全都道府県(京都市含む)共通の凡例

  1. 日本歴史地名大系は「刊行のことば」に記した趣旨により、日本全国の大小さまざまな地名を項目として取上げ、その地を舞台として展開された地域の歴史・文化・生活等を克明に書き起こすことを目指した。本大系の「歴史地名」とは、古代から現代に至る各時代の行政地名はもとより、広範な人文地名や自然地名を含む。また考古遺跡・城館跡・寺院・神社などの歴史的建造物や遺構も、広い意味で歴史地名に準ずるものとして扱った。さらに失われ、埋もれてしまった地名を史資料と調査によって復元することは、本大系の使命の一つである。
  2. 歴史地名の解説とは、土地に根ざした歴史を明らかにすることであり、それぞれの土地と史資料とに通暁した研究者の協力が不可欠である。そのため本大系は都道府県ごとに、主として在地の信頼される専門研究者に委嘱して編集委員会を組織し、その下で現地調査、史資料の発掘、項目表の作成、総合的検討など、項目の選定から構成、執筆までの作業を責任をもって進めていただくこととした。在地精神は本大系の編集方針の基軸である。
  3. 郷土で営まれた人々の生活、土地を舞台とした歴史事象は、多種多様な内容を包摂する。したがって、一つの地名の解説といえども、歴史学をはじめ考古学・民俗学・国文学・地理学等々の研究を総合しなければならぬことが多い。本大系はこの姿勢の下に、基本的史資料・文献はもとより、古典・地誌・紀行・日記・調査報告や、容易には見ることのできない全国各地の地方(じかた)文書、土地の口碑伝承も紹介した。事実・事象の記述には根拠とする史資料名等を明示し、さらに深い知識を得んとする場合の手掛りとした。なお、本大系は明治以降の研究成果に負うところが大きいが、近現代の著作・論文名、著者名等を典拠としてあげることは、多岐にわたるので割愛した。
  4. 項目の配列は地域ごとに行った。すなわち、大項目(書籍刊行時の郡・市・区名)と中項目(同じく町・村名、項目数の多い地域の地域区分名、中世・近世の都市名)を立て、これらの大・中項目ごとにそれぞれの範囲内にある多数の地名(小項目)をまとめた。さらに各市・区・町・村内における小項目は、各項目の歴史的背景等を勘案しつつ地域ごとに配列した。これは一つ一つの地名が独自の歴史内容をもつと同時に、近隣諸地名が相互に深くかかわって存在することの意味を重視したからである。「前項目」「次項目」の活用で、書籍版が企図した、読み進むにつれ次々と地域の歴史的全体像が明らかになるような通読性を確保、また各項目を階層付にしたことで、「子項目」「関連項目」等からも目的の項目にたどりつくことができ、書籍版以上の一覧性を実現した。なお、各県の総論や国項目をはじめ長文となる項目には適宜見出し(中見出し・小見出し等)を付したが、各々の見出し(目次)は項目に準じた扱いとし、表示も見出しごととした。
  5. 本大系は各都道府県ごとの区分を設けた(京都府のみ「京都府の地名」「京都市の地名」の2巻からなる書籍版を踏襲し、京都府・京都市に小別した)。各県(都道府)の冒頭に置く総論では、各々の自然地理的条件と、そこにはぐくまれた歴史的風土等を概観した。また全県的規模をもつ広域の山・川・海・湖・道などの項目を付して、県域の全体像を明らかにする一助とした。国の項目では、古代から廃藩置県に至る全過程を、政治・社会・経済・交通・文化等を中心に概説し、江戸時代の各藩の特徴ある諸制度等にも触れた。また古代~近代に設けられ、現在は地理的区分名称としても消滅した郡や古代の郷の項目を付し、その変遷を解説した。現在の郡・市(区)・町・村の項目では、当該地域の現代に至る歴史を概説し、特記すべき民俗や事件などにも言及した。また郡・市(区)・町・村域全体にかかわる項目を付した。近世の郡・村から現在の市(区)町村に至る行政変遷は、近世の石高一覧等をも加えて、「行政区画変遷・石高一覧」(PDF形式)として収めた。なお、ここでいう「現在」とは、書籍刊行時における現在である。書籍版各巻の刊行年次については「刊行年月日一覧」を参照されたい。また書籍版刊行後に誕生した郡・市・区・町・村名については「変更地名」として表示した。いわゆる「平成の大合併」を含む市町村合併についても2016年10月10日までに誕生した新しい市区町村名をすべて検索できるようにした。
  6. 近世後期には、全国に約6万5千の村々が存在した。その村名の多くは今日まで、大字(おおあざ)名・町名として残っている。本大系はこの近世村が基本的な行政単位として分布していた事実に基づき、これを過去と現在をつなぐ最小の地域項目として、全国一律に採用した。項目名は、全国の村名を網羅する天保郷帳を一応の基準とし、地域によってはより妥当と思われる史料によって修正することを原則とした。記述は、立地環境を述べ、次いで村の生活、支配の関係、その他特記すべき歴史事象を解説した。また地域項目としての立場から、さかのぼりうる近世以前の様子や、明治以後の近代化過程での地域の事象なども記述の対象とした。さらに、先述した地域的な項目配列に従って、旧村域の範囲にある他の歴史地名項目を、この村名項目の次に配列した。
  7. 城下町・門前町・宿場町・在郷町・湊町など近世の都市は特徴ある性格・機能・歴史を有するが、近代都市の形成にあたりその核となった例が多く、現在と過去をつなぐ重要な地名である。本大系ではこれを地域項目(中・近世都市項目)として、その成立・規模・町割・支配・町の様子・産業・交通・民俗などの歴史を記述した。さらに都市内の主要町名を立項して解説した。
  8. 本大系はたとえば次のようなさまざまな歴史地名を収載して解説する。
    【自然】
    山・峰・丘・台・峠・坂・平・川・谷・沢・滝・淵・瀬・河原・湖・沼・泉・清水・井戸・野・原・平野・森・林・狩場・漁場・島・瀬戸・岬・浦・浜・磯・入江・湾・灘・潟・岩・石・洞穴
    【遺跡】
    先土器(旧石器)・縄文・弥生・古墳・陵墓・墓所(墓碑)・塚・離宮・官公庁・城・塁・古戦場・館・邸・屋敷・重要人物の生家・陣営・刑場
    【交通と産業】
    道・駅・関・宿・御茶屋・津・泊・湊・港・橋・渡し・堀・溝・用水・堰・堤・溜池・貯水池・市・屯倉・御厨・牧・御園・庄園・郷・保・名・新田・開拓地・鉱山・遊里
    【文化】
    寺・社・霊場・祭場・札所・御旅所・庭園・堂塔・庵・学堂
    これらのうち、自然地名や神社・寺院等で現在の呼称と古名が異なる場合は、原則として現在名で立項した。これらは跡地を含め、まず現在地の比定、名称の異記・別名・古名・通称等に触れ、続いて各々に応じて歴史的文化的事象を記述した。
  9. 本大系は民俗的事象・文化的事象を直接項目とはしないが、土地特有の生活・生業・社会伝承や人生儀礼、自然や遺跡などに関する伝承や信仰は、その土地の人々の生活や思考、文化などの具体的なあらわれであり、該当項目での記述対象とした。また歌枕や、説話・物語などに登場する地名は、立項するか関係の深い項目で詩歌や作品を引用・紹介し、地名と人々の多様な営みとのかかわりを明らかにした。
  10. 近世の町名・村名では項目に続けて[現]として現在地名(書籍刊行時における現在地名。以下同)を記した。その他の項目も現所在地名を同様に記し、確定できない場合は文中でその旨を述べた。地名の読み方は、現在の行政地名は「国土行政区画総覧」(自治省振興課監修)に準拠し、実状に合せて修正を施した。他は最も普遍的と思われる読み方を採用した。各項目での初出地名等には、著名なものを除き、わかるかぎり振仮名を付したが、これは地名にとって読み方が重要な意味をもつ場合が多いからである。
  11. 史資料・文献の引用・紹介は、原文書のほか、活字本や流布するテキストを使用した。記紀や「万葉集」をはじめ、妥当な読下し文のあるものはこれを採用した。引用文は底本に忠実であることを原則としたが、読者の便を考慮し、読点・返点等を施したものもあり、不明・難読等の場合は必要に応じ、該当個所に括弧その他の方法で注記した。 は4字以上の欠損個所を表し、見せ消ちは 「但件河北御領帯院宣」 の形式で表示した。文書形式を採らない引用では、2行分ち書きは小字で1行下寄せとした。漢文の送仮名は下寄せ、返点は青色・上寄せで表示した。文書形式を採用した引用部分は、文字色を緑で表示している。この形式引用箇所は、画面表示における本文の字詰を書籍版(25字詰)と近い文字数に設定した場合に、よりよい再現性を示す。ただし、Web画面上での表示という制約等もあり、必ずしも書籍と同一の形状ではない。また2字以上の畳語・重語等については繰返し符号を用いずに表示した。なお、書籍版では一部例外を除き常用漢字・人名用漢字体のあるものはこれを使用し、万葉仮名・変体仮名・異体字・略字・合字なども原則として通行の仮名や正体の漢字に改めたが、JK版では検索の便などを考え、JIS漢字コード(JIS X 0208)に含まれる漢字については、その字体を採用した。ただし、見出し項目については、書籍で用いた漢字の字体を表示した。
  12. 引用・紹介史資料・文献のうち、たとえば「和(倭)名類聚抄(鈔)」を「和名抄」、「日本文徳天皇実録」を「文徳実録」、「日本国現報善悪霊異記」を「日本霊異記」とするなど、著名な略称を有する書物は略称を用いた。重要な地方史資料・文献については「文献解題」で解説し、また古代~近代の歴史用語のうち本大系を読むうえで基本となるものは「用語解説」に取上げた。なお「文献解題」「用語解説」ともに本文画面右列の「地図・資料」欄ならびに本棚(読書コーナー)の「県別閲覧」から閲覧できる。
  13. 各都道府県ともに当該地域における旧郡・区域と現郡市区町村域を対照する「旧郡界図」、およびおもな自然地名と道筋を示す「自然地名と道筋」の2図を収載した(PDF形式)。書籍版で特別付録とされた「輯製二十万分一図」は、明治17年、参謀本部陸軍部測量局(後の陸地測量部)によって着手され、同20年代前半に刊行されたもので、近世の様子を色濃く残す貴重な資料であり、本大系でも各都道府県別に収録した(PDF形式)。なお北海道は、明治20年内務省地理局によって刊行された「改正北海道全図」(50万分の1図)を採用した。
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