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  11. うつほ物語(宇津保物語)
日本大百科全書・改訂新版 世界大百科事典・国史大辞典

日本大百科全書
うつほ物語
うつほものがたり

平安時代の物語。題名は首巻の「俊蔭(としかげ)」の巻で、主人公の仲忠(なかただ)が母と杉の洞穴(うつほ)で生活したことによる。従来「宇津保(うつぼ)」と書かれていたが、変体仮名の原漢字を用いたもので、題意からは「うつほ(ウツオ)」がよい。成立時代は円融(えんゆう)朝(969~984)~一条(いちじょう)朝(986~1011)初期で、作者は古くから源順(みなもとのしたごう)とする説があるが未詳。全20巻で、俊蔭、藤原の君、忠(ただ)こそ、嵯峨院(さがのいん)、梅の花笠(はながさ)(一名春日詣(かすがもうで))、吹上(ふきあげ)(上下)、祭(まつり)の使(つかい)、菊(きく)の宴(えん)、あて宮、初秋(はつあき)(一名内侍(ないし)の督(かみ))、田鶴(たづ)の村鳥(むらどり)(一名沖(おき)つ白波(しらなみ))、蔵開(くらびらき)(上中下)、国譲(くにゆずり)(上中下)、楼(ろう)の上(うえ)(上下)の各巻からなる。
 内容は構成上2編6部に分けられる。前編第1部は「俊蔭」「藤原の君」「忠こそ」の3巻で、これらはそれぞれ、秘琴伝授の物語、あて宮求婚物語、継子(けいし)出家物語という別の主題をもつ短編読み切り的な性格の巻々で、長編構想が熟す以前の『うつほ物語』の発端として位置づけられる。第2部は「嵯峨院」~「あて宮」の7巻で、この部分は、あて宮への求婚者の増加やその多様な恋愛、凉(すずし)・仲忠の秘琴競弾など、求婚物語が秘琴物語と融合して長編化を遂げつつ物語が展開していく。第3部は「初秋」「田鶴の村鳥」の2巻で、俊蔭女(むすめ)の秘琴弾奏とあて宮入内(じゅだい)後の人々の処遇を描き、前編の構想のいちおうの結末をつけている。後編第1部は「蔵開」3巻で、ここでは帝(みかど)の女一宮(いちのみや)を得た仲忠一家の繁栄とその理想的生活が語られる。第2部は「国譲」3巻で、東宮妃となったあて宮所生の皇子と藤原氏出の梨壺女御(なしつぼのにょうご)腹の皇子との立太子をめぐる政争が生々しく描出されている。第3部は「楼の上」2巻で、俊蔭―俊蔭女―仲忠―犬宮と4代にわたって伝えられた秘琴伝授の物語の大団円として琴の一族の繁栄を語り、はるかに首巻の「俊蔭」と照応して長編『うつほ物語』を終結している。
 以上のように、この物語は秘琴伝授の音楽物語を大枠として、前半に求婚物語、後半に立太子争いを織り込んだ構成となっているが、全体としての統一性を欠き叙述も冗漫で、概して素朴稚拙の感は否定できない。しかし、あて宮の求婚者たちの多様な性格づけや、政争の渦中にあって一喜一憂する人々の心理描写などにはみるべきものがあり、また行事、遊宴の細叙や和歌の群作、会話や消息文の多用等々による写実的な特色ある叙述も、この物語が獲得した長編構築の方法として看過できない。物語史上『源氏物語』出現に至る種々の過渡的性格を内在しており、現存最古の長編物語として文学史上高く評価すべき作品である。伝本には室町期にさかのぼる全巻そろいの古写本は現存せず、江戸初期写の尊経閣文庫蔵本(前田家本・古典文庫刊)が最善本とされている。
[中野幸一]


『うつほ物語』[百科マルチメディア]
『うつほ物語』[百科マルチメディア]
前編第1部 「俊蔭(としかげ)」 1691年(元禄4)刊 国立国会図書館所蔵

改訂新版・世界大百科事典
宇津保物語
うつほものがたり

平安中期(10世紀末)の作り物語。作者は古来の源順(みなもとのしたごう)説が有力。〈うつほ〉には〈洞〉〈空穂〉をあてることがある。初巻に見える樹の空洞に基づくもの。

あらすじ

清原俊蔭は王族出の秀才で若年にして遣唐使一行に加わり渡唐の途上,波斯(はし)国に漂着,阿修羅に出会い秘曲と霊琴を授けられて帰国し,それを娘に伝授する。俊蔭の死後,家は零落,娘は藤原兼雅との間に設けた仲忠を伴って山中に入り,大樹の洞で雨露をしのぎ仲忠の孝養とそれに感じた猿の援助によって命をつなぐ。やがて兼雅と再会し,京へ戻る。そのころ左大臣源正頼の美しい娘あて宮は都人の憧れの的となり,仲忠のほか多くの人が求婚するが,結局東宮妃に迎えられる(第1部,〈俊蔭〉~〈沖つ白浪(田鶴の村鳥)〉)。東宮が即位すると,藤壺女御となったあて宮腹の皇子と兼雅女の梨壺女御腹の皇子との間に激しい立太子争いが起こるが,帝の意向によって藤壺の勝利に終わる。しかしこの間の藤壺の心労は並々ではなかった(第2部,〈国譲〉)。仲忠は祖父俊蔭の旧邸跡に新築した豪邸の楼上に籠って娘の犬宮に琴を伝授し,母の俊蔭女もそれに加わる。八月十五夜には嵯峨・朱雀の両院も行幸し,3人の霊琴合奏ににわかに霰が降り星が騒ぎ天地も揺れとどろいた。両院もいたく嘉賞された(第3部,〈楼の上〉)。

特質と問題点

全体の首尾は音楽奇瑞譚でしめくくっているが,その間に求婚譚や立太子争いなどを配し,統一性に欠けることは否めない。その巻序も,有力諸伝本すべて巻三~巻七に〈忠こそ〉〈春日詣(梅の花笠)〉〈嵯峨院〉〈祭の使〉〈吹上(上)〉の順に並んでいるが,このままでは時間の逆行とか事件の因果関係の倒叙が頻出して難解のため,今日ではこれを〈嵯峨院〉〈忠こそ〉〈春日詣〉〈吹上(上)〉〈祭の使〉の順に並べて読むことが多い。しかしそれでもなお記事の重複など問題が多く残っていて,成立事情の複雑さが想像されるのである。その解決のために複数の制作注文主を想定したり,当初本文に付いていた絵がその後失われて絵詞のみが残ったことからくる特徴的な本文形態が指摘されることもある。また一方,その主因を作者の内部に求めて,最初は素朴な古風な求婚譚として〈藤原の君〉から書き始めたものの,さまざまの読者の注文と作者自身の意識の動揺とか発展に伴って,つぎには音楽奇瑞譚としての骨格に着想して〈俊蔭〉巻が書かれ,その間に求婚譚の展開の中から宮廷社会の風俗人情への関心が高じて,立太子争いをめぐるきわめて写実的な表現に足を踏み入れてしまう。しかし最後は再び本道に即して霊琴譚でめでたく終りを結ぶ--という道筋も想定されている。またこの間に古来の伝承をそのままの形で随所に取り込むこともあったらしく,古と新と2種類の文体の混在が問題をさらに複雑化している。

 この作品を破綻だらけの失敗作と評することは容易だが,しかしそれまでの《竹取物語》その他短小のほとんどお伽話風の物語群と比較すれば,この作品が当時まさに破天荒な力作であったことも疑いの余地はない。散文的な外的世界への視野の拡大と浪漫的な美と芸術性への憧憬という二方向を極点にまで推し進めたところに,この作品の魅力と謎がある。しかし不幸にもその読者は中世近世を通じてきわめて少なく,伝本もその書写年代が近世初期以前にさかのぼるものは皆無の状態である。
[今井 源衛]

[索引語]
源順 清原俊蔭

国史大辞典
宇津保物語
うつほものがたり
二十巻からなるわが国最初の長編物語。題名は、主人公藤原仲忠が幼時北山の大杉の空洞(うつほ)に住み、猿に養われて育ったという首巻「俊蔭」の話による。作者は、鎌倉時代以来源順を擬する説が多いが、少なくとも身分・教養・思想など多くの面で彼と共通の基盤に立つ者と考えられる。『公任集』の記事によって、物語の前半(第一部)は円融朝末年ごろには成立していたことが知られるが、全編の完結は一条朝初期に及ぶかと推測されるので、全巻同一人の筆になるか否かも問題であり、文体なども勘案すると、数人の手で書き継がれた可能性も大きい。主題や成立事情をも考えて全体の構成を大観すると、第一部「俊蔭」―「沖つ白波」の十二巻、第二部「蔵開」「国譲」各上中下の六巻、第三部「楼の上」上下二巻となる。第一部では、貴宮求婚譚という形式にたよったためもあって、作者の興味はもっぱら外部に拡散し、内的統一に欠けるが、好色風流の伝統的貴族世界以外にも、三春高基・滋野真菅らの反貴族的人物や作者の自画像ともいわれる貧学生藤英などが紹介され、かれらをめぐる環境も活力ある筆で写し出されている。ただし、これは必ずしも現実直写を目ざしたものではなく、源正頼の春日社参、勧学院別当兼帯とか、その長女が仁寿殿女御と呼ばれ、九女貴宮が東宮妃として藤壺を賜わるなど、物語が現実世界に異なることも強調されている。第一部の人間描写が多様ではあってもついに孤立した類型の域を脱しえなかったのに対して、第二部では人間が社会の構造的力動関係において認識され始める。「蔵開」に仲忠一家の完全に充足した理想の生活が語られると、その影響は直ちに妹梨壺の地位の強化となり、ひいては仲忠と結ばれることを拒否して東宮を選んだ貴宮(源氏)方を、政権獲得に一族の全存在意義を賭けざるをえないところに追いこむまでになる。特に「国譲」では、政治という、社会的存在としての人間の問題が集約的に露呈される局面を物語の具体的情況として設定しえたことから、人間存在の総体的認識が著しく深化された。第三部になると主題が音楽の永遠性に移り、人間と自然との根源的同化が理想とされる。琴の秘曲の伝授を語りながら、作者は自然の変易の奥にひそむ造化との冥合を夢み、時空を超えた永遠の相の下に存在の本質を観ようとするのである。このような第二部から第三部への急激な転回は、それをめぐってこの作品の文学的価値や史的意義の評価に大きな対立をもたらすことになった。伝本としては、一、二の零本以外すべて近世以降の欠陥の多い写本であり、十分信頼できる証本は発見されていない。現存本中では前田家本が最も上位に立ち、その祖本から派生したと推定されるものに静嘉堂文庫蔵浜田本の系統がある。他に近世の板本に近い清水浜臣本系統もあるが、本文的にはさらに末流化したものである。なお、九州大学本などの異本系統は近世国学者の合成した本文であって、信用することができない。活字本では『宇津保物語―本文と索引―』(前田家本の翻刻)、『角川文庫』(浜田本を底本に校注)、『校注古典叢書』(前田家本を底本に校注)のものがよい。
[参考文献]
宇津保物語研究会編『宇津保物語新論』、同編『宇津保物語新攷』、同編『宇津保物語論集』、野口元大『古代物語の構造』(『有精堂選書』六)、同『うつほ物語の研究』、河野多麻『うつほ物語伝本の研究』、三苫浩輔『宇津保物語の研究』、石母田正「宇津保物語についての覚書―貴族社会の叙事詩としての―」(『戦後歴史学の思想』所収)
(野口 元大)
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30. あお‐つゆくさ[あを‥]【青露草】
日本国語大辞典
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表裏ともに、濃い青に黄を加えた色のもの。または、表は赤みの多い茶色で、裏は薄い青色のもの。*宇津保物語〔970〜999頃〕春日詣「装束は、大人は青色の唐衣、〈略 ...
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日本国語大辞典
〈花田濃色也。尼など用色と云〉」(2)襲(かさね)の色目の名。表裏ともに、濃いはなだ色。*宇津保物語〔970〜999頃〕蔵開上「四の宮、赤らかなる綾掻練(あやか ...
33. あお‐ばえ[あをばへ]【青蠅】
日本国語大辞典
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34. あおみ‐ずり[あをみ‥]【青味摺】
日本国語大辞典
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日本国語大辞典
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日本国語大辞典
アヲ)める玻璃のうつはより初秋きたりきりぎりす鳴く」(2)顔色が青ざめる。血の気が引く。*宇津保物語〔970〜999頃〕蔵開上「すこしあをみ給へれど、いとあてに ...
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43. あか・む【赤】
日本国語大辞典
また、赤茶ける。*日本書紀〔720〕皇極元年五月(図書寮本訓)「熟(アカメル)稲始めて見ゆ」*宇津保物語〔970〜999頃〕嵯峨院「九の君、おもてはあかみて、う ...
44. あから‐か【赤─】
日本国語大辞典
平安初期点〔850頃〕「世尊の唇の色は、光り潤ひ丹(アカラカ)に暉れること頻婆菓の如し」*宇津保物語〔970〜999頃〕国譲下「あからかなる綾かいねりのひとかさ ...
45. あから‐さま
日本国語大辞典
「あからさまにも」の下に打消の語を伴って、「かりそめにも…しない。全く…しない」の意となることもある。*宇津保物語〔970〜999頃〕俊蔭「あからさまの御ともに ...
46. あから〓
日本国語大辞典
懇(アカラシキ)かな、我が大師聊かに何か過失有りて、此の賊難を蒙る〈国会図書館本訓釈 懇 アカラシキ〉」*宇津保物語〔970〜999頃〕吹上下「おもひいづるなん ...
47. あから‐め
日本国語大辞典
(「あからめもせず」の形で用いることが多い)ふと目をほかへそらすこと。わき見をすること。*宇津保物語〔970〜999頃〕蔵開中「宮の御うしろにさぶらふほどに、御 ...
48. あか・る【散・別】
日本国語大辞典
日記〔974頃〕下・天祿三年「『火しめりぬめり』とてあかれぬれば、いりてうちふすほどに」*宇津保物語〔970〜999頃〕俊蔭「いとまたびて、みな十、二十人とあか ...
49. あ‐が‐きみ【吾君】
日本国語大辞典
*万葉集〔8C後〕一九・四一六九「松柏(まつかへ)の 栄えいまさね 尊き安我吉美(アガキミ)〈大伴家持〉」*宇津保物語〔970〜999頃〕菊の宴「あなゆゆしや。 ...
50. あ‐が・く【足掻】
日本国語大辞典
やれといふと心得て、五六町こそあがかせたれ」(2)手足をじたばたする。また、手足を動かしてもがく。*宇津保物語〔970〜999頃〕国譲上「思すやうに、平かにてと ...
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