「卯月」とは陰暦4月の異称であるが、なぜ「卯月」というのかは諸説あってはっきりしない。「卯の花月」で「卯の花」の咲く月の意とも、「植月(うつき)」でイネの種を植える月の意ともいう。「卯の花」は唱歌『夏は来ぬ』でご存じの方も大勢いらっしゃるであろう。「うの花のにほふ垣根に、時鳥(ほととぎす) 早もきなきて」。つい口ずさみたくなる美しい歌である。「卯の花」はウツギの花で、白く咲き乱れる様は古くからホトトギスとともに初夏の代表的な風物とされてきた。
 この月の8日を特に「卯月八日(うづきようか)」といって、近くの高い山に登り、花を摘んで仏前に供える行事があった。また、この日は釈迦(しゃか)の誕生日ともされ、その誕生仏に甘茶をかけ、参拝者はそれをもらって飲む風習が生じた。この甘茶で墨をすり、紙に「千早振る卯月八日は吉日よかみさけ虫をせいばいぞする」と書き、便所や台所へ貼っておくと虫よけになるという俗信もある。「卯月八日を娘へも母(はは)張(は)る気」(柳多留)。江戸の雑俳であるが、箱入り娘に付く「虫」まで成敗できたかどうかはわからない。

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