ジャパンナレッジの膨大な知識を利用すれば、面白い人探しが容易にできるのです。今まで出会った人たちにハズレはありません。
>私がジャパンナレッジを使っているのは、『日経ビジネスアソシエ』で「日本(やまと)かぶれ」の連載を持っていて、この取材のための人探しという目的がひとつです。もうひとつは、本来の仕事であるビジネスコーディネーターの仕事の幅を広げるという目的があります。この仕事は人と人の出会いをプロデュースするものですから、専門的で個性的な人たちの人脈は欠かせません。そんな人探しのための“水先案内人”、それがジャパンナレッジなのです。
もともと私はサントリーでの宣伝部門勤務が長く、海外イベントなどを多く担当していました。海外に行くと現地の人から日本についての質問を受ける機会がよくあります。文化的素養の高い人ほど、日本の伝統文化に強い関心があります。しかし一般的な日本人は自分の国の伝統的文化についての素養が恐ろしく低い。たとえば「歌舞伎を見たいがどの劇場に行けばよいのか?」「寿司のネタで冬の旬は何なのか?」「なぜ日本人はそばを食べるときに音を立てて食べるのか?」、こんな質問すら満足に答えられる人はそう多くないのではないでしょうか。実際、私は答えられませんでした。日本人としてこれは屈辱的な経験でした。ゴルフやお酒の話ではすぐにネタが尽きてしまいます。ほとんどの質問に「I don’t know the detail」とばかり答えていましたね(笑)。
ここが私の原点です。「仕事だけができればいいのか?」と自問自答しました。ビジネス以外のことは何も知らない無味乾燥で薄っぺらな人間ではなく、いろんなものに興味を持てる人間味豊かな人物、それが私の理想だということに気付いたのです。
そんな経験から、「和」をテーマにしたイベントを手がけ始めました。すると思った以上の反響がある。年配の人だけでなく、若い人も興味を持って参加する。そうやって徐々にネットワークが広がり始めると、今度はさまざまな業界の方から声をかけられるようになり、『日経アソシエ』での連載も始まったわけです。
それでは具体的にジャパンナレッジを使ってどのように人をお探しするのかお話しましょう。今回は連載している「日本かぶれ」を例に話を進めます。テーマは「和紙」です。
まずはジャパンナレッジで「和紙」を検索し百科事典から辿っていくのが私の流儀です。そこで基礎知識を調べます。百科事典を読めば、和紙は洋紙にはない強靭性と耐久性をもち、世界最古の印刷物である『百万塔陀羅尼』はそんな和紙の性質を利用しないとできない産物だったことなどがわかります。百科事典ばかりでなく、必要に応じて『東洋文庫』や『週刊エコノミスト』などを活用することも多いですね。
さて、基礎知識を得たら実際の人探しです。まずは百科事典の著者をみてみます。百科事典の執筆者は実に数千人ということですが、当然、著者はその分野の専門家ですから、取材の対象になりえます。もし著者が思い描いていた人と違うかなと感じると、「URLの検索」をやってみます。「URLの検索」はYahoo!やGoogoleとは違い、百科事典の編集部が厳選した信頼できるサイトだけを掲載しているので、ここから実際に和紙作りに携わっている人を探し出すことができるというわけです。「書籍の検索」も同様に人探しには欠かせないツールです。著作があるということで、その人が社会的に認知されているかどうかの判定もできますから。
このようにして取材の対象者が決まるとアポイントを取って会いに出かけるのですが、ジャパンナレッジで得た知識や関連サイト情報、書籍などは取材時に大いに役立ちます。その分野のことを何も知らないで人と会うわけにはいきません。さらに取材で会った人からはまた新しい知識をもらうことができます。そしてそこから新たな分野に興味が芽生え、さらにジャパンナレッジを使って調べものをする。すると、そこからまた面白い人とぶつかる。そうやってぼくの人脈はどんどん広がり、ビジネスコーディネーターとしての仕事の枠がどんどん広がっていくのです。
使っていて気付いたのですが、ジャパンナレッジは何も執筆活動や調べものだけに使うものではありません。普通のビジネスマンが活用すれば、強力なビジネスツールにもなりえます。例えばイギリスとの仕事が多い人は、「イギリス」という百科事典の項目を開いてみます。するとイギリスの歴史や地理、日本との関係性などが簡潔に、かつ、客観的にまとめてある。中世の歴史を見てみると「マグナカルタの広場」がロンドン近郊にある、といった記述もあります。もちろん在日英国大使館などの情報もゲットし、ビジネスでの話題に事欠きません。ビジネスの基本は人間関係ですから、こうした知識を持っているのといないのとでは、相手に与える印象、ひいてはビジネスの結果が違ってくるのも当然なのです。
日産自動車を立て直したカルロス・ゴーン氏は、日本を理解するために多大な努力を払っています。より深く日本を理解することで、日本人との人間関係を円滑に進め、誰もが不可能と思っていた大きな仕事をやってのけたのです。相手の文化を理解し敬意を払う。そんな当たり前のことすら多くの人は忘れてしまっているのではないでしょうか。私は、ジャパンナレッジの膨大な知識を目の当たりにすると、自分が“知らないことだらけ”だということに改めて気付かされます。未知の人たちとの出会いを求めて、私はこれからもジャパンナレッジで調べものを続けたいと思います。