と蓋(ふた)からなる土製の棺。おもに古墳時代後期、6世紀中葉から後半に盛期がある。一般に、焼成の温度差、したがって色調、硬度などの相違によって二大別される。すなわち赤褐色を呈する土師(はじ)質陶棺と、灰黒色の須恵(すえ)質陶棺とに分かれ、形態的にはなお3種ある。まず亀甲(きっこう)形陶棺は、身の両端が丸く、蓋も丸みをもち、身、蓋とも縦横に突帯が走り、蓋には小筒状の突起がついて、一見亀甲に似る。ついで、切妻(きりづま)式家形陶棺は長方形の身に切妻式の屋根蓋がのるもので、また、四注(しちゅう)式家形陶棺は四注造りの屋根蓋に特徴がある。いずれも身の底部には、中空円筒状の脚が長辺に平行して、二ないし三列取りつく。大形のものは、長辺約2メートル、幅1メートル弱、高さ1メートル程度。分布は、山口、大分を西限に、東が群馬、福島に限られ、とりわけ岡山県東部および兵庫県西端部に濃密で、近畿各県がこれに次ぐ。岡山県本坊山(ほんぼうざん)古墳の須恵質陶棺や同下一色(しもいっしき)2号墳の土師質陶棺などは、瓦当文(がとうもん)を加飾した例として知られ、使用の下限が7世紀後半~8世紀にあることを裏づけている。