規格外、商品の入替えなどの理由で、品質上の問題はないのに廃棄されている食品を引き取り、生活困窮者や福祉施設などへ無償で提供する活動、およびその団体。食品メーカーや流通・小売業者から寄付された余剰食品を一時的にストックし、必要なところへ配分することから、食品の銀行(フードバンク)とよばれる。
農林水産省がまとめた「平成21年度食品ロス統計調査」によると、日本で1年間に発生する食品由来の廃棄物約1800万トンのうち、食べられるにもかかわらず廃棄されている食品ロスは、年間500万~800万トンに上ると推計されている。これらには品質とは関係がない、ラベルの印字ミスやパッケージの汚れ、消費期限が近い食品などが含まれる。発生元でロスの抑制に努めつつ、そのうえで生じた廃棄物もなるべく有効利用する取組みの一環として、フードバンク活動が注目されることとなった。2015年(平成27)4月に始まった生活困窮者自立支援制度では、生活に困った人が相談できる窓口の設置が自治体に義務づけられた。これをきっかけにフードバンクと自治体が連携し、食糧を支援する活動が全国的に広がった。フードバンク団体は2014年には全国で39団体であったが、2016年9月時点では60団体に拡大している。
フードバンクの活動がすでに40年以上となるアメリカでは、提供された食品だけでは食事の栄養が偏るため、肉や牛乳などを購入・配布し、食品ロスの削減と食糧支援を両立させた活動を展開している。食べ物に困った人がだれでも食品提供を受けられる場所が数多くつくられており、ニューヨークには1200か所あまりの提供窓口がある。
日本では2002年に国内初のフードバンク団体が設立された。その後、2015年11月に全国各地で活動を展開する団体によって全国フードバンク推進協議会(本部事務所は山梨県南アルプス市)が設立された。2017年2月時点では19団体が参加しており、共通のガイドラインに署名し、流通や食品衛生に関する情報共有を進める一方、資金面や人材養成に関し行政や自治体への働きかけなどを行っている。
[編集部]