図鑑 今昔ものがたり

学習図鑑の過去と今のおもしろトピックスを紹介します。毎月15日ころ更新予定。

第5回 ~図鑑に載っていたオモシロ広告~

2016-11-18

昔の図鑑を読んでいると、当時の本の広告が載っていることがあります。この広告が、時代を感じさせて実に味わい深いのです。思わず見入ってしまったのが、1956年(昭和31年)刊小学館の学習図鑑『植物』巻末に掲載された自社広告。


(図1)小学館の学習図鑑『植物の図鑑1刷』(1956年発行)


(図2)小学館の学習図鑑『植物の図鑑1刷』(1956年発行)

「先生もおほめになる小学館の学習書!!」

おほめになる・・・何とも素敵な表現です。(しかも「おほめ」が強調されております。)持っているだけで先生にほめられてしまう学習書。これは欲しいぞ!


(図3)小学館の学習図鑑『植物の図鑑1刷』(1956年発行)

そして目を移すと「今すぐ書店へ!!」と、嬉しいことが書いてあるではないですか。どの町にも必ずといって良いほどあった、身近な「町の小さな本屋さん」を感じてしまうのは私だけでしょうか。よくお小遣いをもって、学校から帰るなり近所の本屋さんにマンガを買いに行ったなあ・・・。今も地元で頑張っている本屋さんは少なくありません。町の書店は知識のワンダーランド。皆さんも今すぐ書店へ!!


(図4)植物の図鑑昭和31年1刷

そしてそして、下段には懐かしい学年誌の数々。『小学六年生』まで揃っています。『中学生の友』や『女学生の友』なども出していたのですね。なぜか「毎月2日ごろより」の発売日(今の幼児雑誌、学年誌は、毎月1日発売です)。この中途半端な発売日は一体・・・。さらに高校進学雑誌『中学生活』なども出していたのがわかります。「最高権威の学力検査対策指導雑誌」とあり、なかなかすごそうな雑誌です。こちらは毎月11日ごろ発売。そしてよく見ると、ここでも「先生もおほめになるすてきな雑誌!」・・・。

今度は、1971年(昭和46年)刊・小学館の学習図鑑『音楽の図鑑』巻末の自社広告を見てみましょう。


(図5)小学館の学習図鑑『音楽の図鑑15刷』(1971年発行)


(図6)『音楽の図鑑』表紙

ここには、一世を風靡した「小学館の学習図鑑シリーズ」全28巻の自社広告が掲載されています。「お子さまが科学的に物を見、考える態度や能力を養う!」・・・今でしたら、「お子さまの理系脳を育てる!」といったあたりでしょうか。「考える態度」というフレーズは、なかなか素敵です。
そしてよく見ますと、全28巻のラインナップが今の時代とかなり異なります。『植物の図鑑』『昆虫の図鑑』などは現代でも同様に出版されていますが、前出の『音楽の図鑑』『保健と人体の図鑑』『美術の図鑑』さらには『家庭科の図鑑』『体育とスポーツの図鑑』などなど。こんなものまで図鑑になってしまうんだ、と目から鱗の思いです。
この時代は、なんと1巻で300万部も売れた図鑑もあったとききます。そのような時代背景もあって、編集者たちも自由に(?)新しいジャンルの図鑑に挑戦していったのでしょうね。
不況といわれている現代の出版界ではありますが、私たちも先人に見習い、果敢にさまざまな挑戦をしなければと改めて感じた次第であります。

<引用文献>
『小学館の学習図鑑 ① 植物の図鑑』(本田正次 牧野晩成 監修1956年)
『小学館の学習図鑑 ㉖ 音楽の図鑑』(浜野政雄 山田浅蔵 百瀬三郎 著 第15刷 1971年)