日本大百科全書(ニッポニカ)

誘導加熱
ゆうどうかねつ

電磁誘導によって電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、加熱する方法。原理的には、変圧器の二次コイルのかわりに被加熱材料を用い、電磁誘導により誘導された二次電流が被加熱材料を流れる場合に発生するジュール熱を利用する。被加熱材料は金属、カーボン(炭素)などの導電体とか、シリコン(ケイ素)、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム(ガリウムヒ素)、溶融シリカなどの半導体が対象となる。非導体の場合は導電体の容器内に被加熱材料を入れて加熱する間接誘導加熱が用いられ、化学反応炉などに応用されている。
 誘導加熱が工業に利用されるようになった20世紀の初めには、金属の溶解、焼入れが主であったが、最近では製鉄ラインなどで熱処理を行う目的にも利用され、省エネルギーの観点から、重油、ガスなどの燃焼炉も誘導加熱を用いるものが現れている。誘導加熱を用いた炉には、貴金属、鉄、銅、黄銅、アルミニウムなどの溶融に利用するるつぼ型炉と、金属の溶湯を目的とした溝型溶解炉がある。前者には目的に応じて低周波から高周波までの広い範囲の周波数が選ばれ、最大10メガワットで60トンを処理できるものもある。後者には銅、亜鉛などを対象に、商用周波数を用い数千キロワットで200トンの処理能力のあるものまでつくられており、溶湯が均一に加熱できる利点がある。このほか熱処理用加熱装置、焼入れ機、溶接機、ろう付け装置、ゲルマニウム、シリコンなどの半導体のゾーンメルティング(帯域溶融)装置、化学反応炉、石英加工装置などが用いられている。
 誘導加熱は被加熱材料が直接加熱されるので加熱効率が高く、きわめて高い温度まで加熱でき、急速加熱が可能である。また、燃料を使わない間接加熱法なので、非接触の加熱や局所加熱もできる。さらに溶解炉では溶湯が攪拌(かくはん)されるので、均一性が高く、温度制御も容易に迅速に行えるなどの長所がある。ただし、被加熱材料により周波数が決まるので、装置が高価になり、被加熱物体が大きかったり、複雑な場合は、均一な加熱が困難で、一般にエネルギーコストが高いなどの欠点がある。
[岩田倫典]