第172回
「真逆」

 「真逆」と書いて、「まぎゃく」と読む。「まさか」ではない。後に様が付くと、「まさかさま(まっさかさま)」になるがそれとも違う。
 「まぎゃく(真逆)」は2002、03年頃から急に使われるようになり、2004年の流行語大賞の候補にもなったことばである。なぜその頃からはやり始めたのかよくわかっていないのだが、一気に広まった感がある。
 こうした状況を受けて、平成23年(2011年)度に文化庁が実施した「国語に関する世論調査」でも、使うかどうかという調査が行われている。
 その調査報告を見ると、全体では「真逆」と言う人22.1%、言わない人77.4%であるが、世代別に見ると男性では30代以下、女性では20代以下で言う人が5~6割前後と圧倒的に多くなる。だが、年齢が上になると使う人の割合が急激に少なくなり、60歳以上では男女とも1割未満である。
 「真逆」は、「逆」に「真」を付けて逆であることを強調した語で、正反対という意味で使われる。「ま(真)」は接頭語で、強調するときに頭に「真」を付ける語は、「真新しい」「真正直」などけっこうある。だから語の成り立ちとしてはごく自然なものだと言えるであろう。国語辞典の対応もまだまちまちではあるが、俗語として載せる辞書も増えてきている。
 だが、新しいことばが生まれるとそれに対して抵抗感を持つ人も少なくない。かくいう筆者も、日本語の乱れなどという気は毛頭ないのだか、「真逆」を好きか嫌いかと聞かれたら、好きなことばではないと答えるであろう。わざわざそう言わなくても、正反対で通じるではないかなどとつい思ってしまう。
 文化庁の調査結果でも、筆者が属する50代男性は20.6%しか言わないと答えているのである。使用率1割以下の60歳以上ではさらに抵抗感が強そうだ。これから確実に辞書に登録されていくことばなのだろうが、俗語であるという注記は残しておく必要があるような気がする。

キーワード:

さらに悩ましい国語辞典
―辞書編集者を惑わす日本語の不思議!―

日本最大の辞書『日本国語大辞典』の編集者はまだまだ悩んでいる! 辞書で定義しずらい言葉の悩み辞書にした「悩ましい国語辞典」の第2弾。
そんたく【忖度】[名]「忖」も「度」もはかるという意味。他人の心を推し量ることで「なにか配慮をする」の意味はない。/しんしゃく【斟酌】配慮までする意味なら「忖度」でなく、「斟酌」の方がしっくりする。この語「手加減する」と意味は変化し続け、今、忖度で起きている現象が斟酌でも起きている……

悩ましい国語辞典
―辞書編集者だけが知っていることばの深層―

「日本国語大辞典」の編集担当者を惑わすことばの不思議スリリングに揺れる日本語の深さ! 面白さ満載!
「うがった見方」は「疑ってかかるような見方」ではない/「悲喜こもごも」を合格発表の描写で使うのは誤り/「まじ! 」は、江戸時代の小説に使用例がある/スコップとシャベルはどちらが大きいか?西日本と東日本では違う/「谷」を「や」と呼ぶのは音読みでも訓読みでもない方言/「あばよ」の語源は幼児語の「アバアバ」

ジャパンナレッジとは

ジャパンナレッジは約1500冊以上(総額550万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。

ジャパンナレッジ Personal についてもっと詳しく見る