第110回
最下位の意味の「ぺけ」

 第106回で関西では「×」を「ぺけ」と言うと書いた。だが、千葉県出身の筆者にとっては「ぺけ」は別の意味のことばとなる。何かというと「最下位」のこと。「運動会の駆けっこでぺけになった」などと使うのである。
 東京女子大学教授の篠崎晃一氏によると、この意味で「ぺけ」を使う人は埼玉県に多いらしい(『出身地(イナカ)がわかる方言』幻冬舎文庫)。『日本国語大辞典』の方言欄を見ると、関東では栃木県でも使うとある。筆者は千葉県北西部で生まれ育ったのだが、周囲に「ぺけ」を使う人がいたことは確かである。ただ、その人たちが元々の住民だったかどうかは残念ながら記憶にない。この最下位の意味の「ぺけ」が、関西で「×」をいう「ぺけ」と関連があるかどうかは不明である。
 「ぺけ」も使うが、ふだんは最下位の意味では「びり」を使うことが多い。篠崎氏によれば「びり」は東日本に多い言い方ではあるが、全国に広がっていて共通語に近いという。ちなみに西日本では「どべ」が優勢だそうだ。
 「ぺけ」ばかりでなく、「びり」や「どべ」も語源は不明である。大槻文彦著の国語辞典『大言海』(1932~35年)には、「びり」は「しり(尻)の転訛(てんか=なまり)か」とあるが、決定打にかける気がする。「どべ」は、「泥」のことを「どべ」というのだが関連はわからない。「びり」は「ビリ」と片仮名で書かれることが多いので新しいことばのようだが、『日本国語大辞典』によれば江戸時代から使われていたようだ。 
 「ぺけ」「びり」「どべ」……最下位を表すことばは、何となく脱力系の語感があって、最下位とはっきり言われるよりも悪くないと思っている。これ以外にもこの意を表すことばはあるようなので、各地の出身者が集まったときなど、お互いの言い方を披露し合うと盛り上がるかもしれない。

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