年金保険制度において、被保険者が一定程度以上の障害を事由に支給される年金で、国民年金から支給される全国民共通の障害基礎年金と、厚生年金保険から支給される障害厚生年金・障害手当金がある。
障害基礎年金は、障害の原因になった傷病の初診日前に保険料納付済期間と保険料免除期間が加入期間の3分の2以上あり、障害認定日に障害等級の1級または2級の状態に該当する場合に支給される。障害認定日は、初診日から1年6か月を経過した日またはその間に治った日である。「治った」とは、症状が固定し、医学上それ以上の治療効果が期待できない状態に至ったことをさす。障害認定日において該当しなかった場合でも、65歳前に該当する障害の状態になったとき(事後重症)には、本人の請求により障害基礎年金が支給される。初診日に20歳未満であった者には、障害の状態にあって20歳に達したとき、または20歳に達した後に障害の状態になったときから、本人の所得に応じた所得制限を条件に障害基礎年金が支給される。
年金額(年額、2023年度)は、1級の障害基礎年金が99万3750円、2級の障害基礎年金が老齢基礎年金と同額の79万5000円で、1級は2級の25%増である。18歳到達年度の末日までの子または20歳未満であって1級・2級の障害の状態にある子があるときは、第1子と第2子には1人につき22万8700円、第3子以降は1人につき7万6200円が加算される。
障害厚生年金は、厚生年金の被保険者期間中に初診日のある傷病が原因で、障害基礎年金に該当する障害(1級・2級)が生じたとき、障害基礎年金に上乗せして支給される。障害基礎年金に該当しない障害であっても、厚生年金の障害等級に該当するときは、3級の障害厚生年金または一時金として障害手当金が支給される。障害厚生年金の支給要件である保険料納付済期間等の要件、障害認定日、事後重症の扱いは、障害基礎年金と同一である。
障害手当金は、厚生年金の被保険者期間中に初診日のある傷病が初診日から5年以内に治り、一定の障害の状態にある場合に支給される。障害手当金の保険料納付済期間などの要件も障害基礎年金と同一である。
年金額(年額)は、2級が報酬比例の年金額(被保険者期間中の平均標準報酬月額×支給乗率×被保険者期間月数)で、1級は2級の25%増、1級と2級には配偶者の加給年金が加算されるが、3級は報酬比例の年金額のみで配偶者の加給年金はつかない。また、子の加算は、障害基礎年金につくので、障害厚生年金にはつかない。障害手当金は報酬比例の年金額の2年分である(最低保証額が設定されている)。平均標準報酬月額は、在職時の標準報酬月額に再評価率を乗じて算出する。また、被保険者期間中などに死亡した場合で、被保険者期間の月数が300月に満たないときは300月として計算し、遺族厚生年金として支給される。
1級と2級は国民年金および厚生年金に共通する。1級は、他人の介助を受けなければ日常生活のほとんどができないほどの障害の状態。2級は、かならずしも他人の介助を受ける必要はなくても、日常生活に著しい不自由があり、労働によって収入を得ることができないほどの障害の状態。3級は、日常生活にはほとんど支障はないが、労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを要する程度の障害の状態である。障害手当金は、3級の障害よりやや程度の軽い障害が残った状態の者に支給される。なお、障害年金における障害の等級は、身体障害者手帳の等級とは異なる。
すべての国民に公的年金制度への加入が義務づけられ、国民皆年金体制にある日本において、年金を受給できない無年金者が存在する。基本的には加入を怠った本人の責任によるものであるが、過去においては制度上の不備から発生した障害無年金の問題があった。そのなかで、国民年金の任意加入であった、1991年(平成3)3月以前に学生であった者または1986年(昭和61)3月以前に被用者の配偶者であった者で、任意加入していなかった時期に初診日があり、1級または2級の状態にある者には、2004年(平成16)の特別障害給付金法(特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律)により、本人の所得による支給制限を条件として、全額国庫負担により給付金が支給されている。支給額(月額、2023年度)は、1級5万3650円、2級4万2920円である。
しかし、1982年1月1日時点で20歳を超えていた在日外国人障害者および1986年時点で60歳を超えていた在日外国人高齢者は、当時国民年金加入の対象でなかったために、現在でも無年金障害者・無年金高齢者として取り残されている。在日外国人については、日本が1981年に難民条約を批准し、1981年12月31日に国民年金法の国籍要件が撤廃されたことにより問題の一部は解消したが、彼らが無年金のまま取り残されているという状況にあるのは、特別障害給付金法のような経過措置を行わなかった制度不備により残されている問題である。