第199回
「馬脚を○○」

 「馬脚を晒(さら)す」という言い方をする人がいるらしい。もちろん、正しい言い方は、「馬脚を露(あら)わす」である。「馬脚が露われる」と言うこともある。
 これを、やはり間違って「馬脚を出す」という人がいるということは知っていた。実際、国立国語研究所のコーパスを検索すると、ある高名なNHKの元ニュースキャスターが、「馬脚を出す」と使っていることがわかる。ただし、「馬脚を晒す」はそこには1例も出てこない。ところが、インターネットで検索すると、かなりな数の使用例が見つかる。
 「馬脚」とは、芝居で馬の足を演じる役者のことである。「馬脚を露わす」は芝居で馬の足の役者が見せてはいけない姿をうっかり見せてしまう意からで、つつみ隠していた事があらわれる、ばけの皮がはがれるという意味である。
 誤用と言われている「馬脚を出す」は、「尻尾を出す」との混同だと考えられている。では「馬脚を晒す」はどこからきたのだろうか。「さらす」は広く人々の目に触れるようにするという意味だが、「恥をさらす」などといった慣用表現と混同しているのかもしれない。
 「馬脚を出す」を誤用としている辞書はいくつか存在するのだが(『大辞泉』『明鏡国語辞典』など)、「馬脚を晒す」に触れている辞書はまだ無いと思う。だが、この言い方がさらに広まれば、「馬脚を晒す」も誤用としてだろうが、今後取り上げる辞書が出てくるかもしれない。
 なお、「馬脚を露わす」の「あらわす」を新聞などでは「露わす」ではなく「現す」と書いている。これは常用漢字表では「露」という漢字には「あらわす」という読みを認めていないからである。
 あくまでも主観なのだが、同じ「あらわす」でも、「現」と「露」とでは、「露」の方が隠そうとしていたものがつい表に出てしまって、むき出しになるという意味合いが強いような印象を持つのだが、皆さんはいかがであろうか。
〔本稿は、国語研究所とLago言語研究所が開発したNINJAL-LWP for BCCWJを利用しました。〕

キーワード:

ジャパンナレッジとは

ジャパンナレッジは約1500冊以上(総額550万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。

ジャパンナレッジ Personal についてもっと詳しく見る