第299回
その芸は「極め付き」?「極め付け」?

 「極め付きの芸」「極め付きの悪党」などと言うとき、ひょっとして「極め付き」ではなく「極め付け」ではなかったかと迷うことはないだろうか。
 もちろん「極め付き」が本来の言い方なのだが、「極め付け」もかなり広まっているようなのである。
 「極め付き」は、書画、古道具、刀剣などに、極札(きわめふだ)というものがついているということから、世間一般からはっきりした評価を受けている、定評があるといった意味となった語である。
 極札というのは、書画、古道具、刀剣などを鑑定して、それが確かなものであることを証明したものである。『日本国語大辞典』(『日国』)によれば、「その形式は様々で、題名と筆者と鑑定者の署名および印章を記した小紙片を巻軸に貼付したもの、巻軸に貼らずに別に保存したもの(外題、極札)、外題(げだい)より複雑な本文を書いて二つ折りにしたもの(折紙、添状)、作品の画面や巻末に書き込んだもの(紙中極、奥書)、箱の表裏に書き込んだもの(箱書付、箱書)など」があったらしい。
 「極札がつく」などの形で、そのものが確かでまちがいのないものであるという保証をするという意味で用いられることから、「極め付き」はすぐれたものとして定評のあるものという意味になったのである。
 「極め付き」と同様の語に「折り紙付き」があるが、この「折り紙」も『日国』の説明からもわかるように鑑定書の一種である。どちらの語も本来よいことについていったのだが、のちに意味が広がり「極め付きの不良」などのように否定的な事柄についてもいうようになる。
 「極め付け」は「極め付き」に比べると新しい言い方なのだが、最近になって使われるようになったものかというとそういうわけではない。たとえば『日国』では松本清張の『真贋の森』(1958)の「そういうものに、みんな極め付けをするのかね?」という例を根拠に、「極め付け」も見出し語としている。
 こうした使用例もあることから、国語辞典では、「極め付け」を見出し語として立てたり、「極め付き」の類語として扱ったりするものが増えている。ただし、新聞の方がやや保守的で、たとえば時事通信社の『用字用語ブック』でも「極め付け」は誤用として使わないようにしているようだ。

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