第30回
「ごめん」は本当に謝っているの?

 標題のような質問を受けた。
 確かに謝罪するとき「ごめん」と言うが、よくよく考えてみると「ごめん」とは不思議なことばである。元来は「許可」を意味する「免」に尊敬を表す接頭語「御」の付いたもので、正式に許可や認可することを、その決定を下す者を敬っていう語であった。「天下御免」などというときの「御免」である。それがどうして謝罪を意味することばになったのだろうか。
 正式な許可を下すことを敬っていう意味での用例はけっこう古く、鎌倉時代から見られる。それが後に、「御免」の下に命令形が付いて、軽いことわりや、詫びの意を表す「ごめんあれ」「ごめんくだされ」「ごめんなされ」「ごめんなさい」などの形が生じた。意味合いとしては「許して(御免して)ください」ということなのであろう。この表現がやがて定着すると、省略形としての「ごめん」も用いられるようになっていく。それがだいたい近世中期頃のことといわれている。
 それにしても「御免」を命令形にして、「許せよ」とばかりに謝罪のことばとするのだから、考えようによってはかなり不遜な表現である。いつの間にか、元来の「御免」の意味とは大きく隔たったものとなってしまったわけである。
 ところで『日国』を見ると「御免芸」などということばが載っている。これは、もちろん 「謝らせたら天下一品」という芸ではなく、天下に並ぶ者のない優れた芸のことである。日本語は本当に複雑で、だからこそ面白い。

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