河竹繁俊 著
歌舞伎の狂言作家として、名人小団次をはじめ、いわゆる団・菊・左らの名優を対象に世話狂言・時代狂言・活歴劇・散切狂言・舞踊劇にわたり三万余種の作品をのこした黙阿弥は、江戸演劇の大問屋と評された。本書はその生涯・人物・主要作品の梗概を興趣深く語り、さながら近代日本演劇の鳥瞰図の観を呈する。歌舞伎研究必携の書である。
[江戸|明治][文化人]
入交好脩 著
鐘紡を舞台として日本産業資本の指導者となり実業同志会を結成して政治に新風を注ぎ、更に時事新報に迎えられて言論界に活躍した武藤山治は、可惜不慮の兇弾に仆れた。しかしその高潔な人格と卓越した識見とは、福沢精神の実践者として不滅の光を放っている。本書はその生涯を叙して余すところなく真骨頂を浮彫りにした。
[明治|大正|昭和][実業家|政治家]
平尾道雄 著
明治維新の先覚者として推称される土佐藩主山内容堂は、他面では詩酒奔放の行状で世の非難をも受けた。しかし混迷する維新前後の舞台に立って革新的役割を負った容堂は、優れた知性と情熱の持主であるとともに、封建大名という宿命的な地位から、時代に悩む赤裸々な一人間でもあった。見事な史料駆使による人物追求の正伝。
[江戸|明治][政治家|大名]
祖田修 著
明治政府の殖産興業政策の推進者として知られる前田正名は、官を辞してからも「布衣の宰相」と称され、全国を隈なく行脚遊説し、輸出産業を主とする地方在来産業の育成・振興にその生涯を捧げ、近代日本経済史上に特異の光彩を放っている。本書は厖大な資料を駆使してその生涯と事蹟を克明に描いた力篇である。
[明治][官吏・官僚]
西尾陽太郎 著
中江兆民に私淑し、社会主義から無政府主義へ。日露戦争中には非戦論を絶叫し、弾圧に屈せずやがて直接行動論を唱え、遂に大逆事件の首謀者として死刑に処された典型的革命家。その人物は?思想は?行動は?果して彼は大逆を企てたのか。今やその伝記は改めて必読を要する。日本社会主義運動の源流を解明する好伝記。
[明治][その他]
犬塚孝明 著
わが国初代文部大臣森有礼は、近代教育制度の創始者として優れた文政家であるだけでなく、黎明日本の国際的地位向上に努力した外交官であり、近代的国民の創出をめざして東西縦横の活躍をした啓蒙思想家でもあった。本書は内外の新史料を駆使して、国際人としての新しい視点から政治家森を描き、その国家主義思想にも新たな究明を試みた意欲作。
[明治][政治家|思想家|教育家]
伊佐秀雄 著
明治・大正・昭和の三代にわたり、常に自由主義者として閥族的専制政治に反対しつづけた政治家。1890年以来、連続して衆議院に当選、東京市長・文相などを歴任、人称して“憲政の神様”という。著者は尾崎の後半生に親しくその謦咳に接しながら、その恩顧に溺れることなく、よくその性格と政界に苦闘する過程をたどる。
[明治|大正|昭和][政治家]
楫西光速 著
機大工の子として生まれた豊田佐吉は、早くからすでに国家社会に貢献しようという大望をいだき、機械の理論も知らず、外国品の模倣でもなく、専ら自らの頭脳を生かして、ついに世界的な自動織機を発明大成した。本書は彼の発明の過程を克明に描き、日本織物業における豊田織機の果した役割と、豊田コンツェルンの由来を詳述。
[明治|大正][実業家]
小長久子 著
わが国近代音楽史上、最初の作曲家。伝統音楽に西洋音楽をとり入れ、「荒城の月」「箱根八里」「花」など、数多い歌曲・童謡の名曲に不朽の名残す。人生は短く芸術は長いすぐれた天分をもちながらも、ドイツ留学中、病に倒れ、帰国療養ののち二十四歳で早世した、短命なその生涯。いくたの新資料にもとづいて、天才芸術家を鮮やかに描く。
[明治][文化人]
田畑忍 著
“大津事件”に際し驚愕なすところを知らない政府の、ロシア帝国への恐怖症的な圧迫に対して、大審院長として毅然これを一蹴し、司法権独立の憲法原則を実践した明治法曹界巨人の伝。本書は彼の剛骨の性格と、その民権的法思想の両面から考察を進めるとともに諸家の惟謙観・裁判観を検討しその生涯を鮮やかに浮彫りにした。
[明治][官吏・官僚]
井黒弥太郎 著
埋もれたる明治の礎石。開拓使長官として北海道開拓に尽力し、のち第二代総理となったが、条約改正に失敗して辞任。その後、強列な個性がわざわいして、伊藤博文主導の明治政界で冷遇される。『開拓使簿書』『黒田榎本文書』等に遡り、『明治天皇紀』や巷間の伝説等をも吟味して、従来の伝記では記述しえなかった明治史の盲点を突く、初めての実伝成る。
[明治][政治家|武人・軍人]
大村弘毅 著
明治・大正期の文壇に君臨した大文豪・教育家の生涯を、逍遙自編の年譜をはじめ最も正確な資料をもとにして、編年的にまとめた精密な決定版。演劇の改良、小説の革新、シェークスピアの全訳、文芸協会の設立など、光彩を放つ文芸活動に合わせて、その家庭生活をも丹念に描く。逍遙研究のみならず、近代文学者の伝記の規範として絶讃の書。
[明治|大正|昭和][文化人|教育家]
中村菊男 著
清貧にして苦学力行、弁護士となり、自由民権運動のため投獄二回、やがて衆議院議長となる。その剛腹のゆえに政敵を作り、海外に渡ったが、ついで政友会の創立に参画し逓相となり、領袖として活躍中惜しくも凶刃に斃れた、怒濤、波瀾のその生涯。本書は、この「英傑」の伝の誤りを正し、多くの挿話を交えつつ平易に叙述した。
[明治][政治家]
高橋昌郎 著
敬宇中村正直は明治啓蒙思想界において逸することのできない偉才であった。儒学についで蘭学を修め、英国に留学。維新のさい帰国、教鞭を執るかたわら、明六社創立に参画し、また『西国立志編』『自由之理』を訳述して新思想の普及に努め、さらに女子教育・幼児教育・盲啞教育に尽した功業は大きい。再評価すべき人物の正確な実伝。
[江戸|明治][教育家|思想家]
大林日出雄 著
“真珠王”御木本幸吉は、これまでいわれてきたような真円真珠の発明家ではなく、養殖真珠の逞ましい企業家であり、技術と漁場の独占に辣腕をふるい、巧みな演出と商魂によって全世界に“ミキモト・パール”の名を売り込んだ偉大な商人であった。本書は幾多の新資料を駆使して、伝説化された既往の“真珠王伝”を大きく書き改めた力篇。
[明治|大正|昭和][実業家|政治家]
平野義太郎 著
明治期の自由民権運動の急先鋒、自由党最左翼の驍将大井憲太郎の全生涯を描く。板垣退助や土佐の立志社などの自由党中央派は著名であるが、自由党を乗り越えて進んだ平民的革命派の苦闘を知る人は少ない。本書は大井を中心として、普選運動と労働者農民運動に、生命を賭して闘った歴史の推進力の全貌を明らかにする。
[明治|大正][政治家]
高橋昌郎 著
明治初期、明六社員として啓蒙活動を行うとともに、文部省編書課長として新しい教科書の編集を担当。そのさい、伝統を生かしながら欧米文化を吸収することを主張した。明治二十年ころからは、社会人を目標に、道徳教育を中心とする生涯教育を志して日本弘道会を結成し全国運動を展開。英学者であり儒学者で、現実を重視した思想家。
[江戸|明治][思想家|教育家]
山崎孝子 著
明治四年、岩倉大使一行にまじって満七歳の振袖・稚児髷姿で渡米留学した津田梅子は、不自由な異国の生活を克服して、勉学に励み、長じて帰国後は、女性の解放と女子高等教育の開拓に精魂を尽した。本書は厳密な資料操作に基づき、細やかな愛情を投げかけつつ、梅子の生涯と社会環境とを鮮やかに展開した感動を呼ぶ一編である。
[明治|大正|昭和][教育家|女性]
上沼八郎 著
常に人に先んじ、鋭い推進力となって、近代教育の基礎工事を完成した伊沢修二の生涯は、特異な個性と叛骨に貫かれ、摩擦・挫折・転回と激しく旋転した。本書は失われつつある伊沢の資料を博捜し、その活動力の源泉と、思想的構造の分析に力点をおき、彼の果した役割を再評価するとともに、明治教育思想の断面図を描き出した。
[明治][教育家|官吏・官僚]
圭室諦成 著
佐久間象山と共に幕末期における開明的思想家として世界的視野に立ち、新日本の進路を明示した維新の英傑。出身の肥後藩の容れるところとならず、越前藩に迎えられて最高顧問となり、幕政の改革にも参加、さらに明治新政府に入っては参与となったが兇刃に倒れたその生涯。小楠に対する愛着切なる著者が情熱を傾注して綴った好伝記。
[江戸|明治][思想家|政治家]