第326回
「丁字路」は「T字路」か?

 十字形に交差する道路を「十字路」と言うことに異存はないであろう。では、丁字形に交差している道路は何と言っているだろうか。丁字形だからやはり「丁字路」だろうか。だが、「T字路」だと思っている方も、大勢いらっしゃるのではないだろうか。
 「テイジロ」と「ティージロ」、発音も「テイ」は「ティー」の訛(なま)りのようでもあるが、もちろん「丁(てい)」は漢字、「T(ティー)」はアルファベットである。字形も似ているのでややこしい。
「丁字路」は「十字路」などと同じく、道路の交わる形を漢字の字形を借りて表した語で、もちろん「T字路」ではなく「丁字路」が本来の言い方である。
 「道路交通法(1960年)」も第二条で「十字路、丁字路その他二以上の道路が交わる場合に」などと使っている。
 この漢字の「丁」の字のような形だという表現は、けっこう古くから見られる。『日本国語大辞典』によれば、『仏制比丘六物図(ぶっせいびくろくもつず)』という平安時代の仏教書の講義録である『六物図抄』(1508年)の例がもっとも古い。以下のような内容である。

 「丁字(ていじ)にぬうは鳥足縫(ちょうそくほう)の事也」

 「鳥足縫」というのは、鳥の足型のように三つに分かれたように縫う縫い方で、『六物図抄』はこのあと「これを三叉(さんさ)の相(そう)とも云ぞ。鳥の爪を前へ三つかけてつかむが如し」と続く。
 「丁字路」と「T字路」とではどちらが優勢かという調査は残念ながら無いようだが、「T字路」は口頭語としても、表記する場合でもかなり広まっているような気がする。そのため、国語辞典ではほとんどが「T字路」も空見出し(参照見出し)として載せている。NHKも、最近は「T字路〔ティージロ〕」のほうがよく使われるという見解のようだ(『NHK ことばのハンドブック』)。だが、新聞はいまだに「丁字路」だけを使うようにしている。
 「丁字」の複合語は、他にも「丁字定規」「丁字帯」などがある。だが、これらの語も最近では「丁字」よりも、「T字〔ティージ〕」のほうが優勢な気がする。
 蛇足ではあるが、「合田丁字路(1906~1992)」と号するホトトギス同人で、「四国新聞」俳壇の選者をつとめた俳人がいた。「ごうだ・ちょうじろう」と読ませていたらしい。

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