都道府県および京都市凡例

京都市の凡例

  1. 本大系は県(都道府)ごとに区分を設けたが、京都府域は京都府と京都市の2部立てとした。このため、京都市は他の諸県とは若干異なる構成をとった。すなわち、京都市は山城国のおよそ北半を占めるにすぎないため国名項目を設けず、総論及び全市的規模をもつ広域の山・川等の項目に続けて「平安京」「洛中・洛外」の項目をおき、京都市の歴史的全体像がつかめるようにした。現京都市域(書籍刊行時)に含まれる古代の郡・郷(「和名抄」記載の郡・郷)はそのあとに配列した。なお中世・近世の郷名は、地域との関連を考慮して配列した。
  2. 京都市は現在、11行政区からなる。そのうち上京区・中京区・下京区の大部分の地域は江戸時代の上京・下京の地にあたり、膨大な町数を有する。この3区では、地域区分として旧学区名を採用し、旧学区ごとに各種の小項目をまとめた。学区は明治初年の町組再編で設けられた「番組」が、幾度かの名称変更を経て昭和4年に小学校名を冠するようになったものである。小学校区であると同時に、地域における一種の行政・自治単位として機能した。昭和17年に学区制は廃されたが、現在も地域の単位としてまとまっている。
  3. 近世村・近世町の項目名は次の資料に基づいた。
    村名――元禄13年の山城国郷帳・享保14年の山城国高八郡村名帳(山口泰弘家文書)・天保5年の天保郷帳記載の村名を検討し、江戸時代後期の村の実態を最もよく把握しうる村名を採用した。
    町名――左京区・東山区・北区・上京区・中京区・下京区については、占出山町有文書の上古京拾弐組并枝町新町離町門前境内組々銘町名軒役付(文中では「上京軒役付帳」と省略)・下古京八組之分町代内分場所古町枝町并新町軒役分割帳(文中では「下京軒役分割帳」と略称)を基本とし、近世の地誌・絵図類、「京都坊目誌」(文中では「坊目誌」と省称)等を参照し、江戸時代後期の実態を最もよく反映する町名を採用した。ただし現行町名との関連から、明治初年の町名を項目名としたものも一部ある。また東山区・上京区には江戸時代、行政的には村方に属しながら実質的に町地化して多数の町名をもつ地域があり、それらは村名を立項するとともに、町名をも併せて立項した。町名項目の記述中、江戸時代の所属町組・軒役(「洛中・洛外」の項参照)は前記占出山町有文書を典拠とした。また祇園会の際に寄町が負担する「地ノ口米」(「洛中・洛外」の項参照)については「改訂近世祇園祭山鉾巡行史」(祇園祭山鉾連合会編)を典拠とした。
    伏見区の町名項目は「伏見大概記」「伏見鑑」「泰平俯見御役鑑」その他の地誌・絵図類によって立項した。江戸時代の所属町組もこれらによった。
  4. 東山区・上京区・中京区・下京区の町名変遷はおもに以下の地誌・絵図類によった。
    寛永14年洛中絵図・寛永18年以前平安城町並図・寛永以後万治以前京都全図・慶安5年平安城東西南北町並之図・寛永18年以前平安城東西南北町並之図・寛文12年洛中洛外大図・寛文後期洛中洛外之絵図・元禄末期洛中絵図・宝永2年洛中洛外絵図・京都絵図(宝暦2年・宝暦4年)・天明6年京都洛中洛外絵図・承応2年新改洛陽並洛外之図・京大絵図(貞享3年・元禄4年・元禄9年・宝永6年・正徳享保間・寛保初年)・天保2年改正京町絵図細見大成・貞享5年新板平安城並洛外之図・宝暦4年再版名所手引京図鑑綱目・慶応4年再版改正京町御絵図細見大成・明治9年京都区分一覧之図・寛文5年京雀・延宝6年京雀跡追・宝暦12年京町鑑
    なお上京区・中京区の町名変遷については、湯口誠一氏の洛中古町名総覧図によるところが大きかった。
  5. 北区・上京区・中京区・下京区・南区・右京区のうち、かつて平安京域であった町・村の項目では、平安京の何条・何坊・何保・何町の地に該当するかを記した。この比定作業は条坊復元の最新の研究成果によったが、特に津田菊太郎氏の平安京条坊割域投影図に負うところが大きかった。
  6. 近世の町名は、現在の町名と同一のものが多いが、この場合は項目名の下の[現]記載を省略した。これらの町の多くでは通り名表示による通称が用いられているので、「国土行政区画総覧」等によって通称を項目名の下に記した。
  7. 項目名の下に記す現在地名が複数の場合、地名の共通部分を最初に記し、〈 〉を用いて表記した。たとえば
    花園村(はなぞのむら)
    [現]左京区岩倉(いわくら)大鷺(おおさぎ)町・花園町・三宅(みやけ)町〉
    とあるときは、近世の花園村の現在地名が、正式には左京区の岩倉大鷺町と岩倉花園町と岩倉三宅町であることを意味する。また「町」を「まち」と読む場合のみ振仮名を付した。
  8. 京都の町にとって重要な「通り」項目は、できるだけその地域で立項した。上京・中京・下京の3区では、3区を通る南北通りは上京区、中京区・下京区を通るものは中京区で立項した。また「平安京」に主要な現通り名を記入した地図を収載した。なお同図は、地図・資料の「自然地名と道筋」から閲覧できる(PDF形式)。