第125回
「得る」は「える」?「うる」?

 「得る」は、「える」と読んだり「うる」と読んだりするが、どちらが望ましい読みなのだろうかという質問を受けた。
 結論から言うと、どちらでも間違いではないのだが、「える」の方が現代語的で、「うる」の方が古語的だとは言える。ただ、個別に見ていくとどちらか一方を使った方がすわりがいいという場合もありそうだ。
 たとえば「利益を得る」「承認を得る」「病を得る」などは、「える」の方がふつうで、「うる」と読むと違和感を覚える人も多いかもしれない。
 だが、「得るところが多い」「上司の承認を得る必要がある」などやや改まった表現の場合は、「うる」の方がすわりがいいと考える人の方が多いのではないだろうか。さらに、動詞の連用形に付いて、「できうるかぎりの努力」「交渉の時間切れもありうる」などのように、…することができる、可能である、の意を表わす場合も「うる」が多く使われる。
 文法的な話で恐縮なのだが、「うる」はもともとは文語の下二段活用の動詞「う(得)」の連体形であった。通常の二段活用の動詞は文語から口語に変化する際に一段活用化していくのだが、何故かこの語はそうならず変則的な変化を遂げるのである。つまりこの動詞は文語のときは、「え・え・う・うる・うれ・えよ」と「う」と「え」の二段活用をしていたのだが、口語へと変化する際に、終止形「う」が「える」、連体形「うる」が「える」に変化すべきところ、終止形「える」「うる」、連体形「える」「うる」の両形が併存することになってしまったのである。
 ただ、上の「うる」の方が優勢だとして挙げた例文も、いや自分は「える」と言っているとおっしゃる方も多いであろう。そう、将来的に「うる」が消滅し「える」に統一されてしまう可能性は高いのである。
 なお、蛇足ながら、昔ラジオの野球中継で解説の金田正一氏が「スクイズもありうりますね」と言うのを聞いてのけぞったことがある。いくら古語の二段活用が残存している特殊な動詞だとは言っても、もちろんそんな活用形は存在しない。

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