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  11. 狭衣物語
日本大百科全書・世界大百科事典

日本大百科全書
狭衣物語
さごろもものがたり

平安中期の物語。作者は古くから大弐三位(だいにのさんみ)(紫式部娘)とされていたが、今日では六条斎院〓子(ばいし)内親王家宣旨(せんじ)とすることでほぼ一致している。成立は承暦(じょうりゃく)年間(1077~1081)の前後であったと思われる。
 この物語は4巻からなり、男主人公の狭衣大将が、従妹の美しい源氏の宮へ思慕の情を寄せることで全編が貫かれている。ただその恋の思いは果たすことができず、彼は「色々に重ねては着じ人知れず思ひそめてし夜半の狭衣」との歌を詠み、純粋な愛を貫こうとするが、現実には不本意ながら次々と別の女性との関係をもつに至る。源氏の宮への恋慕を底流にしながら、巻1では飛鳥井(あすかい)の君、巻2では嵯峨院女二宮(さがのいんおんなにのみや)、巻3では一品宮(いっぽんのみや)、巻4では藤壺中宮(ふじつぼのちゅうぐう)を登場させ、狭衣大将との恋物語を展開する。だがその女性たちも、飛鳥井の君は失踪(しっそう)して死に、女二宮は出家し、一品宮とは結婚した当初から疎遠な仲であるなど、苦悶(くもん)の多い恋愛を強いられる。思いがけなく狭衣大将は帝位につき、源氏の宮におもかげの似る藤壺中宮との間に皇子をもうけるが、彼の心は飛鳥井の君や女二宮などを思って晴れるおりがなかったという。『無名草子(むみょうぞうし)』に「狭衣こそ源氏に次ぎてはよう覚え侍(はべ)れ」とあるように、早くから『狭衣物語』の評価は高い。『源氏物語』の亜流との批評もあるが、完成度の高い作品として改めて見直そうとする動きもある。
[伊井春樹]


『狭衣物語』[百科マルチメディア]
『狭衣物語』[百科マルチメディア]
古活字版 巻1 上 六条斎院〓子(ばいし)内親王家宣旨(せんじ) 1623年(元和9)刊 国立国会図書館所蔵



改訂新版・世界大百科事典
狭衣物語
さごろもものがたり

平安後期の物語。4巻。作者は後朱雀院の皇女禖子(ばいし)内親王に仕えた宣旨(女房の名)と伝えられる。宣旨は1055年(天喜3)5月の《六条斎院歌合》(題物語)に《玉藻に遊ぶ》という物語を提出しているが,今は散逸している。宣旨には源頼国女が擬せられているが確かでない。物語は帝の甥である狭衣大将の,従妹源氏宮に対する満たされぬ恋の話を中心とし,飛鳥井姫,女二宮,一品宮とのそれぞれいきさつがあっての不幸な契りの話をからませ,最後は源氏宮の縁筋で宮に似た宰相中将妹君を得,わずかに心慰み,帝位にもつくが,源氏宮,一品宮,女二宮からは背かれたままで終わるという筋。《源氏物語》の薫の性格を狭衣大将に移し,それをめぐる女性たちに藤壺,夕顔,浮舟,紫上等の人物とそれに伴う事件を巧みに按配して作りなした,いわば《源氏物語》の縮小版の物語。鎌倉時代には《源氏物語》に次ぐ秀作と評価された。また,御伽草子や宴曲,謡曲などの題材とされ,ひろく受容された。しかし,人生観照の深みに欠け,現在は余り高く評価されない。
[松尾 聰]

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1. 狭衣物語画像
日本大百科全書
『無名草子(むみょうぞうし)』に「狭衣こそ源氏に次ぎてはよう覚え侍(はべ)れ」とあるように、早くから『狭衣物語』の評価は高い。『源氏物語』の亜流との批評もあるが ...
2. 狭衣物語
世界大百科事典
平安後期の物語。4巻。作者は後朱雀院の皇女禖子(ばいし)内親王に仕えた宣旨(女房の名)と伝えられる。宣旨は1055年(天喜3)5月の《六条斎院歌合》(題物語)に ...
3. さごろもものがたり【狭衣物語】
デジタル大辞泉
平安時代の物語。4巻。作者は〓子(ばいし)内親王宣旨(せんじ)とされる。延久・承保(1069~1077)のころの成立。狭衣大 ...
4. さごろもものがたり【狭衣物語】
日本国語大辞典
物語。四巻。作者については、源頼国の娘の〓子内親王宣旨(ばいしないしんのうせんじ)説が定説で、古来の大弐三位説は否定されている。延 ...
5. さごろもものがたり【狭衣物語】
全文全訳古語辞典
[書名]平安後期の物語。作者は源頼国の娘である禖子内親王宣旨とする説が有力であるが、大弐三位説もあり、未詳。狭衣大将とその従妹源氏宮とのとげられぬ恋を中心にその ...
6. さごろもものがたり【狭衣物語】
国史大辞典
)、三谷栄一「狭衣物語伝本系統論序説」(『国文学論究』一)、同「狭衣物語成立考」(同四)、同「狭衣物語の伝本―巻一を中心として―」(国学談話会編『国文学論纂』所 ...
7. 狭衣物語
日本古典文学全集
〈いろいろに重ねては着じ人知れず思ひそめてし夜の狭衣〉と、主人公の狭衣の君は、従妹の源氏の宮への思慕の情を歌にするが、思いは拒絶される。以後、さまざまな女性と恋 ...
8. さごろもものがたりえまき[さごろもものがたりヱまき]【狭衣物語絵巻】
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絵巻物。紙本着色。絵だけ四段残存。鎌倉末期ごろの作。絵は土佐光秀、詞書(ことばがき)は伏見院筆と伝えるが明らかでない。絵は源氏物語絵巻の様式を踏襲するが、典雅な ...
9. さごろもものがたりえまき【狭衣物語絵巻】
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才芸容貌とも勝れた貴公子狭衣大将の恋の物語『狭衣物語』を絵巻化したもの。『古今著聞集』一一にみえる天福元年(一二三三)の後堀河院と藻壁門院の絵合に「小衣の絵八 ...
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12. あい‐ぎょう[‥ギャウ]【愛敬】
日本国語大辞典
を、たぐひおはしまさじと見しかど、この御ありさまはいみじかりけり。うち乱れ給へるあい行よ」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕一「かばかりあたりまで匂ひみちて、向ひ ...
13. あいぎょう‐な・し[アイギャウ‥]【愛敬無】
日本国語大辞典
きことに、かどかどしくくせをつけ、あい行なく人をもて離るる心あるは、いと、うち解けがたく」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕一「『一日も浪に』など、すさみ臥したる ...
14. あい‐んべ[あひ‥]【相嘗】
日本国語大辞典
小祀〓」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕三「十一月(しもつき)にもなりぬれば、斎院のあひむへの程、いとど見捨てがたくて ...
15. あおい‐がさね[あふひ‥]【葵襲】
日本国語大辞典
〔名〕「あおい(葵)【一】(7)」に同じ。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕三「あふひがさねの薄様の、色、下絵など、なべてならんやは」アオイ ...
16. あおびれ‐おとこ[あをびれをとこ]【青男】
日本国語大辞典
〔名〕(「あおひれおとこ」と清音か)生気のない男。男らしくない男をののしっていう語。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕一「我君をこそ、命にも換へて、恋ひかなしまめ ...
17. あお‐やか[あを‥]【青─】
日本国語大辞典
001〜14頃〕夕顔「切懸だつものに、いとあをやかなるかづらの、心地よげにはひかかれるに」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕二「宮司まゐりて、御祓つかうまつりて、 ...
18. あか‐ご【赤子・赤児】
日本国語大辞典
〔名〕(1)(「あかこ」とも)「あかんぼう(赤坊)(1)」に同じ。*承応版狭衣物語〔1069〜77頃か〕一・下「君は、ただ、赤児(あかご)のむつきに包まれたる心 ...
19. あかつき‐つゆ【暁露】
日本国語大辞典
7頃か〕雑秋・一一一八「この頃のあか月つゆにわが宿の萩の下葉は色づきにけり〈柿本人麻呂〉」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕三「まだ知らぬあかつき露におき別れ八重 ...
20. あか‐ぼし【明星・赤星】
日本国語大辞典
アカホシ」〔二〕さそり座の中心に輝く星。豊年星。大火(たいか)。アンタレス。《季・夏》〔三〕神楽歌の曲名。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕三「大将殿、『あかぼし ...
21. あ‐が‐ほとけ【吾仏・我仏】
日本国語大辞典
こめて相手をよぶ。あが君。*新井本竹取〔9C末〜10C初〕「あがほとけは何事を思はせ給ふぞ」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕三「帝の君の、御心通ひて見給ふべきあ ...
22. あきた・し【飽】
日本国語大辞典
やすきかな。弁、中将などが物言ひ、気色の、ものはやく、あきたかめるを』と思ひくらべ給ふに」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕一「女君の有様の、いとあきたうあやにく ...
23. あくがれ‐まさ・る【憧勝】
日本国語大辞典
〔自ラ四〕魂が身につかないで、ますます思いこがれる。いっそう心ひかれて、気もそぞろになる。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕三「心の中ばかりは、ありしより、けに、 ...
24. あく‐ごう[‥ゴフ]【悪業】
日本国語大辞典
意による悪い行為。また、前世の悪事。〓善業。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕三「憂し、つらしと思ひ入り給ひけん人の御あくごうの、離れ給ひぬべきしるべと ...
25. あく‐せ【悪世】
日本国語大辞典
〓」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕一「さこそ、おぼし離れたれど、なほ、このあくせに生れ給にければにや」* ...
26. あく‐まで【飽迄】
日本国語大辞典
まで慎むでゐるのであるが」(2)(無意志的行為や状態に関して)どこをとっても。どこまでも。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕四「入道の宮、あくまでらうたげに美しき ...
27. あげ‐まさり【上優】
日本国語大辞典
こと。〓上劣(あげおとり)。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕四「一の宮の御あげまさりのゆゆしさは、なほ『いづくにいかなりし人ぞ』と ...
28. あこだ‐うり【阿古陀瓜】
日本国語大辞典
金南瓜(きんとうが)。学名はCucurbita pepo cv. kintoga 《季・秋》*狭衣物語〔1069〜77頃か〕三「額髪の、ただ少し短く見えたる御つ ...
29. あさ・む【浅】
日本国語大辞典
はかけ離れた事態に出あって驚き、あきれる。あっけにとられる。よい場合にも悪い場合にもいう。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕一「『空言はいとうたてあり。大殿の笛の ...
30. あざり【阿闍梨】
日本国語大辞典
七月の修法のあざり、日中の時(じ)などおこなふ」(3)「あじゃり(阿闍梨)(3)」に同じ。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕一「仁和寺の何がしのあざりの車にて、母 ...
31. あし の 迷(まよ)い
日本国語大辞典
(和歌で「葦」に「足」を言いかけて)葦の生い茂る間で迷うように、行先を迷うこと。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕二「知らざりしあしのまよひの鶴(たづ)のねを雲の ...
32. あし‐もと【足元・足許・足下】
日本国語大辞典
日葡辞書〔1603〜04〕「Aximotoni (アシモトニ) ヒレフス」(2)足の下部。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕四「いろいろの姿ども着こぼして、足もと ...
33. 排蘆小船(近世随想集) 300ページ
日本古典文学全集
答へて曰く。これ又先に云ふ僧の色好むと同日の論なり。まことに道ならぬ好色は、甚だ無状なること、戒むべきの至りなり。されば聖人の教戒、人倫の修めかた、残る所なく経 ...
34. 排蘆小船(近世随想集) 323ページ
日本古典文学全集
皆古に劣らぬほどにもなることなり。かくの如くして、常にこの道に心を委ね翫びて、伊勢、源氏、枕草紙、狭衣なんど、その外あはれなる文ども、常に読みなんどすれば、自ら ...
35. あじき‐な・い[あぢき‥]【味気無】
日本国語大辞典
1〜14頃〕乙女「ざえの程より余り過ぎぬるもあぢきなきわざと、大臣も思し知れることなるを」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕二「人目もなき所といひながら、あまりな ...
36. あす=の[=は] 淵瀬(ふちせ)
日本国語大辞典
あすかがわの淵瀬。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕一「渡らなむ水増りなば飛鳥川あすはふちせになりもこそすれ」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕四「あすのふちせもう ...
37. あせ あゆ
日本国語大辞典
、『ただこの心どものゆかしかりつるぞ』とおほせらるる、〈略〉すずろにあせあゆる心地ぞする」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕四「わららかに戯(たはぶ)れ聞ゆるを、 ...
38. あたり‐ぐる〓し【辺苦】
日本国語大辞典
〔形シク〕そのそばにいるのさえ息苦しい。近づき難い。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕三「あたりくるしきまで、光り輝(かかや)くやうにて見え給へば」 ...
39. あた・る【当・中】
日本国語大辞典
らざる勢」(5)仕事、役目など引き受けて行なう。担当する。割り当てられる。従事する。*承応版狭衣物語〔1069〜77頃か〕三・下「乗るべき車は〈略〉めでたうして ...
40. あだあだ‐〓し【徒徒】
日本国語大辞典
〔形シク〕(「あだ(徒)」を重ねて形容詞化した語)(1)不誠実でいいかげんな態度である。無責任である。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕一「誰なりとも、かくなり給 ...
41. あだ・う[あだふ]【徒】
日本国語大辞典
0頃か〕寛弘五年一〇月一七日「若やかなる人こそ物のほど知らぬやうにあだへたるも罪許さるれ」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕一「『まろが顔は、こよなく勝りたるぞと ...
42. あつかい[あつかひ]【扱・〓
日本国語大辞典
下「対の方のわづらひける頃は、なほそのあつかひにと聞こしめしてだに、なまやすからざりしを」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕一「この人、かくてやみ侍なば、御前の御 ...
43. あつかい‐あり・く[あつかひ‥]【扱歩】
日本国語大辞典
〔他カ四〕奔走し世話をする。あれこれ世話をしてまわる。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕四「『何か、旅とな思し召しそ。今いとようありつかせ給なん』と言ひて、げに、 ...
44. あつかい‐ぐさ[あつかひ‥]【扱種】
日本国語大辞典
のたね。話題。*源氏物語〔1001〜14頃〕椎本「この君達の御ことをあつかひぐさにし給ふ」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕三「世の人の物言ひは、聞き憎きまで、こ ...
45. あつか・う[あつかふ]【扱・〓・刷】
日本国語大辞典
*枕草子〔10C終〕一四二・なほめでたきこと「多く取らむとさわぐものは、なかなかうちこぼしあつかふほどに」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕二「いと苦しげに、暑さ ...
46. あと【跡】
日本国語大辞典
筆のあと。*源氏物語〔1001〜14頃〕絵合「今の浅はかなるも、昔のあとに恥なく賑ははしく」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕一「御手などは、古の名高かりける人の ...
47. あと‐まくら【足枕・後枕】
日本国語大辞典
(前田本訓)「反側(こいまろび)呼号(よばひおら)びて頭脚(アトマクラ)に往還(かよ)ふ」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕二「人知らば消(け)ちもしつべき思さへ ...
48. あとまくら も =知(し)らず[=覚(おぼ)えず]
日本国語大辞典
(物事の前も後も判断できない意から)どうしてよいかわからない。前後も知らず。*狭衣物語〔1069〜77頃か〕三「母代(ははしろ)、責(せた)めに寄りたるに、隠し ...
49. あながち【強】
日本国語大辞典
ちまちの我心のみだれに任せて、あながちなる心をつかひてのち、心安くもはあらざらんものから」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕三「我心の、あながちに尽し染めてしひと ...
50. あなずらわ〓し[あなづらはし]【侮】
日本国語大辞典
〔1001〜14頃〕玉鬘「よからぬなま者どもの、あなづらはしうするも、かたじけなき事なり」*狭衣物語〔1069〜77頃か〕四「『数ならぬ際』と、あなつらはしかり ...
「狭衣物語」の情報だけではなく、「狭衣物語」に関するさまざまな情報も同時に調べることができるため、幅広い視点から知ることができます。
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