会田倉吉 著
幕末より明治へ。──日本の近代化への脱皮の時にあたり、新時代の担い手となるべき人材と独立市民の育成に献身し、西洋事情・学問のすすめ・文明論之概略等々、めざましい著述活動によって広く西欧文明を紹介し、一世に甚大な感化影響を与えた偉大な先覚者・大教育者の生涯とその事績を、広範な資料にもとづいて最も精確に描いた。
[江戸|明治][思想家|教育家|武人・軍人]
岩城之徳 著
啄木研究の第一人者が、博捜渉猟した資料を厳密に吟味し、従来の研究成果を集大成して解明した、最も新しく且つ正確な啄木伝である。明治45年、近代日本の天才歌人啄木は、27年の波瀾に富む薄幸の生涯を閉じたが、その啄木のかくれた側面にも照明をあて、魅力ある文章と、多くの写真とをもって、人となりと思想・芸術とを浮彫りにした。
[明治][文化人]
田中惣五郎 著
純朴で名利にこだわらず、愛情に豊かであり、生一本で太っ腹な自然児。まことに彼は変革の時代にふさわしい英雄として登場した。討幕維新の大業に軍事的主役を演じながら、やがて岩倉らの開明派と激しく対立して反動化し、賊名を負うて悠然西南に散華する。正に波瀾万丈の生涯というべく、本書はこれを描いて最も迫力に富む。
[江戸|明治][政治家|武人・軍人]
笠井清 著
生物学者・民俗学者南方熊楠は、和漢洋の学問を独学にて習得するとともに、その行動は奇行をもって知られる在野の英傑である。本書は豊富な資料を基に、南方を血の通った人間として、また日本のみならず世界の学問の水準を高めた学者としてとらえ、一代の行状を明らかにした。伝説化したその生涯を正し、真の南方熊楠伝の基礎をなす書である。
[明治|大正|昭和][学者]
塩田良平 著
明治文壇の明星。若くしてこの世を去った樋口一葉は、従来それが伝説化されがちであった。本書は30年にわたる実証主義的研究により、客観的観察を重んじた最も正確な一葉伝である。下級士族の娘に生まれた一葉が長じて自己の周辺の矛盾に苦しみ、反抗し、悲しい諦観を持ち、さらに自我に生きようと努力したあとを追求する。
[明治][文化人|女性]
小高根太郎 著
鉄斎はセザンヌ、ゴッホにも比すべき近代の世界的大芸術家であり、大学者でもあった。著者は鉄斎に傾倒すること20数年、一万点に及ぶ作品、数百巻にのぼる鉄斎自筆の記録、明治・大正期のあらゆる美術文献などを精査して、従来の謬説を正し、正確な鉄斎像を描き出した。鉄斎伝の決定版であり、欠くことのできない好指針である。
[江戸|明治|大正][文化人]
松下芳男 著
東郷平八郎とともに、軍国日本の象徴であった乃木希典は、戦後はすっかりその評価が変った。しかし軍国日本の再検討と、軍人精神の典型を知るには、この乃木は正によき標本である。それは懐古というより明治を形成した思潮であり、将来への警世として一顧を与えるべきである。戦後初めて試みられた人間乃木の赤裸々な記録。
[明治][武人・軍人]
中村尚美 著
藩閥という背景をもたなかった大隈は、維新政府に入っては財政家としてわが国近代財政の確立につとめたが、やがて十四年政変を転機として、藩閥に対抗し、「政治はわが生命」と喝破しつつ、政党をつくり、学校を建て、ひたすら近代日本の発展に捧げつくした民衆政治家であった。本書は未刊の『大隈文書』を基礎にした大隈伝。
[明治|大正][政治家]
住谷悦治 著
マルクス主義社会科学者である一方、貴い“体験”にひらめく宗教的真理を確信し、非転向を貫徹した求道の戦士。本書は、博士の人物・生涯・思想を、多くの学問的著書・論文・『自叙伝』などをたどって、必然の姿において捉え、その精神構造を分析し、東洋的マルクス主義者としての博士の特質・面目を躍如たらしめた力編。
[明治|大正|昭和][学者|思想家]
杉谷昭 著
明治維新の潮流に乗りそこねたものは多い。西郷とともに、江藤もまた時早く命を絶たれた。功臣が一転して逆賊となる時勢の激しさに、江藤も押流されたのである。その波瀾多き生涯は幕末維新史のめまぐるしさに似ているが、本書はよく新史料を消化し、政治法制史的な視点から佐賀藩及び江藤個人を分析し追及した力作である。
[江戸|明治][政治家|武人・軍人]
吉田久一 著
清沢満之は近代信仰の第一の樹立者であり、また日本哲学の基礎を築いた傑人でもある。本書は、日本近代思想史研究の立場から、彼の生涯をたどり、従来真宗教団内に孤立しがちだった満之を、本来あるべき位置に正しくすえただけでなく、宗教信仰や哲学的思索の難問を、実地踏査と適正な史料操作によって見事に解決している。
[明治][宗教者|思想家]
近盛晴嘉 著
ヒコは漂流して渡米、日本人として禁教後最初にキリスト教の洗礼を受け、また帰化第一号の米国市民権を得る。ハリスに伴われて開国日本に帰り、わが国最初の新聞『海外新聞』を発行し、幕末明治の文化の恩人となった。著者はヒコ研究に三十年、この“新聞の父”の生涯と功績とを克明に記し、また『ヒコ自伝』を正確にした。
[江戸|明治][その他]
斎藤隆三 著
“アジアは一つなり”という名言をもって戦時中大いにもてはやされた天心は、戦後、あまり顧みられなくなってしまった。しかし明治の美術界をリードし、日本の美術を今日の隆盛に導いた彼の業績は、いまこそ改めて考究されるべきである。近代美術の生みの親ともいうべき天心の生涯を委細にわたって知り尽した著者による労作。
[明治|大正][学者|文化人|思想家]
久保田正文 著
正岡子規が明治文学界に大きな足跡を残したことはいうまでもないし、またその伝記も少くない。しかし著者はさらにここに一冊の伝記を送る。子規に傾倒し、子規の心情そのものに奥深く迫る著者は、全く新しい観点から、新しい子規伝のための条件を探り出して、周到にその生涯を追い、その文学理論と思想的動向とを鮮かに描き出した。
[明治][文化人]
三吉明 著
印刷職の時、キリスト教に入信し、苦学しながら同志社に学び、やがて救世軍に身を投じて、伝道と公娼廃止・貧民救済・免囚保護等々の社会事業に自らの血を流して戦う。〝平民の使徒〟〝真の奉仕者〟〝救世軍最初の日本人司令官〟の聖き生涯を描いた本書は、広く宗派を超えて、人類愛と社会福祉に関心を持たれるすべての人々の必読の書である。
[明治|大正|昭和][宗教者]
高谷道男 著
ヘボンといえばローマ字と誰しも思い浮べるであろうが、実は明治文明開化の大恩人であったことは案外見落されている。在日生活33年、医療に、伝道に、教育に、その足跡は極めて大であった。本書は多年の蒐集になる貴重な史料をもとに、ヘボン自身の書翰類をあわせ、ヘボン自身が語りかけるように巧みな筆を運んでいる。
[江戸|明治][宗教者|医師]
田畑忍 著
初代の東京大学学長、学士院院長などの肩書をもち思想界・法曹界に君臨、一世に感化を与えた明治時代最大の学傑。その論争家としての立場は官界・政界をバックとし、天賦人権論からダーヴィニズムへの転向は、明治政治史の動向を側面からみるものとして興味深い。人物史としても思想史としても好適。
[江戸|明治|大正][思想家|教育家]
藤村道生 著
典型的絶対主義政治家であり、オールド=日本を一身に具現した山県の生涯は、そのまま近代日本の政治史であり、軍事史でもある。国軍建設以来、軍部の大御所として絶大な権力を握り、巨大な勢力をバックとして政界にも権勢を張ったが、本書は人間山県の弱点と功罪をえぐってあまさず、味わい深い歴史の秘密を追求する。
[明治|大正][政治家|武人・軍人]
石井孝 著
安政期幕政改革の最良の息子。機略縦横、横井小楠の「公共の政」理論にみちびかれ、幕府・諸藩の障壁を撤し、改革勢力の全国的連合に全精力をもやしつづける海舟。しかもついにその夢を実現できなかった彼はけだし不遇の政治家というべきだろう。このような視角から、幕末・維新期におけるもろもろの政治コースのなかで海舟の演じた役割を探る。
[江戸|明治][政治家|武人・軍人]
西山松之助 著
江戸荒事歌舞伎の源流初代市川団十郎より、明治中期の団・菊・左時代を飾った九代目団十郎までの成田屋歴代の芸道精進のあとと、その演劇界における位置を、厳密な史料批判を基礎にまとめた好篇。豊富な引例とエピソードとによって興味深く説き、思わず読みつづけさせる。新装版にあたって、現代に至る十・十一・十二代目の章を増補し一層の充実を期した。
[江戸|明治|大正|昭和][文化人]