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小札(こざね)をつづり合わせてつくった防御具。その起源はオリエントにあると推定される。中国では、戦国時代以降に発達し、5世紀中葉には、騎馬の術とともに朝鮮を経て日本に伝わっていた。小札はまれに金銅装(こんどうそう)のものもあるが、ほとんどの例が鉄製である。挂甲一領を構成する小札には、たとえば、腰の部分には、特徴的な湾曲を示す細長い小札を用いているというように、長さや幅などにいくつかの種類があった。挂甲の場合、通常、胴部と草摺(くさずり)を一連につくっているが、小札をつなぐのに革紐(かわひも)や組緒(くみお)を用いているため、短甲に比べて動きやすい。付属具には、襟(えり)、肩甲(かたよろい)、籠手(こて)、臑当(すねあて)などがあり、騎兵用の武具であった。挂甲の完全な姿を知りうる例は非常に少ないが、6~7世紀の武人埴輪(はにわ)により、その着装状態をうかがうことができる。6世紀以降、短甲にかわって防御具の主流となった。ちなみに、『東大寺献物帳(けんもつちょう)』に記載されている「御甲壹佰具」のうちの90具は挂甲である。古墳時代の挂甲から、正倉院に伝わる挂甲を経て、平安時代の大鎧(おおよろい)へと変化した。