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木星の第1衛星。1610年にガリレイが発見した木星の四大衛星の一つであり、もっとも内側を回っている。木星からの平均距離は42万2000キロメートル、公転周期は1.7691日。直径は3640キロメートルで、地球の衛星である月よりもわずかに大きく、密度は3.5でこれも月に近い。月と同様におもに岩石からなる天体と思われる。地球から見た明るさは約6等星であり、小望遠鏡でごく小さな円形に見えるが、表面の地形などは大望遠鏡でもよく見えない。
1979年3月、アメリカの探査機ボイジャー1号がイオに2万5000キロメートルまで接近して観測したが、その結果、イオの表面に少なくとも8か所の大火山が噴煙をあげているのを発見した。噴煙は表面から200キロメートル以上の高さに達していた。これらの火山は1979年7月のボイジャー2号でも確かめられたが、大量の硫黄(いおう)を噴き出しており、表面には一面に硫黄や塩類が堆積(たいせき)して赤黄色を呈している。地球以外の天体で活火山が確認されたのはこれが最初である。このような小天体に激しい火山活動をおこす熱源があるのは不思議とされたが、木星の強大な潮汐(ちょうせき)力でイオが変形を繰り返すことがその原因という説が有力である。
なお、火山の発見以前から、イオの上層にはイオン層の存在が認められたり、また軌道の周辺には希薄なナトリウムの帯が観測されていた。木星からの電波にイオの公転周期に連動する周期性のあることも知られていたが、それらの現象はすべて火山活動によって供給されるガス雲に関連することがわかった。
[村山定男]